30年後に備える資産運用

4人に1人は分配総額が減っても「毎月分配」を嗜好

非合理な「毎月分配型投信」の投資家たち

2015/3/19
行動経済学では、人は合理的でない行動をとるものだということをよく指摘します。投資の世界でも多くあることですが、特に投資信託の分配金ではそうした事態が非常に鮮明に出ているように思います。年1回よりも毎月受け取れる方が良いという投資家の嗜好(しこう)は時に驚かされます。

行動経済学でみる分配金の行動バイアス

前回に続いて分配型投資信託をめぐる不思議な投資家の行動を紹介したいと思います。行動経済学は、人は合理的な生き物ではないことを前提に経済を考える学問です。それによると、人間の行動バイアスの一つとして、うれしいことは小分けにしてもらった方がうれしさの総和は一度に受けるよりも大きくなると指摘しています。

年に1回豪華な外食よりも、毎月ちょっとした外食が12回あった方が、うれしさの総和では上回るといった具合です。これと同じことが、分配金型投信にも起きています。

フィデリティ退職・投資教育研究所では、2010年2月に行った分配型投資信託保有者3340人に対するアンケート調査において、「もし100万円で投資信託を購入するとしたらどれを選びますか?」と聞き、「年1回1万2000円の分配金のある投資信託」「毎月1000円の分配金のある投資信託」、そして「分配金はないが値上がりの可能性のある投信」の3つの選択肢を用意しました。さて、皆さんならどれを選ぶでしょう。

年間1万2000円より月1000円の方がいい

この選択肢では、「年1万2000円の分配金」も「月1000円の分配金」も年間でみれば同じ金額ですから、その差は大きくないのが合理的なところです。

ところがアンケートの結果は、「毎月1000円の分配金を好む人」が35.8%と、「年1回の分配金を好む人」の21.8%をかなり上回りました。さらに2つ目の質問では、選択肢のうち、「月1回の分配金を900円」に下げて聞いてみました。この場合には毎月分配型投資信託の分配金は1万800円で、明らかに「年1回1万2000円の分配金」よりも分配金の金額は下がります。
 25_分配金に目がくらんでいないか

しかも、「月1回1000円」を聞いた後に「月1回900円」に下げたことが分かるようにして聞いていますから、分配金の大きさが投資信託の選別に大きな影響を与えるとすれば、「年1回1万2000円の分配金の投資信託へ」の嗜好が高まるはずです。

結果は、予想通り「年1万2000円の分配金」を好む人が33.5%に増えましたが、「毎月900円の分配を好む人」も24.6%残っていました。4人のうち1人は依然として分配金の年間総額が減っても「毎月900円の分配金のある投資信託」を嗜好しているのです。

毎月の分配金が欲しいという行動バイアス

これは単純に分配金が多い方が良いというだけではなく、毎月分配金が受け取れるという仕組みが良いということを示しているように思われます。

喜びの総和と同じで、分配金でも年間で同じ金額なら一度に受け取るよりも12回に分けた方がうれしいというわけです。もちろんこれは錯覚です。分配金を受け取る生活にはうれしさも必要ですが、現実の生活を合理的に見る目も必要なはずです。

もちろん、退職した人たちがこの毎月の分配金を生活の一部にしているのであれば、意味のあることでしょう。毎月ある程度まとまった資金が入る方が、1年に1回受け取るよりも生活のリズムをつくることができます。実際、退職者8000人に聞いたアンケート調査で、年1回の分配金を出す投資信託と毎月分配型の投資信託でどちらに投資するかを聞いた結果、67.1%が毎月分配型投信を選ぶと答えています。

これを現役時代の年収別にわけてみると、年収2000万円以上だった退職者では毎月分配型志向は54.5%だが、300万円未満では72.7%に高まっています。現役時代の所得が低いほど毎月分配型投信を好む傾向にあると言えるようです。

生活費の足しにするのならいいのだけれど

とすれば、分配金を生活費の足しにすることを考え、所得の少なかった人にとって分配金は年金の補完として大いに役立つのでしょう。しかし、本当に生活費に使うために分配金を受け取っているのか疑問が残ります。

前回のコラムで紹介した表のとおり(「『分配型投資信託』との正しい付き合い方」)、分配型投信保有者に対する分配金の使い道を聞いたアンケート調査の結果では、「将来のための貯金」「遊興費」「生活費の一部」「その他」の選択肢の中で、「将来のための貯金」が52.8%と突出して多く、60歳以上の保有者に限っても男性で41.0%、女性で42.3%と高い比率になりました。

毎月受け取る分配金を生活費のために使うと言いながらも、その資金は「将来のための貯金」にするのであれば、何も毎月分配金を受け取る必要もないはずでしょう。ここにも非合理な行動が出ています。

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※本連載は毎週木曜日に掲載する予定です。