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シティ日本法人代表インタビュー最終回

独占告白3「クラブ単一の収益は頭打ち。グループの強みを生かす」

2015/3/25

シティの経営戦略

UAEの投資グループが出資する『シティ・フットボール・グループ』は、マンチェスター・シティを起点に、ニューヨーク・シティ、メルボルン・シティ、横浜F・マリノスのクラブ経営に携わっている。

果たして『シティ・フットボール・グループ』はサッカー界において、どんな革命を起こそうとしているのか? 同グループの日本法人代表の利重孝夫氏に経営戦略を聞いた。

グループ内に存在する3つのコンサル集団

――『シティ・フットボール・グループ』は計4つのクラブの強化・経営に関わっていますが、グループ化することにどんなメリットがあるんでしょう?

利重「それを説明するには、私たちの組織図を知ってもらう必要があります。グループ内のクラブにコンサルティングを行なうために、私たちは3つの専門組織を持っています」
 シティフットボールグループの組織体制

利重「『シティ・フットボール・マーケティング』は、各クラブに対して、スポンサー契約などマーケティング全般のアドバイスをします。『シティ・フットボール・サービス』は選手補強といった強化のサポート。そして『シティ・フットボール・ファウンデーション』は、社会貢献活動をする財団です。

今までにない取り組みだと思います。これによって統一したコンセプトの下、クラブ経営のノウハウやナレッジを共有することができます。組織ができたのは約1年前ですので、まだまだ発展途上ですが、どんどん人材を拡充して組織の充実を図っています」

――どんな国の人たちが働いていますか?

利重「サッカーなので基本はヨーロッパ系が多いです。でも私を含めてアジア系、中国人もインド人もおります。アメリカの人間もおりますし、本当に多国籍であらゆる国の人間がいます。働いていると楽しいですね」

――そうなると、マリノスの組織図も変わったのでしょうか?

利重「いや、だからこそ日本法人『シティ・フットボール・ジャパン』が設立されたんです。マーケティングや強化のコンサルをするときに、日本法人が窓口になるわけです。簡単に言えば、私がアテンドするということですね。

こういう取り組みが他国にも伝わって、『シティのコンサルタントサービスを受けたい』と問い合わせを受けるようになりました。名前を明かすことはできませんが、あるサッカー協会、クラブ、プロリーグに対して、『シティ・フットボール・グループ』が有料でコンサルタントをしています。これからは、この業務からも収益が上がるようになると思います」

利重孝夫(とししげ・たかお)、シティ・フットボール・ジャパン 日本代表マネージング・ディレクター。読売ユース出身で、東京大学在学中はア式蹴球部に所属。卒業後は日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)を経て、2001年に楽天株式会社に入社。常務執行役員を歴任し、クリムゾンフットボールクラブ(Jリーグ・ヴィッセル神戸の運営会社)の取締役も務めた。2014年11月から現職。(写真:福田俊介)

利重孝夫(とししげ・たかお)、シティ・フットボール・ジャパン 日本代表マネージング・ディレクター。読売ユース出身で、東京大学在学中はア式蹴球部に所属。卒業後は日本興業銀行(現みずほファイナンシャルグループ)を経て、2001年に楽天株式会社に入社。常務執行役員を歴任し、クリムゾンフットボールクラブ(Jリーグ・ヴィッセル神戸の運営会社)の取締役も務めた。2014年11月から現職。(写真:福田俊介)

U-21ブラジル代表獲得をサポート

――今季マリノスは『シティ・フットボール・グループ』の援助の下、U-21ブラジル代表の10番のアデミウソンを獲得しましたね。マリノスとシティ、どちらが決めたのですか?

利重「マリノスのモンバエルツ新監督の人選もそうですが、マリノスとシティ、どちらが決めたかということではなく、すでに一体化しているんです。

そのために私も1年前から準備をしてきました。すでにマンチェスターやロンドンから、いろんな分野の人間が横浜を訪れています。ゲーム分析、スカウティング、デジタル・マーケティング、チケット・セールスのエキスパートなどです。

『誰が決めたのか?』ということではなく、『シティ・フットボール・グループ』の中のマリノスとして決めたんです。使える資源を最大限活用するということです。

新監督も外国人選手も、今のマリノスの問題点を解決する人を探しました。昨シーズンはリーグ最少失点で守備は安定している。でも、ストライカーがいません。そこで攻撃の形を構築できる監督と、ストライカーを呼んでこようと。シティの持つスカウトのネットワークをフルに使いました。補強だけではなく、スポンサーを含めて、いろんなプロジェクトを進めています」

――いずれアデミウソンがマンチェスター・シティへ移籍する可能性はありますか?

利重「あくまでマリノスが、今必要だということで獲得を決めましたが、結果的にそうなればいいと思います。マリノスで活躍するということですからね」

クラブ単一の収入は頭打ちになりつつある

――『シティ・フットボール・グループ』は最終的には何を目指していますか。

利重「単一クラブのビジネスモデルというのは、『強さ』の上に成り立つモデルです。強さを持続するためには、限りなく選手へ投資していかなければなりません。しかし、クラブの基本的な収入源である入場料、スポンサー収入、グッズ収入は、成長の限界にきています。

だから複数の国にクラブを持って、それをしっかりとグループ化して運営していく。そして、先程説明したように、グループの強みを生かして他クラブへのコンサルティングで収益を得る。これは新しいビジネスモデルです。

グループだと、スポンサーセールスの点でもメリットがあります。例えばマンチェスター、ニューヨーク、メルボルン、横浜を通じて4カ国でマーケティングを展開することが可能になります。リーグで言えば、プレミアリーグ×MLS×Aリーグ×Jリーグというプラットフォームを使えるということです。

マリノスのアジア戦略に、プレミアリーグのアジアにおける人気を掛け合わせて、プロモーションをすることも可能です。これは他クラブでは絶対にできないことです。結果として、Jリーグのアジア戦略にもプラスになると思います」

優秀な学生に飛び込んできてほしい

――今、スポーツビジネスに関心を持つ学生が増えています。アドバイスはありますか?

利重「実は私が『シティ・フットボール・グループ』に関わっているのには、ある目的があります。それは日本のスポーツビジネスの規模を拡大するということです。

そうすれば興味を持った優秀な学生たちが、自信を持ってこの世界の門をたたいてくれます。そういう人たちと一緒になって、市場を広げていきたい。

優秀な学生に、ぜひ飛び込んできてほしい。そのために『シティ・フットボール・グループ』としての活動があるとも思っています。

新卒でなくてもいいです。金融、戦略コンサルティング、あるいはITの世界からきてほしい。現在のシティもそういった人間が集まって、魅力的な組織になっています」

※本連載は毎週水曜日に掲載する予定です。