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Jリーグ・データシンキング第2回

【ハリル初陣企画】日本代表国内組FWの実力

2015/3/27
日本代表の新監督にハリルホジッチが就任したことで、FW陣に宇佐美貴史ら新たな選手が加わった。彼らはどんな武器を持ち、どう代表を変えられるのか? データスタジアム社の分析を元に、国内組FWの実力をあぶり出す。

国内組の底力

海外でプレーしていたら偉い──。

そんなイメージが日本サッカー界にはあるだろう。確かにシャルケといったドイツの名門クラブでは1試合の勝利給が400万円を超え、年俸という点では国内と欧州では大きな格差がある。本田圭佑のACミランにおける推定年俸は約4億円で、Jリーグの新人選手の約100倍だ。

だが、純粋な実力ならどうか。

ハリルホジッチ新監督は3月下旬の親善試合に向けて、JリーグでプレーするFWを7人リストアップした(バックアップメンバーを含む)。

宇佐美貴史、永井謙佑、武藤嘉紀らはどんな武器を持っているのか?

データによって見えてきたのは、国内組の「底力」だった。Jリーグの2014シーズン実績データをもとに、彼らの強みを見ていこう。

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日本代表の「決定力」において、最も物足りないのはミドルレンジからのシュートだろう。きれいに崩すのはうまいが、遠くから強引にねじ込むのは苦手。強国に比べると、明らかにシュートレンジが短い。

だが、22歳の若者が、この問題を解決してくれるかもしれない。

ガンバ大阪の宇佐美貴史だ。

宇佐美は昨シーズンのJリーグにおいて、最も「ペナルティエリア外からのゴール数」が多い選手だった。

ボールタッチが柔らかく、密集した中でも時間と空間をつくることができ、なおかつ抜群にミートがうまい。今季のヴァンフォーレ甲府戦でも、わずか2タッチで相手の逆を突き、ペナルティエリアの外からミドルをネットに突き刺した。

開幕前、Numberの取材でインタビューしたとき、宇佐美貴史は不敵な笑みとともにこう語っていた。

「意識してミドルシュートを練習したわけではないんですけどね。特別、筋トレをしたわけでも、フォームを変えたわけでもない。ただ、昨季ポジションが最前列のFWから少し下がったので、プレッシャーがないから『ああ、打ってみよう』という感じで。そうしたら自然にミドルが入るようになりました。ナチュラルにやっているだけですよ」

もし代表のピッチに立てば、たとえ短い時間でも、特別な仕事をしてくれるに違いない。

一方、ペナルティエリアへの侵入という点で最も優れていたのが、FC東京の武藤嘉紀だ。

昨季のJリーグにおいて、武藤は「ペナルティエリア内へのドリブル成功数」が最も多い選手だった。

この数字は、武藤の「気の強さ」をよく表している。同学年の宇佐美がエリートコースを歩んだのに対して、武藤はアンダー年代の代表経験が一切ない。だからこそ特別なハングリーさが身についた。失敗を恐れない姿勢は、日本代表でトップクラスだ。

ただし、「ペナルティエリア内へのドリブル成功数」の1位は紙一重で、2位の宇佐美との差はわずか1回だった(前者が30回、後者が29回)。“エリート”宇佐美はドリブルも得意なのだ。

もちろん宇佐美にも、苦手なプレーがある。「ワンタッチゴール」だ。

昨季の宇佐美の「ワンタッチゴール数」はわずか2点。パトリックとの役割分担も関係しているが、もっとゴール前に飛び込む形のゴールがあっていい。

それに対して、ワンタッチゴールを得意にしているのが名古屋グランパスの永井謙佑だ。

足の速さは、間違いなくJリーグ一。今季のスプリント数は第1節から第3節まで21回、31回、36回と、攻守において爆発的な速さを見せている。

J1第3節までの「スプリント数ランキング」を公式発表のデータから作ると、以下のようになる(かっこ内は所属クラブと1試合あたりのスプリント数)。

1位小川慶治朗(ヴィッセル神戸、37回)、2位高山薫(湘南ベルマーレ、32.0回)、3位山本康裕(アルビレックス新潟、30.3回)、4位永井謙佑(29.3回)、5位武藤嘉紀(27.7回)

やはり永井は上位にくるが、武藤も負けていないことが分かる。ちなみに宇佐美のスプリント数は1試合あたり13.3本。イメージ通り少ない。

データから分かるのは、宇佐美、永井、武藤の3人は、能力が補完関係にあるということだ。

宇佐美 ミドルシュート×ドリブル
 永井 スプリント×ワンタッチゴール
 武藤 ドリブル×スプリント

ハリルホジッチ監督は、このパズルをどう解くのか? 才能を生かすも殺すも、指揮官の腕次第である。

データ提供:データスタジアム株式会社

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(文:木崎伸也/インフォグラフィック編集:櫻田潤/データ分析:滝川有伸〈データスタジアム〉)