自分らしく生きるための住まいを実現する「リノベーション」の本質的価値とは

2023/4/19
コロナ禍の影響で、住まいや暮らしに対する関心は高まり、自分に最適な住まいを実現する手法として以前にも増して注目を集めているのが、「リノベーション」という選択肢だ。
多くの人がすでに建てられた住宅を買うか、借りるかにとどまっている中、自分らしく住まいをアップデートするイノベーションの魅力とは何か
5500戸超のリノベーション実績を持つリノべる株式会社などを招いたLIFULL HOME’S とNewsPicks Creationsが立ち上げた新プロジェクト「住まい選びをアップデートせよ」の関連イベントのセッションで紐解いていく。
Speaker
・リノべる株式会社 コンセプトデザイン本部 首都圏ソリューション部部長 小野寺七海氏
・LIFULL HOME’S総研 島原万丈氏
・コミュニティメンバー すすむさん

Moderator
LIFULL HOME’S 新田周平氏

暮らしに合わせて、住まいの機能と価値を刷新

──リノベーションと聞くと、オシャレな家を作るイメージを持たれがちだと思いますが、小野寺さんはリノベーションとは何だと定義されていますか。
小野寺 リノベーションは、住まいの機能と価値を刷新するものです。
 家をスケルトン状態まで解体して、排水管や電気配線などのインフラ部分も含めて全て刷新できるので、新築注文住宅をイメージされるとわかりやすいと思います。
 リノベーションのメリットは、部屋に家具や暮らしを合わせるのではなく、たとえばベッドのサイズに合わせて壁の位置を決めたり、毎日のルーティーンに合わせて導線を作ったりできること。暮らし方に合わせて間取りを作り替えられるのがリノベーションだと捉えてください。
──島原さんは、リノベーションの良さは何だと思いますか。
島原 リノベーションは、中古住宅を再生して新たな価値を作り出し、新しい暮らしを実現する手法だと思います。中古住宅を「買う」「改修する」という2つの段階があるのですが、まず中古住宅を選ぶ一つ目のメリットは、価格が安いこと。
 昨今、首都圏では新築マンションの価格が高騰していて、平均価格は7000万円に近づいています。23区内においては、7000万円では買えない状況ですよね。しかも、日本の住宅は新築で購入後、25年くらいは価格が下がり続ける傾向にあります。
 でも逆に言えば、築25年を超えた物件なら首都圏でも3000万円台で購入できるし、郊外なら新築価格の半額以下で購入できる可能性があるということです。
 すると、新築では選べなかった立地を選べるようになるし、より広い物件も手に入れやすくなる。つまり、価格の安さから選択肢の幅が広がるのが一つ目のメリットだと考えています。
 二つ目のメリットは、現物をしっかりと見た上で買えることです。築年数が経って劣化した部分があっても、それを維持メンテナンスするための良好なコミュニティがあるのか、その住居からどんな風景が観られるのか、隣近所にどんな人が住んでいるかがわかります。
 一方で新築の場合は、今契約しても引き渡しは2〜3年後ですし、住み始めて20年後30年後に良好なコミュニティが存在するのかも、維持管理できるかどうかもわかりません。いわば、賭けと言えるでしょう。
 三つ目のメリットは、内装を全部取っ払うことで、万人受けする住まいではなく、自分や家族のための空間を作れることです。
 たとえば、部屋を壁で仕切らずに、腰より低い高さの腰壁だけで開放的な空間を作ったり、床材を変えることで空間を仕切ったりすることも可能です。
 お風呂の時間を大切にしたいなら、大きなお風呂を入れられますし、料理が好きなら快適なキッチンも導入できます。暮らしに合わせた設備を入れて、空間を自由に作れることがリノベーションの良さだと思っています。

休日や暮らしの理想を叶えるリノベーション事例

──島原さんのお話を聞くだけでも、中古マンションのリノベーションはメリットが多いことがわかります。実際、リノべるではどのような実例があるのでしょうか。
小野寺 2つご紹介させてください。1つ目は、住むエリアにこだわった結果、希望よりも10平米狭くなったものの、リノベーションで広いリビングを作ったご夫婦の事例です。
 このご夫婦は「物件が高騰しているから、都内に近接した川崎エリアで60平米くらいのマンションを購入したい」と相談に来られました。
 でもお話を伺ううちに、休日は二人で街歩きをして、三軒茶屋や下北沢の居酒屋に行くのが好きなことがわかったんですね。そこで、お二人の希望を叶えるために予算を整理して、川崎ではなく三軒茶屋にある50平米の物件を購入するに至りました。
 希望より10平米狭く、間取りもよくある古い物件でしたが、リノベーションで寝室と書斎をコンパクトにして、キッチンから部屋を見渡せるような広いリビングを作った結果、ご夫婦の理想の住まいが誕生しました。
 二つ目の事例は、80平米の物件を購入されたご家族です。
 このご家族は、ファミリー層がたくさん住んでいるエリアで、将来料理教室を開きたいという夢を叶えるために、リビングが広い新百合ヶ丘のマンションを購入されました。
 特徴は、キッチンからリビングが見渡せる広い空間を作っただけでなく、リビングの一角を腰壁で仕切って“家族のアトリエ”と呼ばれるワークスペースを作ったこと。
 お子さんも、このワークスペースにお友達を呼んで遊ぶなど、家族みんなの「したい」気持ちを受け止めてくれる場所をリノベーションで手に入れられました。

「家=自分」。家磨きは自分磨き

──リノベーションで自分や家族にとって理想の暮らしが実現すると、人生における幸福度が高まるのではないかと感じました。
小野寺 その通りで、中古マンションのリノベーションをした方と新築マンションを購入した方に、家に対する「感情」を聞くアンケートを実施したんですね。
 すると、中古マンションのリノベーションをされた方は、「ストレス」「不安」「憂鬱」といったネガティブな感情が極端に少ないという結果を得られました。やはり、リノベーションは幸福度を高める選択肢の一つだと思います。
島原 ウェルビーイングの一つの要素でしょうね。もしかすると、ピカピカの新築ではなく、経年劣化した築30年や40年の物件を購入する人は、そもそもポジティブな人が多いのかもしれません。
 悪いところは直せばいいと考えれば、立地の良さや眺めの良さ、高い天井など、物件の良いところだけを見て選べますから。
──すすむさんは今回のプロジェクトにコミュニティメンバーとして、さまざまなご意見を発信していただいてきましたが、リノベーションの価値をどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。
すすむさん 私は残念ながら、新築マンションを購入してしまいましたのでリノベーションはうらやましい限りです(苦笑)。
 私がコミュニティで言っていたのが、住まいに使うお金って、購入時だけでなく修繕費など住んでからもお金もかかりますよね。
 新築の場合、その多くは何か壊れたものを直したり、定期的な部品交換だったり、マイナスをゼロにする投資が多いんですよね。でも、リノベーションは、最初にある程度は整えると思いますけれど、住んでからより快適にするためにお金を使いますよね。いわば、プラスの投資。そこがリノベーションのとても良い魅力だと話していました。
 万人受けする“標準仕様”のマンションではなくて、自分がいいと思うように住まいを“育てて”いけたら、その住まいや暮らしに価値を感じてくれる人はきっといると思います。
──たしかにそうですね。間取りも自分たちで自由に変えられるから、叶えたい暮らし方や趣味などに一番都合の良い物件を選べばいいということですね。そうして物件を選んだら、どんな思考や発想を持ってリノベーションをすると良いでしょうか。
島原 デンマークと日本の暮らし方を比較するために、デンマークの方たちに「あなたにとって家とはなんですか」とインタビューをしたことがあるんですね。
 すると、デンマークの人たちは「家とは私たちそのものだ」と即答でした。家イコール自分だとしたら、理想の住まいや暮らしを作っていくのは、なりたい自分に近づくのと同義。
 自分らしさが現れる空間を磨き、より快適にしていくことがデンマークの暮らし方だったので、ぜひ日本人にもそういう発想が広まるといいなと思います。
 それから、新築マンションでも自分らしい家具を選ぶ、アートを飾る、植物を育てる、照明やキャンドルにこだわることで、住空間はいくらでも豊かにできます。それが、自分の生き方や暮らしも豊かにしていく。
 中古の方がリノベーションをしやすいのは間違いないですが、家イコール自分と考えて豊かな暮らしを実現させてほしいです。
リノべるは、本記事で紹介したコンシューマ(生活者)向けの事業、中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」だけでなく、法人が所有する不動産の有効活用をワンストップでサポートする法人向けビジネスも展開しています。

最近では、リノベーションの環境価値の見える化に取り組み、CO2削減量や廃棄物削減量の可視化し、リノベーションが環境に与える影響を検証、発表したり(詳細はこちら)、住まいの環境性能を高める断熱リノベーションセミナー等をスタートさせています。

今あるストックを活用する「リノベーション」を通して、中古住宅の価値を再生、流通を促進し、循環型社会実現、脱炭素社会実現を目指しています。