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世界のビジネス、テクノロジーの進歩には、裏側に思想や文化のコンテキストが潜んでいる。その深淵を、毎週一つのキーワードとともに、NewsPicks NY支局長が探っていく。
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昨年末、NYの国連本部から来日したSDGsの担当チームが日本のSDGs教育を「模範的」だと称えていました。
それもそうでしょう。教育現場や小売店、企業重役のスーツの胸元に至るまであのマークがこんなに目につく国はありません。
知人の子は学校で覚えた17の目標をそらんじていて、驚きました。
ただ、どうもこの国では標語が踊ってる印象が否めません。
ジェフリー・サックス氏も関わるSDGsの取り組みを指標化したランキングで、日本は19位と健闘しています。
https://dashboards.sdgindex.org/rankings
先進国最低レベルのジェンダー格差もある中で、どうなの?という評価はさておき、面白いのは各国政府の取り組みを指標化した図。
ここで日本は最高レベルに位置しています。要するに官製主導の側面がより強いのですよね。
右に倣えでやるからしんどさも出るし、本質から離れたおかしな「SDGs」も広がる。
同じテーマでゆるいコラムを書いているので、ご関心の向きは↓
https://mainichi.jp/articles/20230308/k00/00m/040/298000c
こういうブームは現れては消えますが、「マイ箸」の風習がすたれたのは、割り箸には国産の間伐材が使われているので、「マイ箸」を使っても切り倒される木の数が減るわけではない、という事実が周知された以上に、別のブームが来たからでしょう。
こういうビジネスは、次から次へと新しいとブームを仕掛けて、消費を喚起する必要があります。
その昔、マルチメディアとかユビキタスといったブームが仕掛けられたように、今はメタバースで、エコ、ロハス、脱炭素、メタン、といったふうにこれからも新たなブームが仕掛けられ、それで食べていく人たちというのはなくならないでしょう。
こういうブームを仕掛けるには、必要な要件があり、それは、「私でもできる」(ように見える)ということです。
20世紀から個人の時代になったからです。
気候変動など、マイ箸やエコバッグでどうにかできるわけはなく、中国の人口を半分にするとか、アマゾン川流域には人類が立ち入らないように多国籍軍で実力阻止するとか、もっと効果的な施策があります。
しかし、そんな実効力のあることは「私にもできる」ことではないので、商売のネタになりません。
1970年くらいまでは、大学くらい出て共産主義運動やその類に参加すれば、革命を起こして世界史の主役になれる、とそこそこ信じられていました。
しかし、大卒の中間層くらいでは革命運動でも下っ端だし、そもそも革命など起こらない、ということが知れ渡るにつれ、そういう先進国中間層は、「エコ」の幻想にすがるようになりました。
地球を救うために私も主役になれる、という幻想です。
こういうブーム商売のもう1つの要件は、現実には影響を与えない、ということです。
マイ箸やエコバッグは、地球の環境には影響はありませんが、短期的なビジネスとしては十分収益をあげています。
実際に影響を与えてはダメなのです。人類が10分の1になれば地球環境は回復するとか、原油の使用を全てやめさせようとか、そんな実効性のあることを本当に望む人はほとんどいません。
あくまでビジネスだけですから、いいことした夢気分を提供できれば、それでいいのです。
ただ、実際に日本では「気候変動」とか「SDGs」と言われると、しんどいな、と思っている人は少なくないのでしょうか?
ただ、これは、やはり大企業や政府系のトップダウンで、SDGsという言葉が広がった歪みだと思うのです。そして、何か押し付けられた我慢や犠牲だと捉えてしまう。
なので日本の脱炭素周りは何かワクワクはしません。
で、今回紹介した「Abundance」の動きは、その真逆といえるかと。
今後EVも植物工場も、淡水化もなんだって全部電気が必要になってくる。だったら全部クリーンエネルギーで、バカほど作りまくったらいいじゃないかと。
さらには、そもそもエネルギーを消費しないから、イノベーションが止まってるんだと。そして、金も人も集まってくる。
もちろん、このビジョンも、鉱物の問題や原発の位置づけとか、問題も数え切れないほどあるんだけども(実際に個人的にエネルギーの効率化が必要ないとは全く思いません)、ビッグピクチャーを描くのは本当にうまいなと関心します。
みなさんはどう思いますか?ご意見などお聞かせいただければ幸いです!
例えば
https://www.economist.com/weeklyedition/2022-07-23
政府が法規制を敷くと効果や影響があるのは間違いないですが、環境問題で公衆衛生的に問題がある、人命に関わるのが明らか、といった分野の対策は過去に終わっています。
今の課題は「彼方立てれば此方が立たぬ」といった微妙な課題であったり、この対策を行えば効果が本当にあるのかエビデンスが揃っていないというようなものが多いので、政府の検討には時間がかかっています。そしてこの検討を待っていられるほどの猶予はないと思います。
政府が動くのは待っていられず、個人で動くには効果が小さすぎる。こういった時にやはり鍵となるのは、先進的な事業者、トップランナー事業者、グローバル事業者が自主的に、且つスピーディに行う対策・施策だと思います。
褒めてやらねば、人は動かじ。なのではないか。ブームでもいいから、とにかく一度は意識させる。そして見本を見せて「みんなエライねぇ」と褒めることで、少しでもその気にさせる。そんな思惑もあるのかも知れない。
で、そこに代理店が絡んで大きなビジネスのネタに仕立て上げる。行政と代理店にとっては、カッコウのネタだ。そしてまた、この国の企業や国民は、それにイトも簡単にに乗っかる。もちろんしばらくすると「SDGsって、何だったっけ?」ということで、すっかり忘れ去られる。
地に足ついた活動でない限り、いつまで経っても繰り返される。やらないよりやった方がいい、という声もあるかも知れないが、あまりにも費用対効果が低すぎる。そろそろ国民も気づくべきだ。耳触りだけいいものは、しょせん効果を発揮しない。汗をかいて身を削ってこそ、初めて効果を手にできるのだから。
SDGsはESGと言えばいいのに、コロナはcovid19と言えばいいのに。誰か得する人がいる、と考える方が陰謀論っぽくて好きですが。
これが日本で温暖化懐疑論やSDGsを斜に構える向きが増えてしまう一つの要因になっているように思われます。
もちろんやらないよりはやったほうが効果があるのは事実で、それ以上に精神論的な心構えを重視する日本ではそうした取り組みが是とされてきたのも事実ですが、2030年代半ばには二酸化炭素排出量を従来の半分とし、2050年にはカーボンニュートラルを達成するという絶望的とすらいえる目標の前には、焼け石に水でしかないのが実際のところかと思います。
個人の省エネの心構えが全く必要ないとは言いませんが、高い目標を掲げた以上、これを達成するには心構えどころの話ではなく、このために必要な社会変革を何でも試行錯誤してやってみる、という姿勢になることが重要で、試行錯誤して元に戻ることが嫌いな日本人にはマッチしにくいのですが、社会変革をやる側もフォローする側もこうした状況を理解し、精神論で終わらない根本的な手を打つ必要があることを理解しなければならないと考えます。
環境への関心が高いZ世代にとっても、明日からできる脱炭素行動を推奨しているが個人だけでなく法人をいかに巻き込めるか。
僕らは2050年に向けて国としてももっと向き合わなければならない。