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「ドローンの今と未来」第2回

世界で最もドローン規制が進んでいる国とは?

2015/3/17
商用利用の開発が進むドローン。大学・大企業・ベンチャーにいる日本における第一人者が、ドローンの今と未来について語った「Robo:Drone ドローンの今と未来」の模様を、全3回にわたってレポートする。
2回目となる今回は、ドローンを取り巻く規制について議論する。
第1回:ソニー・大学・ベンチャー、第一人者たちが語る「ドローンの今と未来」

法律がドローンに追いついたカナダ

牧浦:ドローンと言えば、規制の話をしないわけにはいきません。すでに量産を開始されている野波さんは、規制についてどうお考えですか?

牧浦土雅(まきうら・どが)アフリカ、主にルワンダで国際協力機関と農民とを繋げる事業に携わり、現在はタイを拠点に東南アジアで「パーソナルデータ」を活用した事業を構想中。TED『世界の12人の若者』、AERA『日本を突破する100人』に選ばれる。著書『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』。Facebookページ『ドローンの今と未来』管理人。

牧浦土雅(まきうら・どが)
アフリカ、主にルワンダで国際協力機関と農民とを繋げる事業に携わり、現在はタイを拠点に東南アジアで「パーソナルデータ」を活用した事業を構想中。TED『世界の12人の若者』、AERA『日本を突破する100人』に選ばれる。著書『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』。Facebookページ『ドローンの今と未来』管理人。

野波:最近話題のアメリカだと、非常にネガティブに捉えられていますよね。では、ルールづくりが一番進んでいるのはどこかご存じですか?

実はカナダなんですよ。2008年に35キロ以下の機体のルールづくりが完成しています。カナダって大きな国なんですけれども、ほとんどの人がアメリカとの国境付近、バンクーバーからトロント、モントリオールあたりに住んでいます。北部に住んでいる人は少ないんですが、そこに重要なパイプラインがずいぶんある。その点検のために、ドローンを使っているんですね。ドローンを使わざるを得ない状況だったわけです。既に1000社が認証され、合法的に飛んでいます。

野波健蔵(のなみ・けんぞう) 千葉大学大学院  工学研究科・工学部特別教授 1990年代半ばから、ドローンの研究開発に従事。2011年に、日本初の国産ドローンの製造に成功。2012年にはドローンに関する産学官のコンソーシアムを設立した。自らも研究室発で起業し、福島県南相馬市で量産を進めている。

野波健蔵(のなみ・けんぞう)
千葉大学大学院 工学研究科・工学部特別教授
1990年代半ばから、ドローンの研究開発に従事。2011年に、日本初の国産ドローンの製造に成功。2012年にはドローンに関する産学官のコンソーシアムを設立した。自らも研究室発で起業し、福島県南相馬市で量産を進めている。

牧浦:面白いですね。ドローンが必要だったから、法律が一緒についてきた。一方で、アメリカや日本では、ドローンの開発が先行してしまい法律が追いついていないですよね。

坂本さんは、そのあたりのルールについて、どう考えていますか?

坂本:僕は結構シンプルに考えていて、「自分がやられて嫌なことはやらない」ようにしています。自分たちの家を外からドローンで撮られたらどう思うか? そういう、すごく簡単なロジックの部分さえ守り、墜落させないようにしていくことが重要だと思います。

あとドローンって、うるさいですからね。飛ばした事ある方は分かりますよね。僕は「蜂の大群が来るような音がする」って説明しています。

坂本義親(さかもと・よしちか) 株式会社ORSO(オルソ) 代表取締役社長 大分県出身。2001年より国内、海外の数々の携帯電話関連サービスの開発に携わり、2014年7月から主にエンタメ用の映像作品の撮影、現場での性能調査目的でドローンを利用し始める。この半年で実施したフライトは1000フライトを超える。

坂本義親(さかもと・よしちか)
株式会社ORSO(オルソ) 代表取締役社長
大分県出身。2001年より国内、海外の数々の携帯電話関連サービスの開発に携わり、2014年7月から主にエンタメ用の映像作品の撮影、現場での性能調査目的でドローンを利用し始める。この半年で実施したフライトは1000フライトを超える。

日本に「ドローン特区」を

牧浦:実際の活用事例で、野波さんが作られているドローンの一番の目的は、輸送になるんでしょうか?

野波:いや、私たちのドローンはペイロード(編集部注:荷物の可搬量)が6kgあります。趣味で飛ばすということは全く考えていなくて、機体もそれなりに高価です。姿勢センサーはかなり良いものを使っているので、強風にあおられても絶対に墜落はしません。風速12mでもピタッと止まります。

産業への応用という点でいうと、例えばソーラーパネルの点検などがあります。また北海道などでは、ドローンを用いた精密農業が行われています。空撮した写真を3次元の立体図にしてスペクトル解析を施し、どの部分の生育が良いか/悪いかを分析し、生育が悪いところに肥料をやって収穫量を上げるというものです。

静岡県の茶畑の新茶収穫にも、実はドローンが使われています。朝の5時か6時くらいにフライトして、今日はどこの場所を摘むのが一番良いのかを判断します。新茶は一日遅れると値打ちが下がると言われているので、旬な時に収穫できるわけです。

それから御嶽山の噴火による行方不明者の捜索であったり、広島県・長野県の土石流といった自然災害には必ず使えます。最近で言うと、笹子トンネルの天井板が落下した事故が契機になって、5年に1度、インフラを全部点検することが法律で決まりました。橋は日本に50万あり、トンネルは2万あると言われています。人口減少時代に、誰が点検するかという問題に対し、安倍政権はドローン利用を考えています。

そういう事情もあって、ドローン特区というのをつくろうとしています。内閣府による募集も終わり、これから選考します。日本に何箇所かドローン特区というのができて、そこに行けばいつでもドローンが飛んでいる状況を見ることができると思います。

ドローンをめぐる、ソニーとベンチャーの関係

牧浦:北野さんにお聞きしたいのですが、ソニーの側から外でやっているベンチャーを応援したい、要するに、闘う「競争」よりも共に創る「共創」をしたい想いとかはあったりしますか?

北野:そういう形でやってくのが一番正しいと思います。いろんなところと提携したいですね。

牧浦:自分たちだけでは起こせないイノベーションを外注するという形でしょうか?

北野:外注というかパートナーシップですね。やっぱり、ソニーの人間ってソニー的な見方というか、得意領域を持っているわけです。だから、ソニーとは違う見方をするチームとパートナーを組むことをしていかないと、上手くいかないんじゃないでしょうか。全部自分たちでやれるということはないと思います。

北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所  代表取締役社長 人工知能の研究の一環として、1993年には「2050年までに、FIFA World Cupのチャンピオンチームに勝利する完全自律型ヒューマノイドロボットのチームを開発する」ことを目標としたRoboCupを提唱。現在、約30名のクレイジーな発想を持った研究者が集まるソニーCSLの代表取締役社長。

北野宏明(きたの・ひろあき)
ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長
人工知能の研究の一環として、1993年には「2050年までに、FIFA World Cupのチャンピオンチームに勝利する完全自律型ヒューマノイドロボットのチームを開発する」ことを目標としたRoboCupを提唱。現在、約30名のクレイジーな発想を持った研究者が集まるソニーCSLの代表取締役社長。

牧浦:大企業になると、「なんでそんな小さい市場でやるんだ」って人もいるわけじゃないですか。そういった中で、ドローンよりもロボットの方にフォーカスしがちということはありますか?

北野:ロボットとドローンの違いというのはあまりないと思います。ドローンは、空を飛んでいるロボットだと思っています。

アメリカのカーネギーメロン大学などでは、30年以上も前からどんどんロボットを飛ばしていました。それが、どんどん消費電力が小さくなり、コンピューティングパワーが出て計算が高速化し、結果的に今の小型ドローンが飛ぶようになった。

あと考えるべきは、「ドローンディフェンス」ですよね。いくら規制があったとしても、悪いことに使う人は絶対にいます。「ダメだ」と言っても制御できない。アメリカでは、そうした前提で既に研究も始まっています。

ドローンを悪用され大きな事故や事件が起きたら、「じゃあドローンやめよう」って話になってしまう。だから、そういう攻撃に対するディフェンスをすることが本当に重要です。

(構成:荒川拓、撮影:Yuki Nobuhara)

※続きは明日掲載します。