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Weekly Briefing(スポーツ編)

組織を熱くするハリルホジッチのマネジメント術

2015/3/29
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。日曜日のテーマはスポーツ。今回は日本代表のハリルホジッチ新監督のマネジメント術に迫ります。

Pick:ハリルホジッチ新監督のマネジメント

今だからわかることだが、ブラジルW杯、およびアジアカップにおける日本代表の敗因は、次の一言に集約できると思う。

「組織」と「個人」の利益の不一致――。

チームスポーツでは「組織の利益」と「個人の利益」のベクトルが一致したとき、最も力が発揮される。ブラジルW杯を制したドイツ代表は、「準優勝や3位はもうたくさんだ」という思いが、組織と個人の利益を一致させた。

だが、日本の場合、ベクトルがバラバラだった。

ブラジルW杯では、優勝を夢見る選手と現実派の選手の思いに溝があった。今年1月のアジアカップではアギーレ監督の解任が既定路線になっており、限界を越えてプレーするというムードにならなかった。

南アフリカW杯では「世間を見返す」という点で全員の利益が一致し、真のチームワークと献身さが生まれたが、ブラジルW杯とアジアカップでは自己犠牲の精神に乏しかった。それでは奇跡は起こせない。

エリートが集まる代表では、少し油断すればすぐにチームが壊れる――。サッカーの歴史の浅い日本は、その真実を甘く見ていたのかもしれない。

しかし、日本代表の新監督に就任したヴァイッド・ハリルホジッチは、ベクトルを一致させるという点に関しては、心配しなくて良さそうだ。

3月23日に始まった日本代表合宿において、この旧ユーゴ出身の指揮官は、これでもかというくらいにチームの気持ちをひとつにまとめようとしていた。

今回はこの1週間に見られたハリルホジッチのマネジメント術をピックアップしたい。

流儀1:選手にゴールを運ばせる

日本代表にはスタッフが多く、ザッケローニ時代もアギーレ時代も、練習前や練習後にゴールマウスを運ぶのはスタッフの役目だった。手伝おうとする選手は皆無だった。

だが、ハリルホジッチの流儀は違った。

チュニジア戦の翌日、練習が終わると、選手に呼びかけて全員でゴールを運ばせたのだ。もちろんその中に本田圭佑も香川真司もいた。

チュニジア戦翌日の練習が終わると、ハリルホジッチ監督は選手たちにゴールを運ばせた(写真:Shinya Kizaki)

チュニジア戦翌日の練習が終わると、ハリルホジッチ監督は選手たちにゴールを運ばせた(写真:Shinya Kizaki)

この風景だけ見ればまるで高校生の部活だが、ちょっとした普段の行動で“勘違い”が助長される恐れがある。

チュニジア戦前日の練習中にも、長谷部誠ら選手がミニゴールを運んでいた。

誤った特権意識を与えないように、ちょっとした振る舞いにもこだわっていることが伺えるシーンだった。

流儀2:集団行動を徹底

チュニジア戦のキックオフ前のことだ。

日本代表のバスが大分のスタジアムに到着すると、選手たちがぞろぞろとピッチに姿を現した。

これまでも芝生の状態をチェックするために、ピッチに出てくる選手はたくさんいた。だが、全員ではなく、たとえば吉田麻也や内田篤人はベンチに座って話している姿がよく見られた。

それに対してハリルホジッチの場合、一糸乱れぬ集団行動なのである。

チュニジア戦前、バスがスタジアムに到着すると、選手たちは一緒にピッチに現れ、一緒に帰って行った(写真:Shinya Kizaki)

チュニジア戦前、バスがスタジアムに到着すると、選手たちは一緒にピッチに現れ、一緒に帰って行った(写真:Shinya Kizaki)

全員でバッと現われ、コーチの合図後、全員でバッと帰る。

食事も全員がそろってから食べ始め、全員が食べ終わってから部屋に戻るルールになった。

息苦しさと規律は紙一重だが、プライドが先歩きしている現時点の代表には、ちょうどいいかもしれない。

流儀3:一緒に声を出させる

4人一組が横一列に並んで前方に歩き出し、様々なウォーミングアップの体操をしていたときのことだ。

フランス人フィジカルコーチのシリル・モワンヌは、4人がタイミングを合わせて手を叩き、同時に掛け声を出すことを求めた。まるでダンスのようである。

最初、選手は照れ笑いを浮かべて声も小さかったが、槙野智章が率先し、次第に大きな声が出るようになった。

どうやら声出しは、ハリルホジッチの練習では欠かせないようだ。

「練習中、監督はチームメイトにコーチングすることを求めます。何より監督が一番声を出している」と長谷部は語る。

声を出したら勝てるわけではないが、チームに新たな活気が生まれていることは間違いない。

この他にも、「試合前日の取材を制限」、「外出禁止(許可制)」、「ポジションごとのミーティング」など、細かいルールや施策がたくさんある。

選手の思考、集団の思考、そして監督の思考がどう変化していくのか。戦術の変化とともに、マネジメント術にも注目していきたい。