スタートアップの特許出願はどうあるべき?
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スタートアップこそ、特許など知的財産を戦略的に考えるべきだと思います。
これまでになかった新しい技術、新しい発想・着眼点、新しいビジネスモデルで事業を立ち上げているため特許化の可能性はあります。まだ実現していないアイデア段階でも出願はできます。
問題は、成長途上で事業そのものを世に公表していくために特許出願の要件である「新規性」がなくなることかと思います。公表して1年以内なら新規性の例外が認められますが、なかなかスタートアップでは知財を考える余裕もなく、気がつけばもう出願できないというケースも多いです。
出願費用も弁理士にお願いする費用含めても数十万というところで、そこまでべらぼうに高くもないですし、知財は早い者勝ちの世界なので、将来的な攻め、守りのためには早いうちに検討はした方が良いです。私のいるドローン産業はまだまだ黎明期のため、これから多くの企業が使うであろう根っこの技術になる特許を我先に出願する企業が群雄割拠している状態です。
スタートアップの場合、技術はあれど創業メンバーに特許について明るい人材がいないことが多く、なかなか特許出願までは対応しきれないケースが多いと思います。スタートアップは会社の技術力を市場で高く評価してもらうために社外に向けたパフォーマンスを可能な限り大々的に行うわけですが、反面、大規模資本を有する大手企業はその間にも虎視眈々と社内で技術を研磨し、スタートアップが持っている領域の技術の特許から抑えにいってしまう、、、なんてことも散見します。
日本のドローン市場では、エンジェル投資家の千葉功太郎氏が組成したDrone Fundがスタートアップの特許戦略の重要な役割を果たしています。2017年のファンド組成と同時に、投資先企業の知財戦略をサポートするための特許共同出願専門会社DRONE iPLAB(現One ip弁理士法人)を設立しています。
社内に特許に明るい専門性の高い人材がいなくても、同弁理士法人に依頼をすると特許出願手続きだけでなく、攻めの知財戦略についてのアドバイスを貰えるのが心強いのです。同ファンドでは「Drone Fundファミリーの知財を束ねて強くする「パテントアンブレラ」戦略」と呼んでいます。
国土交通省の「ドローンの特許出願状況の調査分析」資料(令和5年4月発表)によると、2020年までで世界では99,969件の特許が出願されており、そのうち日本は11,059件を占めているそうです。米国と中国だけで全体の7割弱のシェアを持っており、新たな技術を開発する際にも既存の特許を踏んでいないかどうかを確認することはとても重要であり、信頼できる弁理士へのアクセスをもっていることはスタートアップにおいてますます重要になってくると思います。
国交省の報道資料:
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/gijyutu/content/001603643.pdfいくらいい技術があっても、既に他社の特許があって自社になければ他社から侵害訴訟をおこされるか、通常は売上の数%で設定される使用料を払うだけです。
売上の数%なので、例えば3%とした場合、仮に本来の営業利益率が10%の事業なら7%になる訳で、当然ExitやIPO前には知財クリアランスを確保するなり自社で重点的に出願して排他権の範囲を広げるべきです。
もちろんExitやIPO前だからということではなく、本来特許侵害は少量のサンプル提供でも業として実施すれば侵害です。が、既にビジネスのある領域ではなぜ侵害訴訟がバンバン起きないかというと、訴訟にも大変な労力(ヒトカネ時間)が掛かるためです。
よって通常は、"これくらいなら様子見でほかっておいて売上が大きくなったら訴えるか"とか"数社がお互いに特許網を形成して踏み合った状況だが一部で訴えたら他で訴えられる"という状況になっているだけで、表には出ないものの緻密な戦略があることも多いです。