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NYファッションウィークのスポンサーに

毎年2月と9月に、高級ファッションブランドが新作を発表する「ニューヨーク・ファッションウィーク」。今年も2月半ばに2015~16年秋冬コレクションが発表されたが、これに先立つ2月5日、アメリカ・ファッションデザイナー協会(CFDA)が注目の発表をした。来る7月に、ニューヨークとしては初めてメンズウエアのファッションウィークを開催するというのだ。

すでにカルバン・クラインやマイケル・コース、ラグ&ボーンなどのブランドが参加を噂されている。だが意外なのは、そのスポンサーにAmazon Fashion(アマゾン・ファッション)、East Dane(イーストデーン)、MyHabit(マイハビット)と、アマゾン傘下のファッションサイトが3つも名前を連ねていることだ。

近年のアマゾンの高級ファッション分野への進出は目覚しいものがある。高級ブランドの服、靴、ハンドバッグ、ファッション小物を取り扱うのはもちろん、バーニーズ・ニューヨークのファッションディレクターをアドバイザーに迎えて、大規模なイベントのスポンサーに名乗り出てきた。

2012年にはメトロポリタン美術館衣装研究所のガラパーティーや、ファッション工科大学(FIT)やパーソンズ・ザ・ニュースクール・フォー・デザインなど著名ファッション学校のイベントスポンサーを務めた。2月半ばには「インド・ファッションウィーク」の冠スポンサーとなることも発表した。さらにアマゾンは、ブルックリンに巨大写真スタジオもオープンさせた(ロンドンにもっと大きなスタジオを作る予定だ)。

シャネルではなくザックポーゼンやセオリー

アマゾンの高級ファッション分野進出の中核となってきたのが、アマゾン・ファッション、すなわちアマゾンのサイトでファッション関連のカテゴリーを束ねるセクションだ。アマゾン・ファッションでは、シャネルやプラダなど天文学的な価格が付く超高級ブランドではなく、もっと手ごろな価格のコンテンポラリーブランドを扱っている。

例えば女性向けには、ザックポーゼンのショルダーバッグが500ドル、バッジェリー・ミシュカのパンプスが200ドルで購入できる。男性向けには、ヒューゴ・ボスのオックスフォードシャツが300ドル、セオリーのオーバーコートが700ドルといった具合だ。

アマゾン・ファッションは2013年にテレビCMを流し始めて以来、「しゃれたブランド品を買える場所」として認知度拡大に努めてきた。今年2月には、米ヴォーグ誌のオンライン版エディターをアマゾン・ファッションのエディターに迎え入れた。

アマゾンの傘下に入ったShopbop(ショップボップ)やZappos(ザッポス)などのショッピングサイトも、高級志向を強めている。ショップボップはThakoon(タクーン)やWes Gordon(ウェス・ゴードン)といったデザイナーズブランドを扱っており、ヴォーグ誌に広告を出し始めた。

ザッポスのハイエンド版Zappos Couture(ザッポス・クチュール)は、2013年に元ヴォーグ誌編集主幹のアンドレ・レオン・タリーをアーティスティックディレクターに迎えて、レッドヴァレンチノやヴィヴィアン・ウエストウッド・ゴールドレーベルといったブランドの取り扱いを開始。タリーとの契約は昨年で切れたが、ハイエンド志向は続いている。

だが、業界関係筋は、アマゾンで高級ファションアイテムを売るのはむずかしいのでないかと言う。アマゾンは、ありとあらゆるモノを簡単かつ効率的に購入する方法を提供することで成功してきた。

これに対してファッションは非効率的なことが多く、予想外のトレンドや個人の好みに左右される。アマゾンは巨大な自動販売機だが、高級ファッションは商品の細かな部分まで目を配る必要がある。

実はさほど売れない高級ブランド品

アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは2012年、ラグジュアリー商品に進出するのは単純に経済的な理由によるものだと、ニューヨーク・タイムズ紙に説明している。

安価な商品と比べて「ファッションアイテムは単価がずっと高い」というのだ。『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(2013年)(邦訳・日経BP社)の著者ブラッド・ストーンによると、ベゾスはしばしば「2000億ドル企業になるには、服と食品を売る方法を学ばなければいけない」と言っていたという。

だが、そのために高級ブランド品を取り扱うのは賢い方法ではないのではないかと、一部の専門家は言う。

「ラグジュアリーブランドを取り扱いたいのはどこも同じだ。アマゾンでうまくいったら、多くのショッピングサイトが追随するだろう」と、市場調査会社フォレスター・リサーチのスチャリタ・ムルプルは言う。だが問題は、「アパレルの世界で、ラグジュアリーブランドの売上げはさほど大きくない」ことだ。

例えば、高級デパートチェーンのサックス・フィフス・アベニューとニーマン・マーカスの2013年の売上高は、両方合わせても100億ドルに達しなかった。

「アマゾンは売上高2000億ドルという目標があるからこそ、衣料品と雑貨にこだわってきた。この2つの領域には規模がある」と、ムルプルは言う。「この目標を達成するのに、ハイエンドな顧客に取り入る必要はない」。

つまりラグジュアリーブランドの商品売込みに力を入れるより、もっとベーシックな衣料品のほうが大きな売込みを見込める可能性が高い。アマゾンは2013年、3500万人のアクティブユーザーが衣料品を購入しており、衣料品はアマゾンで最も急成長しているカテゴリーであることを明らかにした。

オンラインショッピング調査会社のスライス・インテリジェンスによると、アマゾンで最も売上高が大きいカテゴリーは家電で、次にホーム&キッチン、ヘルス&ビューティーが続き、第4位にファッション、第5位が書籍が入っている。

しかし一口にファッションと言っても、一般のアパレル商品とラグジュアリーブランドは大きく異なる。世界の100のトップブランドのうち、アマゾンで公式に販売しているブランドは16しかない。

アマゾンはそれを変えようとしているが、それにはヴォーグ誌のエディターを雇い、有名ファッションショーのスポンサーになるだけでは不十分だ。

「要するに、アマゾンはニーマン・マーカスじゃない」とムルプルは言う。「消費者はそれに気付いている」。

(執筆:Kim Bhasin記者、Lauren Sherman記者、写真:bloomberg、翻訳:藤原朝子)
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