正しく体を揺らすと健康になる・連載第7回
デスクに座って「肩甲骨」をゆらゆら
2015/3/26
肩こりや腰痛は、動きの癖に由来する「体の歪み」に原因がある。ただし、心掛け次第でそれを改善できる。前回は通勤中に吊革を使って肩甲骨を揺らすやり方を紹介したが、仕事中にも「ゆらゆら」することは可能だ。デスクに座ったまま肩甲骨を揺らす方法を、トレーナーの西本直が紹介する。
デスクワークの方にもってこいの健康法
私自身32歳まで、東京で普通のサリーマンとしての生活を送っていました。
朝は満員の通勤電車に揺られ、仕事としては外回りが多かったので、関東近県の路線はほとんど利用したことがありました。
他人の芝生は青く見えると言いますが、季節や天候に関係なく外回りをする仕事で、デスクワーク中心の内勤者をうらやましく思うこともありました。
今の時代、デスクワークといっても、そのほとんどはパソコンに向かっていると思います。
こうして文章を書いている私の状態がまさにそうですが、パソコンに向かいキーボードをたたいていると、あっという間に時間が過ぎていきます。
2時間、3時間と同じ姿勢を続けてしまうと、当然体全体の血液の循環は悪くなり、筋肉が硬くなってしまいます。
仕事だけでなく、趣味でパソコンに向かうことが日常化した現代では、腰痛や肩こりの原因として最も大きな比率を占めていると思います。
こうなると職業病という言葉を通り越して、生活習慣病とも言える大きな問題と言えるかもしれません。
体を動かさないことがどれだけ体に悪い影響をもたらすか、ということも大きな問題となります。
今回はデスクワークの方にもってこいの健康法をご紹介します。
キーボードをたたきながら肩甲骨をゆらゆら
イメージしやすいように、コールセンターでお仕事をされている方の姿を想定して話を進めていきます。
お客さんとはインカムを使って会話をして、実際に動かすのはキーボードを打つ両手の指先ということになります。
ということは、腕の構成要素である、肩関節や肩甲骨を自由に動かすことができますよね。
おそらくは無意識に、時々首を倒したりぐるっと回してみたり、肩を上げ下げしたりということを、誰しも日常的に行っていると思います。
固まってしまった筋肉をほぐそうとして、体が行う自然な運動ですね。
この動きに一工夫加えてみましょう。皆さんが行っているのはおそらく肩を上げ下げしている運動で、両方一緒に行えば首をすくめるという動きになると思います。
肩そのものではなく、肩甲骨に着目してください。
肩甲骨とは、背中の上部に位置し、背骨に対して真っ直ぐな辺と、鎖骨に対して真っ直ぐな辺を結んだ線で構成される三角形の形状の平べったい骨です。
この骨の下の角が背骨から離れるように開くことで、肘が肩よりも高く上がるように手助けしていることはすでに書きました。
普段ほとんど意識することはありませんが、この骨の動きがなくなってしまうことが肩こりを生み、四十肩や五十肩の一番大きな原因になっています。
肩ではなく、その肩甲骨そのものを意識して、背中の上部をいろいろな方向にゆらゆら動かすだけで、肩や首のコリには大きな効果があります。
指先はキーボードに触れていますが、指先の動きはそのままに、肩甲骨を上下にまた前後に動かしてみてください。
最初は肩甲骨と言われても、おそらくは肩の上げ下げしかイメージできないと思いますがそれで十分です。その際に自分では肩甲骨を動かしているんだという意識を持って行うことが大切です。
参考になる四足動物の動き
私は直接指導をする際、私の肩甲骨を触っていただいて、その動きを感じていただくのですが、背中の後ろ側にある肩甲骨がこれほどまでに自由に動くのかと、皆さん一様に驚かれます。
もちろん体には肩甲骨を動かすための筋肉も存在しているのですが、普段の生活でそれを意識して使うことがなくなってしまったため、動かすことができなくなってしまっているのです。
肩先がほとんど動くことなく、四足動物が歩いている姿を思わせるように肩甲骨が動くさまは、人間として本来持って生まれた能力とはいえ、結構インパクトがあるようです。「人間はこんなところも動かせるんだ」と。
その時、当然背中や腰も動きますが、仕事に支障をきたさないように小さな動きから練習してください。
とにかく体を固くして猫背になったままキーボードをたたき続けるのと、肩甲骨をゆらゆらさせるのとでは、どれだけ感覚が違うかをぜひ試してみてください。
ただし姿勢が悪いと言っても、胸を張ってはいけません。
次回はそれを書こうと思います。
※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載する予定です。