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【第3回】ビッグクラブのすべて

世界一を目指すソフトバンクホークスの球団経営、メジャーとの差

2015/2/15
ビッグクラブのすべてでは、最新のスポーツビジネスの姿を描くべく、サッカー、野球など、あらゆるスポーツのビッグクラブのビジネスをインフォグラフィックで解説。あわせて、スポーツビジネスを知り尽くしたデロイトトーマツのコンサルタントたちが、クラブ、リーグ、スタジアムという視点から分析を行う。今回は、インフォグラフィックによる解説編です。

2014年10月末、福岡ソフトバンクホークスが日本シリーズを制して日本一に輝くと、すぐさま球団社長の孫正義は「更なる挑戦」と銘打って日本シリーズ連覇を目標に掲げた。プロ野球界における絶対的な盟主になるつもりだ。

ホークスの夢は日本国内に留まらない。04年の球界参入時から孫オーナーは「世界一の球団を目指す」と公言している。では、世界トップレベルとの差はどこにあるのだろうか? メジャーリーグ30球団と9つの項目で比較してみよう。

福岡ソフトバンクホークス vs. メジャーリーグ

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50年代から60年代初頭の黄金期が終わり、長らく低迷していたホークスにとって転機になったのは88年のダイエーによる球団買収だ。中内功社長オーナーが資金を投じて球団強化に乗り出すと、95年から王貞治監督・根本陸夫GM体制で後にチームの主軸となる城島健司、井口資仁、松中信彦らをドラフトで獲得。その強化が実り、99年には35年振りの日本シリーズ制覇を成し遂げた。

ホークスの勢いはそれに留まらず、ソフトバンクによる球団買収後も2度日本シリーズを制した。最近15年間で4度日本一に輝いており、これは13年間で4度の巨人にも引けを取らない。近年の競技面での実績において、ホークスは巨人と並び日本最高レベルにあると言っていい。

ダイエーによる球団買収後、成長を遂げたのは競技面だけではない。93年にはダイエーが掲げた球団・球場の一体経営を象徴する福岡ドームが完成。観客動員数は大幅に増加し、昨年は05年の実数発表以降では最多の観客動員数を記録した。巨人、阪神という人気球団には及ばないものの、その観客動員数は日本3番手であり、一試合平均観客動員数ではMLB30球団との比較においてもトップ10入りする。

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2013年には270億円の年間売上を記録。これは巨人を上回る日本最高の売上であり、MLBとの比較においてもトップ10にランクインする世界でも上位の数字である。さらに年間営業利益58億円はMLBのトップ3に入る規模だ。経営面において、ホークスは世界トップレベルに食い込める可能性が十分にある。

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ここまでは健闘してきたホークスだが、メジャーはそう甘くない。観客動員数や年間売上・営業利益ではMLBにも劣らないホークスだが、資金力でMLBと互角に渡り合っているというイメージを持っている人は決して多くないはずだ。その1つの要因が年俸の格差だろう。夢を求めて海を渡る選手が絶えないのは競技レベルの高さだけが要因ではない。MLBトップレベルの球団の年俸は文字通り「ケタ」が違う。NYヤンキースで3番目に稼いでいる田中将大投手1人の年俸で何とホークスの年俸総額のうち76%をカバーできてしまう。

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下は抑え目でも上には大判振る舞いをするメジャー球団との高額年俸選手との差は明らか。ホークス最高額の摂津正、松坂大輔(4億円)と、メジャー最高額となる年俸32億円を稼ぎ出すクレイトン・カーショウ(ドジャース)やジョン・レスター(カブス)とは8倍の差があるのだ。

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球団のSNS戦略でも苦戦を強いられている。Facebookでは圧倒的な差で後塵を拝し、TwitterにおいてもMLBとの比較においては下位に過ぎない。日本は1.2億人という人口に対し球団は12、アメリカは3億人の人口に対し球団は30という母数の多さを考慮しても大きな差があると言わざるを得ない。

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ホークスは日本特有のハンデを乗り越えられるか?

ただし、今後ホークスはこれらの差を埋められるかもしれない。

日本の球団にとって支出面でネックの1つになっているのは、球団の運営費や高額の球場使用料。アメリカでは球場の建設・運営を自治体が援助することがほとんどであり、MLB球団はタダ当然で球場を利用できる(たとえばミルウォーキー・ブリュワーズが払う賃貸料は年間1ドル)。自治体からの優遇という点で、日本の球団はMLBに比べて大きなハンデを負っている。

ソフトバンクは、このハンデを縮める努力を続けている。

ソフトバンクホークスはダイエーからの買収後、年間48億円という高額の球場使用料に苦しんでいたが、12年に親会社のソフトバンクが870億円で福岡ドームを買収。球場使用料は20億円程度にまで抑えられることになった。

つまりMLBのトップ10に入る売上を今までよりも無駄にせず、選手の人件費に使えるようになるということだ。

さらに球場を買収したことで自由な改築が可能となり、世界最大級の映像表示装置「ホークスビジョン」を5面に拡大したり、新シートを導入するなど改修を次々と敢行。今シーズン開幕前には「もっとお客さんが喜び、盛り上がるドームにしよう」という孫オーナーの意向でホームランが出やすいよう外野フェンスを改修した(“ラッキーゾーン”の設置)。

「世界一」を目指す戦いは、これからも続いていく。

(ライター:山口裕平/インフォグラフィック編集:櫻田潤)

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