「SaaSは“オワコン”」は本当か、投資家と振り返る2022年の国内SaaS投資トレンド
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この3年間SaaS企業・ビジネスを見てきて、そろそろSaaSという「ワード」が使われなくなってくると感じています。
ITが勃興したころには「IT企業」といったカテゴリーに着目されましたが、今ではその区分けに意味はなくなりました。
それと同じことがSaaSでも言えて、いわば、「BtoB IT」のような総称に近く、サブスクリプションモデルだけでなく、従量課金やトランザクション課金、もしくは、FintechやAIなどとの融合を遂げながら、様々な分野に浸透するフェーズになってきたのだと思います。
先日、本記事のレポートを基にしたセミナーを行ったのですが、その中で登壇者のグロービスキャピタルパートナーズ仮屋薗さんが「これまでSaaSにおいてはキャピタリストが"投資しやすい"分野に重点的に資金が振り向けられていたが、製造業やレガシー産業など日本のGDP比に占める業界に対して投資できていなかった」と言われた点が非常に印象に残っています。
今、まさにバーティカルSaaSと呼ばれる産業向けSaaSは勃興期であり、この領域はスタートアップにとっても大きな機会であるとともに、日本の生産性を向上させる上でも非常重要な分野だと感じています。
注目のコメント
僕らWACULもAIアナリストの1本足打法から、会社そしてAIアナリスト事業を伸ばすために何が出来るかを考えた結果、シリーズCで調達した資金をつかってAIアナリストSEOそしてAIアナリストADとマルチプロダクト化しました。その後、無事に黒字化・上場にこぎつけましたので、良い選択でしたね。
SaaSだからどうとかではなく、ちゃんとその時に(WHY NOW)、顧客が買う理由があるもの(WHY THIS)、そして顧客に自社が提供すべき理由(WHY YOU)があるプロダクトのラインナップを増やすことは、まわりまわって先にあるプロダクトの強化にもつながるため、トータルでの効果は複利みたいなものです。SaaSは冬の時代と言われますが、転換期だと考えています。
文中の岩澤氏の言葉を掘り下げると、今まで主流だった"単品商材で自社営業のみが販売するSaaSのGoToMarket戦略モデル"が変わりつつあります。
・単品商材→複数プロダクトの仕込み(コンパウンドスタートアップ化)
複数プロダクトを展開して、マーケセールスの効率化と他社との区別化を図る。
・自社販売→セールスの手法にこだわらない
SaaSだと長年悪手と言われた代理店販売について、商品にマッチすれば活用する
SaaS投資会社のスターであるBessemer Venture Partnersも、今後もエンタープライズによるSaaS購買力はまだあるとしつつ、市況が”お金をかけて成長せよ”から”利益ある成長”に転換していると最近のブログでも発信しています。
今月末からようやくスタートアップの上場が増え始めています。今年終わりにかけて市場がどう反応していくか、要チェックです。冬の時代、すなわち未上場スタートアップの調達や上場以降のバリエーションがシビアになったのはそうだと思いますが、どちらかというとPSR評価でバリエーションが過剰に高くなっていたところが適正化されてきた、だと思います。期待値先行ではなくしっかり収益が生まれるエコノミクスが成立しているかが重要視されになったという意味で、オワコンになったのではなく成熟してきたという表現が適切ではないでしょうか。
マルチプロダクト化によって顧客単価をあげることはもともと収益性を高めるためには重要であり、提案可能なソリューションを広げるために自社開発だけでなくM&Aが活発になってきたことは歓迎すべき状況だと思います。
他方、記事中に記載のあるパートナー戦略が成功し突き抜けて拡大できている企業はまだまだ少ないと感じます。AI InsideやSafieの例を見るにパートナー経由での販売でもチャーンレートを抑えることができるのか、その辺りをうまくハンドルできるかが今後のSaaS戦略の重要なポイントになりそうです。