米地銀株に売り、パックウエスト一時42%安-次の破綻に疑心暗鬼
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個別リスクか、システムリスクか? 米国連邦財務省と市場の意見が正反対
3月10日のシリコンバレー銀行についで、シグネチャー銀行、そしてファースト・リパブリック銀行が相次いで破綻している中、米国連邦財務省は一貫して”米国の銀行システムは健全で弾力的な状態を維持している”と主張しています。
ファースト・リパブリック銀行破綻の2週間前、4月21日に行われた金融安定化監視委員会の記事録でも念仏のように”米国の銀行システムは健全で弾力的な状態を維持している”と発表しています。
米国連邦財務省の姿勢とは裏腹に、市場は流動性確保が難しい地銀に対する売りが続いています。
株価が下落し、資金調達方法が絶たれて破綻したケースは、シリコンバレー銀行が該当します。
また、JPモーガンチェイスなどの大規模金融機関から預金提供を受けたにも関わらず破綻したファースト・リパブリック銀行を鑑み、規模の小さい地銀の破綻が連鎖的におこる事態をなんとしても避けなければならないのではないでしょうか。
しかし米国連邦財務省から聞こえてくるのは念仏のような”米国の銀行システムは健全で弾力的な状態を維持している”の声。
これは昨今、インフレ懸念が叫ばれる中、インフレは一過性であると主張し続けていた米国連邦財務省の姿勢と同じなのではないでしょうか。
米国連邦財務省と市場の意見が正反対に割れています。
注目のコメント
またカリフォルニアの銀行。
下記が直近の決算で、預金がQoQで33.9Bn USD→28.2Bn USDと減少。その大部分を占めるのが、Venture Bankingでの-4.7Bn USDの減少。BTFPやFHLBで10Bn USDくらい調達しているが、預金流出が続くと厳しい。
貸出は不動産系が多く、金利はずっと全米の地銀より高めだった。
https://bit.ly/3AMdbfZ
12月末の10Kだとローンの詳細が出ている(P70)。
28.6Bn USDのうち1年以内が5.4Bn USD、1-5年が9.7Bn USD、5-15年が3.8Bn USD、15年以上が9.7Bn USD。
https://bit.ly/3Nz5z83
ざーっとみた所感として、
・SVBと同様のベンチャー金融はあるが、それほど傾注はしていない
・ローンはFRCほど長期傾注しておらず、相対的に健全
・ただカリフォルニアという立地含め、ベンチャー向けの預金が多く、SVBの余波で流出
・また、カリフォルニアの景気が悪くなると、不動産系ローンも食らいやすい
という印象。
規模的にはFRCの1/5程度で、救済買収シナリオになれば、プレイヤーは相対的に増えそう。一方で、このレベルでFRCと同様の条件を出し始めると、そういうのが付かない限り買わないといったモラルハザードにもなりかねない。
金融危機を振り返っても、当然ながら破綻はリスクが高いところから始まる。そしてよりリスクが広がるから、次を探すようになっていく。一方で、どこかで救済ではなく生き残るという例が出てこないと、「市場に殺される」パターンが続いたり、パッケージがついていないと買収しないといった形になり、最終的には市場に殺されるかモラルハザードになる。ファーストリパブリックバンクに続いてパックウェストに信用不安。このドミノ倒しが、大西洋を越えて欧州に飛び火すると、事態はより深刻になる懸念があります。また、このような金融機関の信用不安は欧米固有の現象では無いので、新興国に波及するとさらに厄介です。
「緩和的な金融政策を背景に膨らんだ預金を、不動産や債券に投資、デュレーションのミスマッチがコントロールできる範囲を超えていた」という構図が同じなので、なかなか連鎖は止まらないでしょう。
金融システムを守るため、国が出動することはやむを得ないですし、逆に逡巡して小出しにすれば、傷は深くなります。
モラルハザードが懸念されますが、そこは経営者に責任を負ってもらうしかないでしょう。