進撃の中国IT

「知財」アキレス腱に次々と足を取られつつ…

それでも続く中国スマホメーカーのインド進出

2015/3/31
スマートフォン(スマホ)市場にとって未来の成長エンジンはどこにあるのか? 日米中韓はすでに高成長期を抜けて安定期に突入している…その答えは一部の気鋭メーカーの動きを見れば明らかだ。中国に次ぐ人口を持ち、経済成長のペースも好感視されているインドこそ、次の成長エンジンだと期待されている。また人口密度が高い東南アジアや広大な南アメリカもインド同様に期待を集めている市場となっている。

 Travel, Indien, India

廉価スマホ「魅族」が進出を発表

中国スマホ市場は今やレッドオーシャンと化し、各メーカーは生き馬の目を抜く競争を繰り広げている。この光景がまもなくインド市場でも繰り返されることになりそうだ。

このほど、中国スマホメーカー「魅族」(Meizu)がインド市場に進出することを明らかにした。そこで販売を予定しているのは、低価格スマホ「魅藍Note」で、中国でも品薄の人気機種だ。魅藍Noteを購入しようと中国では長蛇の行列ができるのだが、魅族はこの成功をインド市場でも繰り返したいともくろんでいる。

魅藍Noteはインド市場では「M1 Note」という名称で発売される。パーツ構成などは一切変更なく、価格は現時点では未定。今年の「モバイル・ワールド・コングレス」(MWC)で魅族の海外メディア担当者が明らかにしたところによると、インド市場の消費能力を考えた上で魅藍Noteを投入する。インドでの販売価格はおそらく中国での公式価格を下回る可能性が高い。また中国国外での販売であっても、魅藍NoteはUbuntuやオリジナル版アンドロイドOSではなく、独自のカスタマイズ・アンドロイドOSである「Flyme」を堅持するという。

同担当者によると、魅族は2015年にインド市場で70万台の販売を期待している。2014年の同社出荷台数は約500万台で、うち12月だけで100万台を販売している。この数と比較すれば、インドの70万台という目標は決して少ないものではないことは明らかだ。

魅族はすでにロシア、イスラエル、香港にも進出している。魅族の白永祥最高経営責任者(CEO)は昨年のインタビューで、米国市場進出の意欲を示した。米国で人材を募り、シリコンバレーに研究開発センターを設立する考えも明らかにしている。この件について続報はないが、魅族が海外進出にきわめて積極的な姿勢を見せていることは間違いない。

無名中国ブランドがインド市場5位に

ニュースをひもとけば、インド市場開拓に向かった中国企業は魅族だけではない。迷走が続くエリクソンがインドで中国の「シャオミ」を知的所有権侵害で訴えたが、これはシャオミのインド進出が好調だった証左と言えるだろう。他にも2013年末に創業したばかりの新興スマホメーカー「ワンプラス」(一加手機)もインドに進出したが、シャオミ同様に知的所有権侵害で告訴され一時的に販売停止処分を受けている。

[訳注:「ワンプラス」は米Cyanogen社に同社製プログラムがそのOSに盗用されていると訴えられ、2014年12月16日に販売の一時停止が申し渡された。その後、同月24日にプログラムのバージョンが違うとの理由で販売中止命令は撤回された。シャオミもその後、エリクソンが問題とするICチップを「クアルコム」製品に変えて販売を再開している]

シャオミ、ワンプラスに加え、ファーウェイやZTEといった技術力のある大メーカーもインドに進出している。

これら著名企業を差し置いてインドで最大の成功を収めている中国スマホメーカーが「Gionee」(金立)だ。中国国内では無名の小企業だが、2014年にインド市場で400万台を出荷、メーカー別ランキング5位となった。この台数はその他のインド市場に進出した中国メーカーの出荷台数総合計台数に匹敵する。

インド市場:iPhone 6は年収の43%

中国メーカーの戦略を概観すると、基本的にローエンド・ミドルレンジを中心とし、オンラインショップと携帯キャリアを販売ルートする点で共通している。インドの消費レベルが中国よりも低いことを考えれば、納得できる戦略だ。それについてはこの言葉が参考になる。

「SIMフリー版のiPhone 6の価格は最安バージョンでも649ドル。米国人ならその平均年収5万3143ドル(2013年統計)の1%ちょっと、中国人の平均年収では約10%だ。だが、インドではiPhone 6の購入は平均年収の43%を差し出すことになる」

ここに米中印の消費レベルの違いが端的に表れている。これこそシャオミが「紅米ノート」、魅族が「魅藍Note」と低価格機をインド戦略の主軸に据える要因なのだ。また、シャオミが自慢する自社サイトでの直接販売もそのままインドに持ち込むのは難しい。そこでFlipkart、SnapdealといったインドのECサイトで販売する必要が生まれてくる。

以前、インドの携帯メーカー「Micromax」がサムスン相手に攻勢をかけ、インド・スマホ市場のトップを奪ったことがある。そこからも明らかなように、国際市場におけるサムスンとノキアの衰退は多くのメーカーにチャンスをもたらしている。これは中国市場を見ても実証されている。

Micromaxのスマホは中国のOEM工場で生産されている。そのデザインも製造技術も中国メーカーには及ばない。中国メーカーは製品の実力と価格においてMicromaxに決して劣ってはいないのだ。海外メディアをよくチェックしていれば、中国製スマホの国際的な影響力、口コミ評価が次第に高まっていることを知っているはずだ。中国メーカーのインド進出もその傍証と言える。

実力を蓄えた中国メーカーだが、アキレス腱はある。シャオミ、ワンプラスだけではなく、Gioneeも知的所有権関連で法的トラブルを抱えている。中国国内の複雑な保護が受けられないインド市場での戦い、この戦場でこそ中国メーカーの真の実力が試されることになる。

(執筆:劉学文/ifanr.com 翻訳:高口康太 写真:@iStock.com/Nikada)

※本連載は毎週火曜日に掲載する予定です。

[YF]ifanr_logo_200

The copyright of this article belongs to ifanr.com. The original Chinese article is here: http://www.ifanr.com/503829.