独占・DMM亀山会長 「今、すべてを語ろう」
2015/4/11
アダルトビデオの制作・販売だけでなく、ゲームに3Dプリンター、英会話、FX、太陽光発電と、幅広い事業を展開するDMM.com会長の亀山敬司氏。その謎に包まれた半生がいま、明らかに──。
アダルトはピンクオーシャン
アダルトはなかなか参入障壁が高いし、プレーヤーもそんなに多くない。僕はアダルトの領域をレッドオーシャンでもなく、ブルーオーシャンでもない「ピンクオーシャン」と呼んでいる。
このピンクオーシャンに上陸してきた企業がいる。アマゾンだ。「何でも屋」だからアダルトの通販にも迷わず参戦してきた──。
カネを盗まなかったら店長
今はDMMの幹部になっている彼らも、もともとはビデオレンタル店の店員だった。当時はヤンキーだらけ。何を基準に昇格させたか。
1つは、カネを盗まないヤツ。「お前、盗まなかったな! 店長だ!」って(笑)。
最近、新卒採用するのはエリートばっかり。言われたことはきちんとこなす「いい子」が多くて、もちろん会社のカネは盗まない。でも、ヤンキーはヤンキーでいいところがあるんだよね。
ヤツらはどんなに面倒くさい客が来ても強気にあしらうことができる。「いい子」にはそれができない──。
ヤクザとマルサ
時には暴力団の関係者がビデオレンタル店に来てトラブルを起こす。アダルトな業界に身を置いていると、「ヤクザとか暴力団員とつながりがあるんですか」と聞かれるよ。
東京に引っ越して間もない頃、僕が妻と幼い子どもと寝ていると、マルサが突入してきた──。
ホリエモンとのつながり
ホリエモンと知り合ったのは僕が30代後半、彼がオン・ザ・エッヂの上場準備をしていた頃。
彼とは映画サイトを立ち上げようとしていた。僕とホリエモンは「すべての映画の供給を1社で行うハブのような会社が登場するんじゃないか。だったら僕らが日本の窓口になろう」と話していた──。
AKB48との出会い
秋元康さんとの出会いはAKB48が今ほどブレイクするはるか前のこと。運営している会社から「AKBの劇場からの映像配信をやっているのだけれども、なかなか人気に火がつかず、どうにも厳しい」と相談を受けた。
アイドルコンテンツはDMMと相性がいいし、「未来」がありそうだと思った──。
事業拡大の仕掛け「亀チョク」
自分たちの事業を壊すような新しい事業に自ら手を出さないと、生き残ることはできないね。
AVの制作・販売だけでなく、ゲームに3Dプリンター、英会話、FX、太陽光発電と、幅広く事業を展開している。ここまで拡大できた「仕掛け」がある。「亀山直下」のプロジェクト、「亀チョク」だ。
誰でも応募可能で、僕が「面白そう」と思えば合格。すぐに半年間の業務委託契約を結んじゃう。基本的には彼らの言い値で受ける。
最初の3日間だけ出社して、半年間、なんの音沙汰もなく、600万円持ち逃げされちゃったこともあるよ──。
「艦これ」大ヒット
「亀チョク」の出世頭は、「艦隊これくしょん」だ。「船を美少女に見立てたゲームを作りたい」という企画が持ち込まれた。
実は僕は「ヒットしないのではないか」と思っていた。「船を擬人化して美少女にする」と言われても、まったく意味不明だったから(笑)──。
エコからエロまで
彼はアダルト事業の営業部にいるんだけど、震災をきっかけに太陽光発電の事業を立ち上げた。最初はド素人の営業部員。でも1年も現場で戦えば、たいていなんとかなる。
「エコからエロまで売れる営業部員」。それがDMMの社員の強みかもしれないね──。
社運を賭けない、地道にカイゼン
壮大なビジョンや夢なんて経営者のエゴだよ。
「社運を賭けた新規事業」なんてしたことがない。ほとんどのビジネスは上手くいかないもの。成功するかどうかわかんないものに、経営者が社運なんて賭けちゃいけない──。
DMMでは「終身雇用」を掲げている。今でこそIT企業と言われるDMMだけど、始まりは、地道な「改善」を続ける「メーカー」だったんだ──。
僕がときどき逃亡するワケ
僕は4年に1回くらい逃亡する。誰にも行き先を告げず、「行方不明になろう」くらいの勢いで海外に行く。これは20代から続けてきた僕の癖みたいなもの。
パンツは3枚しか持っていかない。自分で下着を洗う。なんでそんなことをするのか。旅先で僕は──。
(構成:上田真緒、撮影:竹井俊晴)
壮大なビジョンなんて経営者のエゴ
亀山敬司(DMM.com 会長)