Apple Starts Selling New IPad To Widen Its Lead Over Google

ミニパック料金でテレビ離れが加速?

ケーブルテレビや衛星放送の「パック料金」。どうしても見たいチャンネルが入っているのは50チャンネルのコースだけ。でも、実際に見るのはせいぜい10チャンネルくらいで、ほかは全然見ないんだよな…。

そんな思いをしている人は意外に少なくないはず。それが(少なくともアメリカでは)変わろうとしている。一部のネット配信サービスが、ひと握りの人気チャンネルだけを格安で提供する「スキニーバンドル(ミニパック)」の導入に向けて準備を進めているらしいのだ。

例えば今秋、テレビ番組のネット配信を開始すると噂されるアップルの場合、パックに含まれるのは25チャンネルだけとされる。2月に配信を開始したディッシュ・コミュニケーションズのスリングTVでは、月20ドルで約20チャンネルを視聴できる。ケーブルテレビ各社も契約者をつなぎとめるため、ウェブ視聴やローカルチャンネルと組み合わせたミニパックを売り出している。

1年目の料金は月40ドルと、平均的なケーブルテレビ契約料金の半分以下だ。「人々はより安い料金を求めている」と、メディア関連のニュースを配信する REDEFのジェーソン・ハーショーム最高経営責任者(CEO)は言う。小さめのパックが増えれば、バイコムやディスカバリー・コミュニケーションズなど大手ケーブルテレビ運営会社への圧力になる。これらの企業は「大量のチャンネルを擁しているが、その大部分はほとんどの人が見ていない」

ケーブルテレビ運営会社は長年、新作ドラマを宣伝したり、売上を伸ばしたりするために、人気チャンネルとそうでないチャンネルを組み合わせて提供してきた。ニールセンの昨年の調査によると、アメリカの平均的な世帯は、189ものチャンネルが見られる契約をしているが、実際に見ているのはたった17チャンネルだった。平均的なケーブルテレビ視聴料金も、2011年の80ドルから昨年には87ドルに上昇していた。

秋にもサービス開始か

「バイアコムは契約者の多様なニーズに柔軟に応えるため、各事業者と緊密に協力している」と、バイアコムの広報担当者のジェレミー・ズワイグは語る。「わが社と契約している事業者はすべて、ブロードバンドで多くのチャンネルを配信しているが、契約者の要望に応じて、より厳選されたチャンネルのパックを提供する会社も多い」

アップルはテレビ番組配信事業を年内にも開始するため、ABCやCBS、FOXなどの大手放送局と交渉中とされる。バイアコムもその一つだ。チャンネルのパックをめぐっては、これまでに訴訟もおきている。ニューヨーク地域の事業者であるケーブルテレビジョン・システムズは2013年、不正競争などを理由にバイアコムを訴えた。人気のチャンネルと一緒に、誰も見ないようなチャンネルも放送するよう強要されたというのだ。

これについてバイアコムは、同社のライセンス契約は、「事業者との柔軟で、競争的で、誠実な交渉の結果まとめられたものだ」と反論している。この事件は現在も係争中だ。

アメリカではネットフリックスなど、ネットで動画を見る人が増えており、ケーブルテレビ会社は既に契約者の流出を防ぐのに苦心している。そこにミニパックが登場したことで、無数のチャンネルをテレビで視聴する契約を打ち切る人が、これまで以上に増えるかもしれない。

そうなると、スキニーバンドルに入れないチャンネルは困ったことになると、アナリストのポール・スウィーニーは指摘する。「スキニーバンドルが広がると、視聴者が少ないニッチなチャンネルにとってはピンチだ」と、スウィーニーは言う。「(多くのチャンネルを組み合わせた)従来のパックを解体するのは、有料テレビ放送の仕組み自体を揺るがしかねない」

また、スキニーバンドルの拡大により、有料テレビ事業者や小規模なメディア企業の間では交渉力を強化しようと、提携や合併が進むかもしれないと、スウィーニーは言う。一方、スキニーバンドルから漏れたチャンネルは、有料テレビではなくウェブ上での配信を強いられる可能性があると、REDEFのハーショームは語る。

ドラマ好きには物足りない?

アメリカ最大の無線通信事業者であるベライゾン・コミュニケーションズは、モバイル端末向けの動画ストリーミング配信を開始する計画だ。もちろん契約者には、小規模なパック料金を用意する。現在は各番組との交渉中で、早ければ6月にも生放送、オリジナルドラマ、そしてオンデマンド機能を組み合わせたサ-ビスを開始する。

一方、バイアコムも、ネット分野で消費者に直接サービスを提供する方法を模索している。3月初めには、CM抜きの子ども向けチャンネルをスタートさせた。2月には、傘下のプレミアムケーブルネットワーク EPIX(映画会社のパラマウント・ピクチャーズ、ライオンズ・ゲート・エンターテインメント、MGMが出資)に、スリングTVでの配信を認めた。

とはいえ、なかにはスキニーバンドルに首をかしげる声もある。投資銀行ニーダムのローラ・マーティンら一部の専門家は、最新のヒットドラマをチェックしたい人にとって、スキニーバンドルは物足りないのではないかと指摘する。

「スキニーバンドルは、消費者の選択肢を大幅に縮小する恐れがある」と、マーティンは言う。「チャンネルを変えたくなったとき、20チャンネルしか選択肢がなかったら、消費者は不満に思うのではないか」

(執筆:Gerry Smith記者、写真:bloomberg、翻訳:藤原朝子)
Copyrightc2014,Bloomberg News. All Rights Reserved.
www.bloomberg.co.jp