佐山インタビュー

西久保前社長から聞いた「最後の言葉」

スカイマーク支援の佐山氏。「私は高値で売り抜けない」

2015/2/13
1月28日に民事再生法適用を東京地裁に申請し、破綻した国内航空3位のスカイマーク。再生に向け厳しい見通しも伝えられる中、同社とスポンサー契約を結んだ投資ファンド、インテグラル(東京・千代田区)の佐山展生代表が10日、NewsPicksの取材に応じ、破綻前夜の息詰まる展開と決断に至った心境、西久保慎一前社長から託された「最後の言葉」などを初めて明らかにした。スカイマークの生死の鍵を握る佐山氏がインタビューで語った「知られざる真相」を2回に分けてお伝えする。

西久保前社長は「会社と社員をよろしく」と言った

――スカイマークへの投資決定をめぐっては、「火中の栗を拾うようなもの」「リスクが大きすぎる」といったネガティブな反応が少なくない。

佐山:普通なら、やらないですよ。経緯から話すと、まず昨年12月初めに、こちらからお願いしてスカイマークを訪問した。直前までは日本航空とのコードシェア(共同運航)の話が進んでおり、「これは良かったな」と思っていたが、その後、全然進まなくなったため、「もし、どこかエアラインが支援するということであれば、我々は出資します」と提案した。そして、会社情報をいただき、どこかの航空会社が支援する前提での調査を実施した。

しかし、そのあと連絡が途切れ途切れになったが、1月23日金曜日午後8時ごろ、我々のメンバーから突然電話がかかってきて、「佐山さん、スカイマークが完全に行き詰まったらしいですよ」と連絡が入った。

私はすぐさまスカイマークの井手隆司会長と(当時財務担当の取締役だった)有森正和さん(スカイマーク現社長)に電話したが、万策尽きたという状況だった。私は「法的処理をするのであれば、再生できる可能性はある。急ぎ検討しましょう」と伝え、大至急2人とも午後10時ごろインテグラルにお出でいただき、打ち合せを行った。

それから我々は24日土曜日、25日日曜日、(スカイマークの本社がある)羽田に行って伝票を一枚一枚めくり、一番お金が足りなくなる時期での必要資金額である「谷底の深さ」を調べた。その結果、一定額を入れれば「いける」と判断できたので、29日木曜日のタイミングで民事再生法適用申請を行う方向で進めることを決めた。

結果的に申請は28日水曜日の夜に前倒ししたのは、日本経済新聞にも書かれていたように西久保慎一社長の心身の疲労や、裁判所が夜でも受け付けてくれるということだったので、総合的に判断されたのだと思う。

――退任した西久保氏はその後、何をしているのか。

佐山:全然知らないが、1月28日夜、退任された西久保さんから携帯に電話がかかってきて、「会社と社員をよろしく」と言われた。吹っ切れた感じだった。「分かりました」とお答えした。
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支援総額90億円で足りるのか?

――御社はスカイマークに対し90億円出すことを決めたが、「金額としては足りない」と指摘する声もある。

佐山:我々は羽田に行って寝ずに徹底的に精査し、90億円あったら余裕を持ってやれるというのを確認したから投資を決めた。民事再生法の適用申請に伴うイメージダウンでお客さんがある程度減ることも当然見込んだ上での数字だ。「90億円では足りない」ならば出せるはずがない。そもそも黒字転換しないと、いくら社会的意義があってもお金は出せない。

普通の民事再生というのは、運転資金をある程度貯めた上で申請する。だから、当面の資金に不安はなく、スポンサーも少し時間をかけて探せる。しかし、今回はすぐにお金を入れないと破産してしまう危機的状況にあった。それも1億や2億ではない。我々以外にさらなる支援をする人がいなくても回っていけると確信できないと出せない。

――今回の投資の意義をどう考えているのか。

佐山:こういう厳しい状況の中でお金を出す人はまずいない。なぜ我々が踏み切ったかというと、社会的意義があるからだ。もし、業界内で10番目ぐらいのポジションの一般のサービス業の債務超過の会社であれば、そんなリスクは取れない。しかし、スカイマークが万一なくなってしまえば、ここまでつくり上げてこられた皆さんの努力が水の泡になる。

以前、テレビ番組で「いくらもうかるのか」「リターンはどれぐらいあるのか」と聞かれたが、もうけのためだけにやっているのではない。我々がスポンサーとして手を挙げなかったら、働いている何千人もの方々が仕事を失ってしまい、第3位の航空インフラが消えてしまう。初期的な資金援助で会社が回り、かつ、仮に他からの追加支援がなくてもやっていける自信があったのでスポンサーとして名乗りを上げた。一部に、ファンドの知名度を上げるためとの報道があるが、そんなことで取れるリスクではなく心外だ。

――再生事業を多く手がけてきたが、スカイマーク破綻の大きな要因とは?

佐山:我々は評論家ではないので、「どこが悪かったか」というのはあまり関係ない。それよりも、「どうすれば立ち直るか」ということの方が大事。言われているように大型機への転換が大きな原因だったとは思うが、論評してもあまり実がない。当面はボーイング737のオペレーションをやっていくなど、工夫すれば十分回ることを確認している。

だからファンドは嫌われる

――再生プランについて、まずどの辺から手をつける?

佐山:共同スポンサーを広く募り、いろんな提案をここ1、2週間で出してもらい、今月中に方向性を出したい。あと債権者の皆さんとお話しをしながら、5月に再建計画を出したい。当面は我々だけでやっていくが、安全で欠航がない安定運航は欠かせない。料金については、今までは安さを売りにしていたが、これからは「安いけれどもハイクオリティー」を目指す。

あと、一番大事なのは、社員の皆さんが楽しく働くこと。特に、民事再生とかになったときは、社員の皆さんが落ち込むので、とにかく元気になってもらうのが一番大事。それが、我々の一番重要な役割だと思っている。2月9日月曜日の朝、スカイマーク本社に行き、100人超の皆さんに集まってもらい、そこでこう話した。

「ファンドといえば、皆さんご心配かも知れません。多くのファンドは投資をするのはいいが、売却するときに、一番高いところに売ろうとする。我々はそれを絶対にしません。なぜなら、会社をつくったオーナーが、売却額が高いからといって、従業員が一番嫌がるところに売りますか。売らないでしょう。それと同じです。皆さんが望む形でのバトンタッチをお約束したい」

多くのファンドは「投資家に最大のリターンを返すために一番高いところに売却する」と言うが、私に言わせればそれは自分のことしか考えていない屁理屈にすぎない。なぜなら、その案件だけなら投資家にとっていいかも知れないが、それ以降、「あそこのファンドは、高ければ従業員が嫌がるところに売る」とのイメージが広がり、誰もそのファンドを相手にしなくなるし、投資ファンド自体の信頼をも失う。

ファンドへの投資家は、もちろん自らの利益の最大化を望むが、投資家の中長期的なリターンの最大化にとっても、目先の投資案件からの利益の最大化を追求せず、投資先の皆さんの支持のある次の株主へのバトンタッチにより中期的な利益の最大化を図るのは当然。投資ファンドにとって一番大事なのは、投資先に上から目線で接するのではなく、投資先に溶け込むように一体となって良い会社にすることが重要だ。

売却する段階になったときも、会社に残る皆さんのご要望を第一優先に聞く。私に言わせれば当たり前のことだが、こういうファンドは多くなく、日本にファンドが根付かない理由もここにある。

※後編は明日掲載します。

(聞き手:佐藤留美、構成:乾健一)