正しく体を揺らすと健康になる

正しく体を揺らすと健康になる・連載第1回

自分の寝姿を見たことがありますか?

2015/3/2
トレーナーの西本直はアスリートのトレーニングやリハビリを通して、人体のからくりを追求し続けている。操体法を元にしたその考えは「西本理論」と呼ばれるようになった。もちろん体にプロもアマチュアもなく、一般の人にも大いに役立つものだ。実際、西本は一般の人への施術も行なっている。『アスリート解体新書』の特別シリーズとして、日常生活に役立つ健康法を提供する。

不自然な寝姿

みなさん、こんにちは。トレーナーの西本直です。

性懲りもなく、今度は違うテーマの連載を持たせてもらえることになりました。それは誰にでも当てはまる、健康的に日常生活を送るために必要な体のカラクリについてです。

突然ですが、皆さんご自分の寝ている姿を見たことがありますか? 鏡でも使わない限り、見ることはできませんよね。

自分以外の寝姿なら? もちろん見ることができますが、これからご紹介するような視点で誰かの寝姿を見たことは、ほとんどの人がないのではないでしょうか。

寝ている人は仰向けに横たわっているのですから、体のどこにも力を入れる必要はありません。寝床は体を休める場所で、歯を食いしばって力む必要はありませんから。

厳密に言えば、普段私が施術している方たちの寝姿は、自宅のベッドではありませんから、完全にリラックスしているとは言えないかもしれません。

それでも、できるだけ楽な姿勢を取っていただき、それこそ少しの間、「本当に寝てしまってもいいですよ」と声をかけて横になっていただきます。

ところが私の目に映るほとんどの方の姿は、どうしてこんなに体を固くする必要があるのだろう、もっとゆったりリラックスすればいいのに、と思うくらい不自然に見えます。

西本流チェックポイント

詳しくは今後の連載で触れるとして、ここでは1つだけチェックポイントを紹介しようと思います。

仰向けに寝た人の足を、横から見てください。膝と床の間に隙間がなければ、まったく問題ありません。ですが、ほんとんどの方は、膝と床の間に隙間があるのではないでしょうか。

これは何を意味するかというと、「体が歪んでいる」ということです。ひどい人になると、ふくらはぎの下にまで手が入るほどの隙間が生まれている場合もあります。ここまでくると「ぎっくり腰の予備軍」です。
 01_床と膝と隙間

本人は自覚症状がない

もちろんご本人は自覚症状がなく、私から指摘されるいくつかのチェックポイントに、「え、ほんとですか」と驚かれるのです。

横になっている時くらい体も心もリラックスさせればいいのに、それを許さないほど、普段の生活の中で体に力が入っているのでしょう。無駄に筋力を使い、体を固くしてしまうことで骨格を歪め、ひいてはそれが原因となってさまざまな不定愁訴を引き起こしているのが現実だと思います。

腰が痛い、肩が凝ると、わが身を嘆く言葉は次々と出てきますが、ではどうしてそういう状態になってしまったのか。またそれに対処するにはどうすればよいのか。真剣に考えてみたことがあるでしょうか。

ほとんどの方は他人任せで、あそこにいいところがあるとか、こういう健康法を見つけたといっては、一時しのぎに走ります。

そろそろ体の本質に目を向け、自分の体は自分で守ることが必要ではないでしょうか。

体のからくりを知れば生活が変わる

万人に合う健康法などないと思いますが、小手先の方法論ではなく、体の本来の仕組みや働きに目を向けることで、新しい視点を持って対応ができるようになると思います。

体と心は一体のものです。一生付き合っていかなければならない大切な相棒です。この連載によって体に対する意識を変えていただき、いつまでも元気で生活していける体の使い方を身につけていただきたいと思います。

人間はもともと健康に生きていけるからくりが、しっかり体の中に仕組まれています。

本連載ではそのからくりについてもできるだけ分かりやすく説明し、さらには日常だけでなくスポーツにも応用できるノウハウを随所に散りばめていきたいと思います。

体は皆さんが思っている以上に柔らかな存在です。現実に体重のほぼ60%は水分で構成されています。

皮膚という皮袋に包まれた中にある、骨や筋肉や血管や神経のすべてが、ゆらゆらと浮かび漂っているのです。

30兆個と言われる細胞の一つひとつが、それぞれの場所で居心地がいいと感じられることが、本当の意味でゆったりとリラックスし、それぞれの機能を十分に発揮してくれる最良の状態ではないでしょうか。

心も体もゆったりと、細胞の一つひとつがにっこり笑っていられるような、そんな体を目指しましょう。

その一つのキーワードが体を揺らすこと、揺れる余裕のある体であることです。

体というよりも細胞を揺らすと言った方が正しいのかもしれません。

難しく考える必要はありません。精神的なストレスも肉体的なストレスも、柳に風と受け流し、のんびりゆらゆら本来の体を取り戻すコツをお伝えしていきたいと思います。

※本連載は毎週月曜日に掲載する予定です。