3カ月後ろ倒しで内定時期はかえって早まる?
リクルーター復活、トンガリ採用…2016年卒「就活」5つのトレンド
2015/3/4
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。水曜日は、ワークスタイルに関わるニュースをコメントとともに紹介します。
Pick 1:3月1日、就活解禁。3カ月後ろ倒しの影響は?
“就職活動、3月1日スタート=今年から日程繰り下げ” 時事通信社(2015年2月27日)
2016年卒の就職活動が始まった。今年から経団連が企業説明会の開催を3カ月遅らせたため、3月1日から解禁となった。選考は4カ月遅い8月1日からに変更される。
就活時期が後ろ倒しになったことで、企業の人事が合同説明会を開く“キャパ”が減り、特定の大学での「学内説明会」に注力する傾向が見られる。
Pick 2:83.8%の学生が応募。インターン参加は就活の常識に
もっとも、各企業のインターンシップはすでに行われているし、リクルーターと接触する学生も多く、3月の就活解禁を「何をいまさら」と感じる就活生も多い。後述するが、すでに、内定をもらっている学生もいる。
わけても、インターンシップはここ数年ですっかり普及した感がある。ディスコの調査によると、2016年卒業予定の全国の大学3年生(理系は大学院修士課程1年生含む)を対象に、2月時点の就職意識に関する調査を行ったところ(有効回答数:1504 人)、インターンシップに応募した学生は83.8%、参加した学生は73.7%にものぼる。
ファーストリテイリングやワークスアプリケーションズは大学一、二年次からインターンシップを受け入れ、めぼしい学生には内定を出す。
加えて、ここ1〜2年は採用に直結する「採用直結インターン」が盛ん。例えば、博報堂のサマーインターンは有名だ。選び抜いた学生を軽井沢の宿泊施設に数日間こもらせ、課題を与え、チームごとに競わせる。
経団連は採用の倫理憲章において原則、採用とインターンシップを結びつけることを禁じているが、ユニクロ、クックパッドなどはインターンシップでこれはと思った学生に声掛けすると明言している。
また、 大学側が、学生に海外インターンシップ参加を促す傾向も高まっている。東京大学は学部生の3〜5割が海外での留学やインターンを経験する目標を設定、大阪大学は国際機関などでの大学院生のインターン費用を助成する。
早稲田大学国際教養学部 は中国、韓国などでの研修機会を提供、慶應義塾大学は一部の学部で海外インターンを単位認定。同志社大学「グローバル地域文化学部」では、アジアや欧米でのインターンを導入している。
理系学生に限っては、「GitHub(ギットハブ)」採用という技術職専門の採用もサイバーエージェント、クックパッド、DeNAなどIT企業を中心に広がりつつある。
学生はエントリーの段階で、ソフトウエア開発支援ツール「GitHub」のアカウントを提出。人事が厳しめの要件を提示して選考を行う。私がこうした採用を行う企業の人事に取材したところ、「この採用に応募する人は、大学在学中にアプリ開発ベンチャーの立ち上げ、人気アプリを作った実績があるなどの“猛者”そろい。『新卒』とは言い難いプロが採れる」と語るほど、同採用の効果に手応えを感じているようだ。
Pick 3:リクルーター完全復活で、就活勝者の高学歴化に拍車
“売り手市場なのに復活する「学歴フィルター」” 日本経済新聞(2015年2月26日)
優秀な人材は、就職ナビサイト経由では採れない―こうした認識が企業人事の間で広がってきたせいか、最近、 各社では1980年代、1990年代に盛んだったリクルーター制(同じ学校を卒業した 先輩が、優秀な後輩を探し出し、勧誘する制度)を復活させつつある。
トヨタ自動車はもとより、三菱商事や伊藤忠商事などの商社、三井住友銀行などの銀行、 日本生命や第一生命などの生保会社でも、「選抜組はリクルーターが迎えに行くのが常識」(銀行人事)だと言う。
だが、リクルーターによる採用枠を増やすことは、過去に採用実績のある大学の学生から内定枠が埋まっていくことと同義だ。なおかつ、昨今の就活の風潮としては、合同説明会を減らし、指定校で会社説明会を行う動きが盛んだ。こうした傾向から、学生人気の高い大手企業の内定者の高学歴化はますます進むと推察される。
Pick 4:進むか? 「トンガリ採用」
“2016年卒は売り手市場? 「トンガリ学生」探しに企業は躍起” 日経ビジネスオンライン(2014年10月30日)
高スペックな学生の取り合いが熾烈化する中、各社が得意分野が明確な「トンガリ人材」を求める動きも目立ち始めた。もっとも、「トンガリ採用」は今に始まったわけではない。
「エッジのたった面白人材の採用は、30年以上前から、あの財務省(当時は大蔵省) でも銀行でもやっていた」(メガバンク人事担当幹部)
「といっても、次官候補のような役目は最初から期待されておらず、 きれいな言葉で言うなら組織の活性化のための〝スパイス剤〟、悪く言うなら、将来の幹部候補に『アイツみたいな変人に負けてたまるか』とやる気を出させるための“嚙ませ犬”みたいなもの。あるいは、同期や同僚を楽しませるための“ガス抜き要員”としての採用でした」(同)
ところが、最近のトンガリ採用はその系譜を踏襲するものではないという。
「今までは、真面目、悪く言えば融通が利かないいわゆる銀行員タイプを進んで採用してきましたが、それだけでは、グローバル時代を戦うことは出来ないし、イノベーションを起こすことは出来ない。当行は今本気で、会社に変革をもたらす人材を求めている」(同)
電機メーカーの人事担当者も、同じ理由から、“一芸枠”や“面白人間枠”を用意していると明かす。とはいえ、前述メガバンク人事担当者もこの電機メーカーの人事担当者も、彼ら彼女らを使いこなせる社風、土壌の整備には課題が残るという。
「もう何年も前から、『学生起業家でした』とか、『将来の夢は起業することです』とか面接で堂々と言うような人を、年に一人か二人は採用してきた。でも、定着率がめっぽう低い。だいたい3年以内に辞めてしまうのです。彼ら彼女らは、『なんでこの会議で、発言しない人がいるんですか?』とか、『プロセスではなく成果を見てください』なんて直言を言いがちで、現場の上司とハレーションを起こすケースが多いんですよね」(電機メーカー人事)
自社色に染めやすい同質的な人材ばかりではなく、多様な人材を採用するのはもちろんいいことだ。というのも、情報とは、システムとシステムの間の落差、ノイズのあるところからしか生まれない、とは情報工学の基本だ。組織にノイズを与える人間は、情報生産性をもたらす。
一方で、ノイジーな人間は扱いづらくもある。だからといって育成を放棄してしまうのは、マネジメントの怠慢と言わざるを得ない。彼ら彼女らをうまく使いこなす、「猛獣使い」のようなマネジメントの育成こそ注力すべき課題だろう。
Pick 5:高スペック学生は既に内定獲得済
“解禁前の内定、増加も=16年新卒採用—リクルート調査” ウォール・ストリート・ジャーナル(2015年2月16日)
リクルートキャリア(東京)が16日公表した「就職白書2015」によると、2016年卒業予定者に、経団連が選考開始時期と定めた8月よりも前に内々定や内定を出し始めると答えた企業が52.2%に上った。
また、前記ディスコ調査によると、2月時点で「内定を得ている」学生が 2.2%いる。外資やベンチャーを中心に経団連ルールに縛られず内定を出す企業が増えているため、大手もこれら企業に優秀な学生を奪われぬよう、水面下で早めに内々定を出すなどの現象が進展しているようだ。
青田買いの弊害は大きい。当然のことながら早くに内定を得た学生は、勉強の手を抜きがちになり、入社前の1年間がほぼ無駄になるとの説も根強い。
内定時期を早期化することで、留学中の学生が不利となり、結果として人材の多様性がなくなるとの指摘もある。通年採用など、一括採用以外の選択肢を、もっと広げるべきではないか。
※Weekly Briefing(ワークスタイル編)は毎週水曜日に掲載する予定です。