2023/3/31

順風満帆に見えるが内心は……。NTTデータに転職したコンサルタントの本心

NewsPicks Brand Design シニアエディター
 NTTデータは2022年7月、テクノロジーを軸としたコンサルティング事業の提供やデータ活用による顧客価値の創出を目指す「テクノロジーコンサルティング事業本部(TC本部)」を新設した。
 TC本部でインフラ系企業のDX支援を担う浅野裕樹さんは、総合コンサルティングファームからの転職組だ。
 前職では、数千人規模の企業の業務変革を主導。コンサルタントとして充実したキャリアを築いていた彼は、なぜNTTデータで働く道を選んだのか。
 浅野さんが人知れず抱えていた葛藤と転職した経緯に迫る。
SIer、総合コンサルティングファームを経て、2022年NTTデータ入社。大手インフラ企業のDX化支援を担当し、DX組織の戦略検討や各種施策の全体マネジメント支援を実行。DX施策の業務定着や成果創出につながる支援も拡大している。

上司からの忘れられない一言

 経理や経営企画に興味を持ち、大学時代に簿記2級を取得。
 ビジネスの実情を理解した上で事務職に進みたいとの思いから、新卒では営業職を志望し、SIer(システムインテグレーター)のアカウント営業としてキャリアをスタートさせた。
「数字に結びつかないことなんてやっても意味がない」。当時の上司は自身の行動の意味を徹底的に問う、合理的な人だった。
 コンサルタントの職に興味を持ったのは、その人の影響もあったかもしれない、と浅野さんは振り返る。
 AI・IoT領域の営業支援に携わった際には、自社サービスが顧客の業務改善に結びつくとは限らないことを痛感。
 顧客課題の本質を見極め、解決策を提言する仕事への関心が強まっていった。

顧客とワンチームになって汗をかく

 数年後、浅野さんは総合コンサルティングファームに転身した。
 数々のプロジェクトを手がけた中で一番の大仕事は、全社的な業務のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)化。顧客は数千人の社員を抱える大企業だった。
 経営企画部への導入から始まり、経理や購買にも拡大。
 間接部門のルーチンワークのコストを減らし、企画立案や新規事業創出に取り組む時間を生み出すことを目標に、顧客と二人三脚で業務改善を遂行した。
 プロジェクトはやがて営業部門や生産工場などの直接部門にも広がり、最終的には顧客の社内でRPA推進の部署が立ち上がった。
 顧客が自分たちの手でRPAを運用できるシステムを作り上げたのである。
「このプロジェクトでは、お客さまに従来のやり方を変える必要性を納得してもらうところに力を注ぎました。一緒に業務プロセスの改善点を見つけ出し、知恵を絞りながら一緒に変えていく。お客さまと一つのチームになって、汗をかいてやっていくことの重要さを実感しました」

軸となる専門分野が欲しかった

 プロジェクトリーダーとして、30代前半で大仕事をやり遂げたことは大きな糧となった。
 新規事業開発、決算の早期化、基幹システム導入のPMO。多様な案件を経験し、コンサルタントとしての幅も広がった。
 傍から見ると順風満帆のキャリア。だが、本人は内心不安を覚えていた。
「仕事の性質上、案件ごとにテーマが変わり、その都度ゼロからスタートしなければなりません。努力でカバーしてきましたが、それが通用しなくなる日がいつか来る。だからこそ、自分の軸となるものが欲しかった。
 何ができるのかと問われたときに、『何でもできます』ではなく、『これができます』と答えられるものを持ちたかったんです」
 データ活用で自分の専門性を築きたい。顧客の業務だけでなく、ビジネスモデルそのものを変える世界観を作っていきたい。
 SIerとコンサルの両方の経験が活かせる職を探して、浅野さんは転職活動を始めた。
 コンサル領域を強化しているNTTデータとの出会いは、絶好のタイミングだった。

NTTデータを選んだ決め手は「人」

 一番の決め手は「人」だった、と浅野さんは語る。
 NTTデータの採用面接では過去の経験や志望理由を伝えるだけでなく、色々と質問もした。
 一つは関西地区での勤務の可否。働くエリアにはこだわりがあった。
 面接官は、一つひとつの質問に真摯に回答してくれた。
「単に〈選ぶ人>選ばれる人〉という関係ではなく、こちらのことも〈会社を選ぶ人〉として、対等に見てくれている。一次面接から最終面接までその姿勢は一貫していて、社員個人だけでなく、組織全体として真摯、誠実な社風を感じました」
 面接官は仕事の説明も丁寧だった。
 上流工程から分析工程、業務定着、成果創出まで一気通貫で支援していること。
 上流においても、分析テーマの構想企画やデータ分析を行う組織の立ち上げ、人材育成など様々なテーマがあること。
 やりたいことはNTTデータで実現できる、と確信した。

誰も「DX」と言わなくなる未来に向かって

「NTTグループかつ大企業ということで、入社前はある程度カタい組織を想像していました。実際そういう面は一部ありつつ、勤務場所をフレキシブルに選べたり、コミュニケーションもSlackが当たり前だったり、働き方の柔軟性は高い。
 また、システム開発の方法論やテクノロジーの知識に特化した人が多いイメージがありましたが、総合コンサルと同様に、ロジカルでビジネスの見識が豊かな人が多いことにも驚きました」
 入社直後をこう振り返る浅野さんは、TC本部に来てこの4月で1年になる。
 現在はインフラ系企業のDX支援案件で、営業組織のデータドリブン化や、コストセンターの組織貢献度の可視化などに取り組んでいる。
 目下の目標は、データ活用のコンサルタントとしてスペシャリティを磨き、顧客の売上向上を実現すること。
 単に商品を売るのではなく、自分の考えや知見を含めて売るビジネスは、コンサルとSIerの両面を備え、その間をつなぐ人や体制が揃っていてこそ追求できる。
 その環境がNTTデータには整っているという。
「DXは“構想”を描く上流工程と新たな仕組みの実装・運用を担う下流工程に分かれ、主にコンサルファームは上流を、SIerは下流を得意としています。
 TC本部は基盤エンジニアやサービスデザイナーなど様々な領域の知識豊富なスペシャリストでチームを組成し、上流から下流まで一気通貫で対応しているのが特徴です。ここまで多様な職種の人たちと協働することは、総合コンサルでもなかなか経験できません」
「データ活用領域においても、実装工程で豊富な経験を持つデータサイエンティストがたくさんいて学びが多くありますし、各工程における成功モデルのナレッジ化・テンプレート化が進んでいることにも組織としての強さを感じます」
 自身の人生において、働く醍醐味や楽しさは「共同作業」だという。
  顧客を含めて、人を巻き込みながら現状を変えていくことに、何よりもやり甲斐を感じる。小学生の頃から続けているテニスは、途中でシングルスからダブルスへと転向した。
 人と組んでお互いの力を増幅させていくことが「得意かどうかはわからないですけど、そうありたいなとは思っています」と語る。
「私たちはお客さまのビジネス課題の解決に向けて、最適なソリューションを提案しますが、それはあくまで手段であって、システムを変えるには現場で働く人の行動を変える必要があります。最終的にはお客さま自身が変わらないと本質的な改革は実現しません。
 だからこそ、相手が本当に求めていることを的確にとらえるために、ヒアリングを大切にしています。それが相手のためでもあるし、自分の目指すところを叶えることにもつながります」
 顧客課題の本質を見抜き、解決手段を考え、実践でクリアしていく。
 これまでのキャリアを通じて一連のプロセスを積み重ねてきた浅野さんは、NTTデータでさらなる飛躍を誓う。
「私が新卒で就職したときに『失われた20年』と言われていた経済の停滞から、日本が今も脱出できていないことに懸念を感じています。
 DXも、もう何年も前から叫ばれていながら、なかなか進まない。本来であれば、そろそろDXの次が語られていないといけない段階です。
 大きなことを言えば、そんな現状に風穴を開けたい。DXが本格的に浸透し、誰もその言葉を口にしなくなる未来を引き寄せる。NTTデータはそれをリードできる会社です」