(ブルームバーグ): 米銀ファースト・リパブリック・バンクは500億-1000億ドル(約6兆7000億-13兆4000億円)相当の資産売却を模索している。米地銀業界を中心に広がった先月の混乱からの脱却を目指す。

事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、売却対象には長期の住宅ローン債権や長期証券などが含まれ、同行の資産と負債のミスマッチ改善を図る。こうしたミスマッチは同行が先月に預金取り付け騒ぎに見舞われ、苦境に陥った一因。

関係者の1人によれば、大手米銀を含む潜在的買い手は、市場価格を上回る額で資産を購入するインセンティブとして、ワラントか優先株を受け取る可能性がある。

ファースト・リパブリックが24日に発表した1-3月(第1四半期)決算で、予想を上回る預金流出が示されたことなどを受け、同行が抱える問題の全容について投資家の間にも理解が広がりつつある。

以前の成功の主要な要素であった超富裕層向けの資産運用事業が行き詰まりつつある恐れがあるほか、今や資産の多くを売却しなければならない可能性がある点だ。同行株価は25日の取引で一時50%余り下落した。

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ファースト・リパブリックは連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれるのを回避するため、バランスシートを強化して増資に道筋を付けることを目指していると、関係者の1人は語った。

その場合、ファースト・リパブリックが経営立て直しを進めるのに当たって安定を確保するため、米政府が大手銀行の一部との交渉を促す必要も想定されるものの、同行破綻の事態よりもずっとコストが抑えられるという。

ファースト・リパブリックの広報担当者はコメントを控えた。

24日の発表資料によると、3月31日時点の同行総資産は推計2330億ドル相当で、これにはローン債権1730億ドルや投資証券350億ドルが含まれる。

資産売却に加え、ファースト・リパブリックは24日の段階で、流通市場で売却可能な融資に重点を置く方針を明らかにしていた。これは一定期間にわたり元本返済なしで利払いだけとするジャンボモーゲージを提供し、富裕層の借り手を引き付けてきた過去の戦略からの急激な転換となる。

こうした従来のサービスは同行が資産運用事業を拡大するのを後押ししてきたが、多数のアドバイザーがモルガン・スタンレーやUBSグループ、ロイヤル・バンク・ オブ・カナダ(RBC)など競合大手行に移籍し、困難に見舞われている。全米の富裕層顧客を取り込んできたかつての花形事業の将来を巡り、アナリストの間に懸念が生じている。

一方、超低金利環境でファースト・リパブリックが提供した一戸建て住宅ローン債権を売却すれば、資産と負債のミスマッチ改善に寄与する反面、このような債権はその後の金利上昇で価値が下がっている。

これは、資産の買い手に額面近くの値段で購入してもらわない限り、同行は売却に当たって損失計上を余儀なくされることを意味し、買い手側がワラントなど何らかのインセンティブを要求する可能性もある。

原題:First Republic Mulls $100 Billion Asset Sale in Turnaround Plan(抜粋)

(ファースト・リパブリックの戦略転換の背景を追加して更新します)

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