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大舞台で試される、注目スタートアップの力量

深刻なホテル不足。「Airbnb」はリオ五輪の救世主となれるか?

2015/4/1
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、この1週間の注目ニュースをピックアップ。Weekly Briefing(ワールド編)では、世界で話題になっているこの1週間の読むべきニュースを各国のメディアからピックアップします。
(Will Rio de Janeiro’s chronic accommodation shortage finally find a solution in Airbnb? — Reuters/Aflo. )

Will Rio de Janeiro’s chronic accommodation shortage finally find a solution in Airbnb? — Reuters/Aflo.

リオデジャネイロの深刻なホテル不足

リオデジャネイロのホテル事情は悪名高い。

前々から、リオデジャネイロではホテルなどの宿泊施設が不足している。オリンピック以前の通常のハイシーズンでさえ、ホテルが不足している状況だ。

昨年のワールドカップでも、深刻な“ホテル不足”が叫ばれた。「Associação Brasileira da Indústria de Hotéis」 (ブラジル・ホテル業界協会、ABIH)によると、昨年のワールドカップ時、リオデジャネイロを訪れた観光客数は88万6000人に上った。

そして、その観光客がリオデジャネイロ経済に与えた経済効果の総計は、ブラジル観光省が当初予想していた10億レアル(約371億円)を大きく上回り、約44億レアルに到達。決勝戦が行われた週のホテル稼働率は99.7%に達した。

世界の最大イベントであるオリンピックが来ると、その来客数はワールドカップの比ではない。ブラジルのホテルの手に負えなくなることは目に見えている。

オリンピックに必要なベッド数にはほど遠い

では今、リオデジャネイロのホテルの準備はどの程度まで進んでいるのか?

リオデジャネイロがオリンピック開催市に選ばれた2009年の時点で、オリンピック開催市として“Olympic family”(選手とその家族、メディア、スポンサー)のために必要な4万床のベッドの半分以下しかなかった。

あれから6年——。リオデジャネイロは、 必要とされる4万床を上回る4万2000床を整えることができた。この段階までは、リオデジャネイロのホテル整備の進捗はごくごく上手く進んだといえる。

しかし、2016年のリオデジャネイロのオリンピックを見るために訪れる観客に必要なベッド数は38万床とされる。その確保はどうなっているのか?

当初は、その不足分をカバーするため、クルーズ船6隻を入港させベッド数を1万床ほど増やそうとした。しかし、この計画を実行するには“そもそも”リオデジャネイロ港を改造する必要があった。港を作り変えるにはゆうに数年はかかるが、改造が始まったのは1ヶ月前の2015年3月12日。これでは、来年の夏に控えたリオ・オリンピックまでに間に合うとは到底思えない。

もはやリオに打つ手はないのか?そんなときに救世主として現れたのが、スタートアップの新星「Airbnb」だ。

Airbnbとは、世界190カ国で宿泊可能なコミュニティー・マーケットプレイスのこと。宿泊施設と部屋を貸す人・借りたい人をオンライン上でマッチングさせるサービスだ。ユーザーは、民間の家からヴィラに至るまでユーザーの希望に沿った部屋や施設に宿泊することができる。宿泊者数はすでにワールドワイドで2500万人を超えている。

そのAirbnb が3月27日、オリンピック史上初めてホテル業以外の“代替宿泊設備のスポンサー”になると発表したのだ。

リオ・オリンピックの、“救援ボート”となるAirbnb

Airbnbにとってリオデジャネイロは重要な市場だ。世界でもっとも成長しているAirbnbの市場の一つである。

2011年時点で、リオデジャネイロのAirbnbが有する部屋数はわずか800ルームだったが、現在では2万以上となっている。今やリオデジャネイロは、アパートおよび部屋の数ではパリ、ニューヨーク、ロンドンに続く世界4位にランクインする。

Airbnbを採用したことにより、オリンピックの主催者たちは、ブラジルを含めた世界の熱いトレンドにいち早く乗ったといえる。

昨年行われたワールドカップの1ヶ月間で、ブラジル国中では約10万人が宿泊施設としてAirbnbを利用した。ちなみに、ワールドカップの間、Airbnbの“host”(部屋、宿泊施設を貸し出す主人)は平均で4000ドル(約48万円)を稼いだという。

Airbnbにとって、オリンピックは自らをアピールする絶好の機会だ。随分前からオリンピックなどの大型のイベントをターゲットにしてPR戦略を繰り広げ、成長チャンスを手に入れてきた。たとえば、前回の2012年、ロンドン・オリンピックではオフィシャルパートナーになりそこなったが、ロンドンのAirbnbの予約件数は通常の約3倍となった。そして、通常より平均価格は25%ほど高くなり、便乗値上げに対する苦情もあったほどだ。

また、昨年のソチ・オリンピックの際にも、ホテル不足が深刻でジャーナリストたちは困り果てた。世界中のジャーナリストがソチに着き、チェックインしたホテルがなんとまだ建設中だった話は“#sochiproblems”と呼ばれ、Twitterでも話題になった。

Airbnbはこの時もSNSを介して巧みなPR戦略を行った。Twitterで、#sochiproblemsについてつぶやいたジャーナリストに対して、Airbnbは魅力的な宿泊施設を紹介できるとPRし、Airbnbを利用してもらった。これにより、メディア関係者の間でAirbnbの評判が上がったのは言うまでもない。

Airbnbとリオ市が組む、2つのメリット

ただし、Airbnbに対する評判はポジティブなものばかりではない。

ワールドカップの際、Airbnbは宿泊料の値を釣り上げた。それだけ多くの動員が見込めたからだ。しかし、あまりに法外な値段を突きつけたため、激しい議論を巻き起こした。Airbnbに不信感を持った欧州の旅行代理店は、顧客をAirbnbの施設に紹介するのを控えるようになった。

今回のリオ・オリンピックでも、同様の懸念が予想される。

3月27日のスポンサーシップの発表会で、AirbnbのCPO(Chief Product Officer)兼共同創設者Joe Gebbia(ジョー・ゲビア)は、報道陣による「Airbnbはオリンピック開催中に便乗値上げをやめさせる対策をするのか?」との質問に対し、「Airbnbのサービスの規則により、価格はオーナーが決める」と語った。

今回のAirbnbとオリンピックのスポンサー提携は、リオデジャネイロの宿泊施設不足問題とAirbnbの成長を実現するwin-winの解決策といっていいだろう。特に、リオデジャネイロ市にとっては一挙両得だ。

まず慢性的なホテル不足に対する解決策になる。その上、オリンピックのための“ムダ使い”を回避することができる。今までのオリンピック開催市は大金をかけてホテルや施設を建築するのが常だった。しかしその後、パタリと客足が途絶え、豪華なホテルが“無用の長物”になるのも常だった。そんな状況を防ぐために、Airbnbの存在はありがたい。

一方のAirbnbは、今回のオリンピックで、宿泊施設プロバイダとしての力量を試されることになる。仮に、公式スポンサーとして今回のプロジェクトに上手く対処できたら、世界中にその実力をアピールすることができる。

リオ・オリンピックは、アスリートにとってだけでなく、Airbnbにとっても、人生をかけた大舞台になりそうだ。