正しく体を揺らすと健康になる

正しく体を揺らすと健康になる・連載第3回

マッサージを受ける側にも上手い・下手がある

2015/3/12
前回、「なぜ肩が凝っても、もんではいけないのか?」というテーマを取り上げたところ、コメント欄に大きな反響を頂いた。ただし、本連載は西本直が書きためた6万文字の原稿を、編集部が分けて掲載しているため、著者の真意が伝わり切らない部分がある。そこで今回は特別編として、前回を補足する内容を緊急寄稿してもらった。操体法を極めた西本が考える「マッサージ」とは。
第1回:自分の寝姿を見たことがありますか?
第2回:なぜ肩が凝っても、もんではいけないのか?

体と心への癒し効果

前回の記事で、肩が凝ったときにもんではいけないという、ある意味センセーショナルな内容のことを書きました。

コメント欄にてさまざまなご意見を頂きましたが、少し補足させていただきたいと思います。

現在日本で、人の体を触ることを国家資格として許されているのは、医師を別とすると、「鍼灸(しんきゅう)師」「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」の3種類があり、それぞれ開業権を持っています。

お気付きの方もいるかもしれませんが、法律上は治療という言葉を使えませんので、私たちが行う行為は一般的には「施術」と呼ばれています。

「治療する」「治す」という言葉を使えませんし、もしかしたらそういう施設に通う皆さんも、「治る」ということまでは期待されていないかもしれません。

肩が凝った、腰が痛い、少しでも楽になればありがたい、そんな気持ちではないでしょうか。

仕事とはいえ、一定の時間、誰かが自分のために一生懸命行ってくれる行為は、体だけではなく、心も癒してくれることでしょう。

ご自分の体をよく分かってくれる施術者に身を任す時間は、それこそ至福の時かもしれません。

ただし、現実には、体の中で前回説明したような生体反応が起こっていることも事実です。

そのときは痛みや違和感が消えたと思っても、翌日にはまた元の体に戻っているという方が多いのではないでしょうか。もし治ったのなら、毎週マッサージに通う必要はありません。

マッサージで心と体を癒すことはできても、根本的な問題解決にはなりません。直すべきは普段の姿勢や体の使い方であり、すなわち体のからくりを知ることが、肩凝りの改善と予防につながるというわけです。

刺激をゆったりと受け入れられるか

ここで聞きなれない言葉かもしれませんが、施術を受ける側にも「プロ」が存在します。

マッサージを受ける側にも、上手い・下手があるということです。

もちろんお互いの信頼関係が前提となりますが、施術者が加える刺激に対して、体を硬くして我慢したり、力んでしまうことなく、指先から加えられる刺激を、ゆったりと筋肉の奥深くまで受け入れることができる――まさに「受け手のプロ」と呼びたくなるような人がいます。

言い換えれば、体を硬くしたままの状態でもまれると、筋肉が反射的に内側から押し返す力も強くなり、もっともみ返しがひどくなるということです。

ある意味、刺激をゆったりと受け入れることも、相手の力に合わせて上手く揺れてあげるということなのです。

そのためにも人任せではなく、自分の体の仕組みをよく理解したうえで、信頼できる施術者に出会い、さらにもまれ方が上手くなれば、体も心もしっかり癒すことができると思います。

ただし、くどいようですが「癒す」ことと、肩凝りなどが「治癒する」こととは意味が違う、ということを知っていただきたいと思います。

※本連載は反響が大きいため、掲載頻度を増やし、今後は毎週月曜日と木曜日に掲載する予定です。