【超図解】クリスパー特許紛争と、続々誕生!国産ツール
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ゲノム編集技術クリスパー・キャス9の特許紛争の経緯と現状をわかりやすく学びつつ、国産技術とそのメリットや可能性について整理したスライド記事です。編集を担当しました。
新しい技術を産業応用する際に必ず関わってくる特許の問題。画期的なゲノム編集技術クリスパー・キャス9も例外ではなく、長引く特許紛争が影を落としています。一方、国内外でさまざまな後続技術が生まれていて、権利関係が整理された国産ゲノム編集技術を使う方が、特許のライセンス料を低く抑えられる可能性が出てきました。約10年に登場し、その後爆発的に研究現場で利用されるようになったCRISPR/Cas9。
5年ほど前に取材したときはまだ実証段階だった高GABAトマトや肉厚マダイが、販売されて食卓にのぼるまでになり、なんだか隔世の感があります。
当時はガイドラインが定まっていなかったのと、新しい技術への不安の声も大きく、本当に市場に出回るようになるのだろうか?と疑念を持っていましたが、為せば成るものですね。
一方で、医療については思ったほど進んでいないな、という印象です。どうやってオフターゲットをなくしていくかといった課題や、特許紛争が長引いていることが原因としてあるのだろうと思っています。
CRISPR/Cas9が特許紛争でくすぶっているなか、国産のゲノム編集が次々に生まれていました。
個人的に気になっているのはセツロテックのST8。セロテックはもともと、目的の遺伝子をCRISPR/Cas9で改変したマウスやラットといった実験動物を作って研究機関や企業に販売していました。
2019年から農業・畜産の育種事業を始め、そこで活用するために新しく開発したゲノム編集技術がST8です。自ら新しいハサミを開発しつつ、そのハサミを使い分けている。
現在はまだCRISPR/Cas9が世界を席巻していますが、用途に合わせたハサミの使い分けが進んでくのではないかと予想します。
そしてもうそろそろ、第4世代の技術が生まれてもおかしくないのでは、妄想しています。カリフォルニア大学 vs ブロード研究所のクリスパーキャス9特許紛争について、実用化研究を行っている立場から感じたことを書きます。
・アカデミアが有効な特許を出すことの難しさ
アカデミアの研究者にとっては、先進的研究を自分が一番先に学会や論文というハレの舞台で発表することが最大の動機ですので、特許への配慮が十分でない(あるいは全く無い)場合があります。特許や実用化までの工程を十分に配慮せずに発表してしまい自らが技術の新規性を喪失させてしまったり、種々の用途を想定した実験例(実施例という)を詳細に取っていくような科学の進歩から90°ずれる労力を割けないという本質的課題があります。
・モラル
ダウドナ氏の嘆きが良くわかります。学会の場では秘密情報が飛び交います。そこでアカデミアの研究者から聞いたヒントをアカデミアの研究者がこっそりと特許出願するのなら学会が成り立ちませんので、そこにはモラルがあるという前提です。研究者どうしが議論する場合に、その都度秘密保持契約を締結しますか?とは、以前お世話になった国際弁護士の言。
・特許の重なり
カリフォルニア大学のダウドナ氏いわく「ブロード研究所が申請しているのは緑色のテニスボールに関する特許ですが、我々が申請しているのは全てのテニスボールに関する特許なのです」。
しかし、米国特許商標庁の見解は、ブロード研究所は上記のコンセプトに独自の発明を加えて、既存のテニスボールよりも超弾むテニスボールを発明したので別特許ですよねということなのでしょう。独自の発明がいつ?どの程度?かが争点です。
残念ながらカリフォルニア大学の知財戦術ミスです。しかし、ダウドナ氏がノーベル賞を受賞したことが本質を物語っています。