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富裕層向けということですが、購入者がポートフォリオを認識してそのごく一部としてハイリスク・ハイリターン商品として組み入れていたのか。そうした説明を販売した三菱モルガン・スタンレーなどはしていたのか。
そして、スイスでのAT1債は株式より早く毀損するという特殊なケースで、販売業者は正しく商品説明をしていたのか、ですね。
プロダクト組成部門でそうなので、セールス部門で理解していたはずはなく、まして顧客が正確に理解していたことはありえないでしょう。
また、そのトリガーにヒットする蓋然性が高いとは想定されていないから、この条項自体の差異でリターンに差が生じていたとも考えられない。つまり、ほぼ誰も知らないか、知っていても気にされていなかった。誰が悪いというものでもない。
相対的に高いリターンには、高いリスクがあるだけです。この複雑な商品を買えるのは、相応の資産ある人だけで、ポートフォリオの一部でしかなく、損をして気持ちのいいものではないでしょうが、まぁそういう時もあるよねという程度で消化されていくのが市場というものです。
かつて優先株とか人気で、法人取引が活況だったときもあったなぁと。
まあ買わせろといわれて在庫から売るのはリスク説明のちにやればいいと思うんです。販促活動を高リスク商品においてどうあるべきかですよね。
投資は自己責任だと思うけど、販売責任として、背負うものはあるわけです。
本件の収束がどうなるのかはわからないけど、
失った信用って戻ってくるにはそう簡単じゃなくて、結構な時間がかかる。
個人的には、当時はその厳しさが十分に理解できなかったけど、今でこそ、厳しい環境で働けてよかったなとつくづく思います。
積極的な営業活動は、アグレッシブなくらいの優秀なバックオフィスがいるから達成するんであって、これって実は事業会社もそうだと思うんですよね。
思いっきり事業でリスクとるためには、相応のバックオフィスがいるってこと。
スタートアップでCFOとして身を置く中で、これまでフロントで数字かせいできたからこそ、フロントに思いっきりリスク取らせてあげたくて、コントローラーとしてバックオフィスを構築する中で、より見えてくるものがあります。
経営危機に伴って無価値となったクレディ・スイス・グループの永久劣後債(AT1債)約950億円分を顧客に販売していたことが分かった。
↓
文字通りだとしたら、無価値のものを売ったならば、詐欺でしょう。
それならば、『丁寧に説明する』とか呑気なこという訳ないので、多分無価値になる前に売ったのでしょうね。
となると、リスク説明が適切だったかどうかが焦点かと。
https://twitter.com/chigyogoitsu/status/1647112711002783745
〈追記終〉
複雑な商品は、売る方も買う方も、本来的にはリスク判断が複雑になる。
売り手としては、商品や相手の状況を理解せずに売っていたのであれば、信用を失う=顧客を失うという自己責任。買い手としては、エギゾチックな商品で一定の説明も金商法の元で当然されているはずで、その説明に対してどういう知見レベルでリスク判断をしたかという自己責任。
なお、富裕層向けの商売が儲かるのは、こういった知見ギャップも含めて「適切な推奨」がされて時間効率含めて良いという期待の元であると思う。あとは色々な商品の選択肢を提供することも付加価値。
だから商品ラインアップにあったことは否定するものではない。ただ、どのAT1債をそのなかで勧めるか、それの売却も必要に応じて勧めるかという部分も付加価値。それを果たせなかったという点では、最終的に買い手の自己責任を免れるものではないが、売り手も上記の信用を失い顧客を失う(なぜなら付加価値を提供するどころか棄損していたから)という自己責任になる。
スイスのAT1債の特殊性は、自分は知らなかった。また広くメディアで事前に報じられていたほどの一般性はないと思う。
ただ、東大服部先生が2022年10月にnoteを書かれていて、またAT1はG-SIBs中心に金額市場が大きい(約35兆円)ので、商品担当者レベルでは知られていたのではないかという知見レベルなのではないかと思う(根拠はないが…)。
また、下記はCSの救済直後の北米債券運用業界団体の声明。特にプロの運用者においてはその通りだと思う。
『関係者は、この種の債券は情勢悪化時に償却されて価値がなくなる旨が常に明記されており、それを知らずに買ったのだとすれば己の不明を恥じるしかなく、知っていて買ったならそういう事態になったということだと説明した。』
北米の債券運用業界団体、AT1無価値化で提訴せず=関係者
https://newspicks.com/news/8258491