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Chapter1:変わる消費者

正社員と非正社員、格差の拡大が止まらない理由

2015/3/2
これからのグローバル化社会で戦っていける「強いリーダー」を生み出していくためには何が必要なのか? そのために何をするべきかを長年伝えてきたのが元マッキンゼー日本支社長、アジア太平洋地区会長、現ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏だ。
本連載は大前研一氏総監修により、大前氏主宰経営セミナーを書籍化した第二弾である『 大前研一ビジネスジャーナル No.2 「ユーザーは何を求めるか」』(初版:2014年11月28日)の内容を一部抜粋、NewsPicks向けに再編集してお届けする。今回も前回に引き続き「消費者の構造変化」について分析する。
大前研一特別インタビュー(上):日本でイノベーションが生まれない理由は何か?(2/19)
大前研一特別インタビュー(下):イオニストは“低欲望社会”の被害者(2/23)
本編第1回:中流以下が8割超。「消費者」は過去10年で激変した(2/26)

賃金カーブの格差も顕著/非正規社員のフラットパターン

図-4の「賃金カーブ」を見てみましょう。左側のグラフを見てください。1980年時点では、初任給に対して50歳から54歳あたりで約4倍になるというパターンでした。ところが、2012年になると、3倍まで下がっています。会社によっては、40歳くらいで給与のピークを迎えてそのあとは下げていく、といったことをやっています。または一旦退職させて、再雇用の際、契約社員等に切り替えます。
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右側のグラフは正社員(職員)と非正社員の賃金カーブの違いですが、非正社員の場合には、30~34歳あたりから給料がほとんど増えていないことが分かります。ほぼフラットです。

米国などでは、ブルーカラーと言われている人たちは職能で給料が決まるので、長く働いても給料は上がりません。しかし米国の場合、ブルーカラーは民主党や組合が守ってくれます。日本の場合、組合というのは正社員にはありますが、非正社員の組合というのは非常に少ないわけです。ですから、非正社員、非正規労働者というのが非常に弱い立場にあるのです。

非正規労働者数は過去最高の水準

最近「非正規労働者が増えた」と言われますが、図-5の左側のグラフを見て分かるように、2013年時点で非正規労働者の割合が35%に達しています。その内訳を見るとパートが約半分、アルバイトが約20%です。派遣社員などはまだ給料がいいので、自ら派遣を選んでいるという人も多いのですが、あとの人は、正規雇用を希望してもそちらに移れないわけです。
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右側の「年齢別の非正規比率」というグラフを見ると、1993年から2013年の20年間で、55歳以上の非正規率が急速に増えています。定年を延長せずに55歳くらいで退職するか否かを本人に選ばせて、退職したあとは非正規で契約するなどしている会社も増えています。

全ての年齢セグメントで非正規の比率が増えてきていますが、これは社会的にも、政治的にも大きな問題です。ところが日本の場合、彼らは自分の将来に対する期待値をマネージしてしまって、「自分の人生、しょせんこんなもんだ」「まあ俺の偏差値もこんなもんだったし」と考えている。自分で勝手に納得するという非常に不思議な国民です。よその国では、絶対に人のせいにします。日本の場合はこの国民性のために、今のところ大きな政治問題にはなっていないのです。

都市と地方の給与格差が拡大

次に都市と地方の格差についてです。図-6を見ると、都市と地方の「現金給与の格差」が拡大していることが分かります。最も高い東京と沖縄との差は16万円もあります。

また、2002年と2012年を比べると、驚くことに全国全ての都道府県で10年前のほうが現金給与は高かった。これを見ると、やはり日本というのは画一的な国だなと思います。米国なら、例えばモンタナ州は落っこちたけれども、カリフォルニア州は上がったとか、州によって随分違いが出てくるのですが、日本の場合にはおしなべて下がります。平均値で見ると、34万円が31万円に下がっています。

ただ、給与に格差があると言っても、都市部と地方では生活費に差があるので、収入が高くても生活が楽というわけではありません。
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そこで、図-7のように、「家計の黒字金額(実収入-実支出)」を都道府県別に出してみました。1位の富山、2位の福島、3位の茨城以下、左側にきている県が比較的余裕があり暮らしやすいところです。全国平均は月額にして11万円です。

よく、「日本で裕福なのは富山県や福井県。家も大きいし、敷地も広い」と言われますが、このデータでもやはり富山が断トツ1位です。逆に黒字幅が小さいのは、群馬、三重、長崎、宮崎、兵庫などです。

世帯構成の変化/“おひとりさま”世帯の増加

次に、世帯構成の変化を見てみましょう。図-8「家族類型別世帯数の推移」を見ると、世帯数自体は推計で2015年から2020年あたりをピークに、その後減少していく傾向にあります。
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その内訳を見ると、1980年から現在まで、単独すなわち“おひとりさま”世帯が急激に増加していることが分かります。もう一つは、“ひとり親と子”という、上から2つ目の部分がやはりずっと増えてきています。逆に、“夫婦と子”という世帯は今後さらに減っていくと予測されます。

テレビ番組の司会者やアナウンサーが、「ご家庭の皆さま」と言うとき、彼らの頭の中にあるのは、“親2人と子ども2人くらい”というイメージだと思います。しかし、このグラフを見ると、今後は「テレビの前の寂しいあなた」と呼び掛けないといけません。料理番組も「4人分のレシピです」なんて言っていたらダメです。みんな総菜屋に行って出来上がったものを買ってくるようになるわけですから。

従って、この世帯構成の変化というのは非常に重要なポイントです。今後、ファミリーレストラン業界も厳しくなるでしょう。ファミリーが居なくなってしまいますから。スーパーも、車で行ってトランクいっぱい1週間分の食材を買う、という人が減っていきます。私は以前から、こうした世帯構成の変化に対して、上記のような業界は非常に大きな業態変更をしなくてはいけない、と言っているのですが、どうしても業界の対応は遅れがちになります。

消費年齢層の変化

次に、図-9の「消費に占める年齢層の比率」の推移を見てみましょう。2013年時点で、なんと60歳以上が消費者の46%を占めており、もう少しで50%を超える勢いです。この年齢層が今、消費のメインセグメントです。
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従って、これからはこの年齢層の人たちに訴求できるようなものを提供していかないとダメです。昔は消費の中心は60歳未満の人々でした。私がお台場のヴィーナスフォートの設計に携わっていた頃は、20代の女性が圧倒的に消費の中心でしたが、今はもうその人たちはLower-Middle Classか、Lower Classになってしまい、イタリア旅行に行って買い物をしまくる、などという人はもうほとんど居なくなってしまいました。

今は60歳以上、特に70歳以上の人を狙って何をするかということが、企業にとって非常に重要になってきています。(次回に続く)

【ビジネス・ブレークスルー運営 向研会セミナー(2014.4開催)を基にgood.book編集部にて編集】

※本連載は毎週月曜日と木曜日に掲載予定です。

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