「ドローンの今と未来」第2回
世界で最もドローン規制が進んでいる国とは?
2015/3/17
商用利用の開発が進むドローン。大学・大企業・ベンチャーにいる日本における第一人者が、ドローンの今と未来について語った「Robo:Drone ドローンの今と未来」の模様を、全3回にわたってレポートする。
2回目となる今回は、ドローンを取り巻く規制について議論する。
第1回:ソニー・大学・ベンチャー、第一人者たちが語る「ドローンの今と未来」
法律がドローンに追いついたカナダ
牧浦:ドローンと言えば、規制の話をしないわけにはいきません。すでに量産を開始されている野波さんは、規制についてどうお考えですか?
野波:最近話題のアメリカだと、非常にネガティブに捉えられていますよね。では、ルールづくりが一番進んでいるのはどこかご存じですか?
実はカナダなんですよ。2008年に35キロ以下の機体のルールづくりが完成しています。カナダって大きな国なんですけれども、ほとんどの人がアメリカとの国境付近、バンクーバーからトロント、モントリオールあたりに住んでいます。北部に住んでいる人は少ないんですが、そこに重要なパイプラインがずいぶんある。その点検のために、ドローンを使っているんですね。ドローンを使わざるを得ない状況だったわけです。既に1000社が認証され、合法的に飛んでいます。
牧浦:面白いですね。ドローンが必要だったから、法律が一緒についてきた。一方で、アメリカや日本では、ドローンの開発が先行してしまい法律が追いついていないですよね。
坂本さんは、そのあたりのルールについて、どう考えていますか?
坂本:僕は結構シンプルに考えていて、「自分がやられて嫌なことはやらない」ようにしています。自分たちの家を外からドローンで撮られたらどう思うか? そういう、すごく簡単なロジックの部分さえ守り、墜落させないようにしていくことが重要だと思います。
あとドローンって、うるさいですからね。飛ばした事ある方は分かりますよね。僕は「蜂の大群が来るような音がする」って説明しています。
日本に「ドローン特区」を
牧浦:実際の活用事例で、野波さんが作られているドローンの一番の目的は、輸送になるんでしょうか?
野波:いや、私たちのドローンはペイロード(編集部注:荷物の可搬量)が6kgあります。趣味で飛ばすということは全く考えていなくて、機体もそれなりに高価です。姿勢センサーはかなり良いものを使っているので、強風にあおられても絶対に墜落はしません。風速12mでもピタッと止まります。
産業への応用という点でいうと、例えばソーラーパネルの点検などがあります。また北海道などでは、ドローンを用いた精密農業が行われています。空撮した写真を3次元の立体図にしてスペクトル解析を施し、どの部分の生育が良いか/悪いかを分析し、生育が悪いところに肥料をやって収穫量を上げるというものです。
静岡県の茶畑の新茶収穫にも、実はドローンが使われています。朝の5時か6時くらいにフライトして、今日はどこの場所を摘むのが一番良いのかを判断します。新茶は一日遅れると値打ちが下がると言われているので、旬な時に収穫できるわけです。
それから御嶽山の噴火による行方不明者の捜索であったり、広島県・長野県の土石流といった自然災害には必ず使えます。最近で言うと、笹子トンネルの天井板が落下した事故が契機になって、5年に1度、インフラを全部点検することが法律で決まりました。橋は日本に50万あり、トンネルは2万あると言われています。人口減少時代に、誰が点検するかという問題に対し、安倍政権はドローン利用を考えています。
そういう事情もあって、ドローン特区というのをつくろうとしています。内閣府による募集も終わり、これから選考します。日本に何箇所かドローン特区というのができて、そこに行けばいつでもドローンが飛んでいる状況を見ることができると思います。
ドローンをめぐる、ソニーとベンチャーの関係
牧浦:北野さんにお聞きしたいのですが、ソニーの側から外でやっているベンチャーを応援したい、要するに、闘う「競争」よりも共に創る「共創」をしたい想いとかはあったりしますか?
北野:そういう形でやってくのが一番正しいと思います。いろんなところと提携したいですね。
牧浦:自分たちだけでは起こせないイノベーションを外注するという形でしょうか?
北野:外注というかパートナーシップですね。やっぱり、ソニーの人間ってソニー的な見方というか、得意領域を持っているわけです。だから、ソニーとは違う見方をするチームとパートナーを組むことをしていかないと、上手くいかないんじゃないでしょうか。全部自分たちでやれるということはないと思います。
牧浦:大企業になると、「なんでそんな小さい市場でやるんだ」って人もいるわけじゃないですか。そういった中で、ドローンよりもロボットの方にフォーカスしがちということはありますか?
北野:ロボットとドローンの違いというのはあまりないと思います。ドローンは、空を飛んでいるロボットだと思っています。
アメリカのカーネギーメロン大学などでは、30年以上も前からどんどんロボットを飛ばしていました。それが、どんどん消費電力が小さくなり、コンピューティングパワーが出て計算が高速化し、結果的に今の小型ドローンが飛ぶようになった。
あと考えるべきは、「ドローンディフェンス」ですよね。いくら規制があったとしても、悪いことに使う人は絶対にいます。「ダメだ」と言っても制御できない。アメリカでは、そうした前提で既に研究も始まっています。
ドローンを悪用され大きな事故や事件が起きたら、「じゃあドローンやめよう」って話になってしまう。だから、そういう攻撃に対するディフェンスをすることが本当に重要です。
(構成:荒川拓、撮影:Yuki Nobuhara)
※続きは明日掲載します。