【ルポ】麹づくりの現場から、日本の強みが見えてきた
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こぼれ話なのですが、早川しょうゆみそでは、みその職人や「麹室」に入る人は、朝食に納豆を食べるのは厳禁だそう。万能の麹菌なのですが、納豆菌はそれを上回る“パワー”だそうで、その部屋内の麹菌が死んでしまうからだそうです。
1年ほど前に私も早川しょうゆみそに取材に行きまして、薫専務からそんな話を聞くとともに、若手社員への技術承継の難しさについて話されていました。
違う媒体ですが、こちらも参考までに・・・。
https://smbiz.asahi.com/article/14621609
注目のコメント
近年アメリカを中心に、発酵テクノロジーを用いたスタートアップに、投資がぞくぞく集まっています。みそ、しょうゆ、日本酒など、発酵技術は日本が古来から磨いてきた分野です。日本ならではの強みがどこにあるのか知りたくて、宮崎まで行ってきました。
発酵については、こちらの特集や動画でも取り上げているので、もしよければぜひご覧ください!
https://newspicks.com/book/3609
https://youtu.be/e5OVEyJEuDA
https://newspicks.com/news/8289397前職が公的試験研究機関でしたので、その視点でコメントいたします。
単に職人が感じている現象をデータ化することと、職人感覚をデータから理解・説明することの間には大きな壁があります。単純なバイオリアクターとは事情が異なります。とは言え、発酵食品における職人感覚のデータ化は、人手不足や生産規模の拡大に対応するために実現しなければならない挑戦的な課題です。
バイオリアクターの場合、少々粗く言えばoutputが“特定化合物の生産量”のみです。菌株も遺伝子組み換えされて性質が安定している場合が多く、撹拌等の均一系で培養できるので、リアクターの条件すなわちinputとの相関性を解析してoutputを最適化できます。
一方、味噌等の発酵食品の場合、固体で発酵が進むうえに、発酵の良し悪しを知る職人パラメーターが香り(化学)、見かけ(物理(光))、触感(物理(力学))と3つもあります。
香りセンサー、画像処理ソフト、力学試験機等が市販されているので、職人が体感している現象を数値化することはそれほど難しくありません。難しいのは、それぞれのデータの中で何が仕上がりを決めているのかを解明することです。
例えば、香りの物質は無数にあるうえに複合的に嗅覚へ訴えかけるものなので、香り物質のチャートを見せられても職人感覚を説明することはできません。
そんな感じで、発酵食品における職人感覚の数値化は研究要素が非常に強い技術分野です。麹はコーヒーの分野でも2021年から話題です。Christopher Feran氏とコロンビアのEl Vergel農園による「Koji Supernatural」という新しい精製方法(コーヒーの発酵プロセス)は日本の樋口松之助商店の種麹を使っています。
https://christopherferan.com/2021/10/23/coffee-koji-and-kaapos-wbc-routine/
去年豆を入手して実際に飲んでみると、ちょっと通常のコーヒーでは出現しないフレーバープロファイル、自分の場合は「豚汁」のような明確な旨味を感じました。独特の甘さもあり、これらはJava品種由来ではありません。
コーヒーは従来のシンプルな分類(WashedとNatural)から、嫌気性発酵(Anaerobic)、Carbonic Maceration、Mossto、ビール酵母、ワイン酵母、などなど様々な発酵プロセスを活用して、コーヒーの美味しさを示す「スコア」の改善を試みています。
一方で近年は「infused coffee」と呼ばれるコーヒー由来ではない果物の果汁や果肉、ハーブ、スパイスなど発酵プロセスに使うコーヒーも出てきており、情報の透明性の課題が発生しつつあります。その点でFeran氏はKoji Supernaturalの発酵プロセスを詳細にブログで公開するという手段を取ったようです。