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3月第3週の注目ニュース(メディア・コンテンツ)

「アナ雪」はほんの序章。ディズニーの“攻め”はまだまだ続く

2015/3/17

昨年、世界の映画シーンを席巻した「アナと雪の女王」。3月12日、ディズニーから「アナ雪」続編の製作が正式に発表された。今週のWeekly Briefingでは、「アナ雪」を中心とした、ディズニー関連のニュースをピックアップする。

Pick 1:「アナ雪」、日本の興行収入は254億円なり

『キネマ旬報 映画業界決算特別号』(2015年3月下旬号)

昨年の日本の映画マーケットは堅調に推移。興行収入は、前年比6.6%増の2070億円となった。好調のドライバーは、言うまでもなく、「アナ雪」だ。その興行収入は、254.8億円。実に、興行収入全体の12%を稼ぎ出したことになる。

以下に、昨年の映画収入トップ・テン(邦画・洋画)を示したが、「アナ雪」の突出ぶりがよくわかるだろう。
日本映画興行収入トップ10 (1)

Box Office Mojoによると、「アナ雪」は世界で約12.7億ドルの興行収入を稼いでいるが、そのうち68%が海外からの収入。そして、海外収入のうち、約25%が日本から生まれている。ディズニーにとって、日本人は超の付く“お得意様”なのだ。

ちなみに筆者は、興行収入トップの20作品のうち11作品を観たが、邦画のベストは「るろうに剣心 京都大火編」で、ワーストは「テルマエ・ロマエⅡ」。洋画のベストは「ゼロ・グラビティ」で、ワーストは「ノア 約束の舟」。こんなコラムを書いておいてなんだが、「アナ雪」がなぜここまで人気なのか、いまいちピンとこない。

©Catherine Lane/iStock.com

©Catherine Lane/iStock.com

Pick 2:実写版「シンデレラ」、好スタート

Bret Lang,“Box Office: ‘Cinderella’ Reigns With $70.1 Million, ‘Run All Night’ Falls Flat” Variety(2015年3月15日)

「アナ雪」後のディズニーは大丈夫なのか?

そんな声も聞こえるが、「アナ雪」後の作品もしっかり結果を出している。「ベイマックス(原題:Big Hero 6)」は、世界ですでに6.3億ドルの興収に達しているが、それに続く今後のラインナップも強力だ。

3月13日には、全米や中国などで実写版「シンデレラ」が封切り。全世界で1.3億ドルの興行収入を記録するなど、快調な出足となった。この数字は、「マレフィセント」を上回るペース。ディズニーの思惑どおり女性客にヒットし、オープン週の観客の68%が女性となったという。

日本での公開日は、4月25日。「アナ雪」大ヒットの要因の一つとして、「Let It Go」の日本語訳を松たか子、神田沙也加が歌うという絶妙なローカライズ戦略があった。本作でも、同様の手法が採用されており、日本限定のデュエットソングを高畑充希、城田優が歌っている。

Pick 3:ディズニーの次なる狙いは「大人の女性」

Drew Harwell, “What $4,595 “glass slippers” say about Disney’s princess sales machine” The Washington Post(2015年3月11日)

「アナ雪」は映画の興行収入だけでなく、ディズニーランドでの集客、グッズ販売でも絶大な波及効果を生んだ。「アナ雪」関連商品の売上高は、年間10億ドルに達している。

だが、ディズニーはこれでも満足しない。「アナ雪」でグッズが売れたと言っても、その主なターゲットは子供であり、市場規模は限られる。

そこで、ディズニーが次に目をつけたのが、「大人の女性」。その最初のチャレンジが、「シンデレラ」である。有名ブランドとのタッグで、化粧品から、アクセサリーから、アパレル商品まで、さまざまなシンデレラグッズを発売している。

「大人の女性」を狙う大きな理由のひとつが、単価の高さだ。

シャンパングラスが75ドル、スニーカーが350ドル、クリスタルネックレスが599ドル。シンデレラの代名詞と言える「ガラスの靴」に至っては、4595ドルするものさえある(エイミー・チューとのコラボ商品)。高単価でも売れ行きは出足好調。先月、M.A.Cとのコラボによる化粧品をオンラインで売り出したところ、わずか数時間で売り切れとなった。

今は、「男女平等」が常識で、「自立した女性」が崇められる時代。そんな現代において、あえて古典的な「シンデレラ路線」を打ち出すディズニーの戦略はとても興味深い。

今の日本では、「ドクターX」に代表されるように、自立したたくましい女性のドラマがヒットしているが、そのブームが一回りすると、また「シンデラレラ」的な物語が受ける時代がやってくるかもしれない。

Pick 4:ビッグデータが予測する、アベンジャーズ新作の大ヒット

Anousha SakouiChristopher Palmeri 、“Disney’s New ‘Avengers’ Film Could Smash Record, Forecaster Says” Bloomberg Business(2015年3月10日)

ディズニーの攻勢は、「シンデレラ」で終わるわけではない。5月1日公開予定(日本は7月)の「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」もスマッシュヒットが予測されている。

なぜ公開前に、ヒットを予測できるのか。その秘密は、ネット内の口コミにある。Boxoffice.comのチーフアナリストが、フェイスブック、ツイッターなどの投稿数や投稿内容(ポジティブか否かなど)を分析したところ、本作はかつてないほどにポジティブな投稿が多かったという。口コミ分析を基に、興行収入はシンデレラを超える2.1億ドルに達すると予測されている。

12月には「スターウォーズ エピソード7」も控えるディズニー。「アナ雪」の反動をものともせず、2015年も、ディズニーは映画界の主役となりそうだ。

Pick 5:ディズニーは、スタートアップとの連携も巧み

ディズニーCEOボブ・アイガーが本気で取り組むスタートアップとの協業!ディズニー・アクセラレーターとエンターテインメントの未来~Scrum Ventures宮田氏インタビュー【後編】SENSORS

以前、Weekly Briefingでも、「テック企業としてのディズニー」を取り上げたことがあるが、ディズニーは、スタートアップとの連携もうまい。

ディズニー・アクセラレーターという、メディア・エンターテインメント分野のスタートアップイベントを13週間にわたり開催。ディズニーのおメガネにかなった企業は、最大12万ドルの出資が受けられる上、ディズニー関連企業とのコラボの可能性も開けるという。

Scrum Venturesの宮田拓弥氏によると、このイベントには、ディズニーのCEOであるボブ・アイガー自らが参加。事前に参加スタートアップのことを調べあげた上で、各企業にヒアリングしていくそうだ。そして、具体的な提携が続々と生まれていくという。

巨大企業になりながらも、スタートアップの潜在力をうまく取り込んでいくディズニー。2018年6月まで任期が延長されたボブ・アイガーCEOの下、ディズニーの“黄金時代”はまだまだ続きそうだ。

※Weekly Briefing(メディア・コンテンツ編)は、毎週火曜日に掲載する予定です。