【驚愕】プーチンの私兵軍団「ワグネル」とは何者か
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ワグネルの存在がにわかに注目を集める中、基礎情報が丁寧にまとめられたいい記事だと思いました。
ちなみにワグネルの親玉であるプリゴジンは1990年代にサンクトペテルブルグで闇カジノをやっていたようですが、その縁で当時、同市副市長で闇カジノ対策委員長でもあったプーチンとのつながりができたようです(90年代のロシアにおいてXX取締担当というのはXXからの賄賂を受けられるポジションであることを意味する場合が多かった)。
こういう人物なのであまり大っぴらにプーチンとの関係をアピールすることもできなかったのでしょうが、かといって簡単に切り捨てることもできないのでしょう。現代は民間軍事会社が大成長している時代です。
武力は必要なのに、軍や警察を増やすとコストがかかるので、政府も民間も軍事会社や警備会社に発注するからです。
日本でも、警備会社業界の売上高は、1990年から2020年まで、3.5倍ほどに拡大しています。
現代日本ではめずらしいくらいの成長産業といえるでしょう。
「警備業界の歴史」
https://keibiin.net/keibigyoukaidou.html
世界で最も民間軍事会社と警備会社が成長している国は、中国です。大部分が中国国内の収益ですが、東南アジアからアフリカまで一帯一路でも営業しています。
もちろん、タンカーに乗り込んだり石油プラントや鉱山に常駐して警備する仕事と、戦場の前線で鉄砲玉として先頭を歩かされるのは、違う仕事です。
しかし、中東やアフリカではタンカーが海賊に襲われたり、油田や鉱山を武装勢力が奪いに来たりします。それを防衛するなら、立派な戦闘です。
民間軍事会社が請け負う業務と軍隊や警察の業務の違いはあいまいです。
警備の業務は軍隊も警察も主要業務の1つですが、実に多くの人出を取られます。他の主要業務も、たとえば兵站、医療、炊事など、外注してコストダウンを図るのは、世界中で見られることです。
この傾向は、イラク戦争で米軍が民間軍事会社に外注したことで急拡大しました。その時の代表的民間軍事会社、ブラックウォーターは拷問や虐殺(これも外注を請け負った部分が大きいですが)で有名になりました。当時のCEOエリック・プリンス氏は、現在はフロンティア・サービス・グループを設立、中国政府から大規模な警備業務を受注しています。
ワグネルも民間軍事会社の1つですが、刑務所から直接受刑者をリクルートして前線に送る、という同業他社はあまりありません。ロシア政府との密接な関係があるからできることで、国策会社といえます。
軍事業務を外注せざるをえない、というのは世界中の政府に共通で、ワグネルはマリや中央アフリカといったアフリカ諸国の政府からも反乱勢力掃討業務などを受注しています。
しかし、ロシア政府にすれば、武力と財力を持ちすぎて権力を狙うようになるのは論外です。
プーチン政権は国営ガスプロムなどに民間軍事会社を子会社として設立するよう指示しています。政権に忠実な民間会社がよい民間軍事会社です。黒井さんが指摘している通り、バフムトの戦闘でワグネルは弱体化し「捨て駒」にされる可能性が高いと思います。プリゴジンは、ウクライナ戦争の初期で大失敗をやらかしてプーチンの信頼を失ったロシア軍指導部に代わり、一定期間プーチンの絶大なる信頼を勝ち得たようです。ワグネルは軍の武器弾薬などにアクセスすることを許され、刑務所から囚人たちをリクルートすることも許されましたが、昨年11月以降、その流れは変わりました。
プリゴジンが政治工作を進めて国防省内や政界に影響力を拡大させようとし、ロシア軍指導部に対する批判を展開しまくったこと等から、プーチンの信頼を失ったものと思われます。プーチンとロシア軍指導部は今、バフムトでワグネルとウクライナ軍が死闘を演じて両者が消耗するのを待っているようです。ワグネルは文字通り「捨て駒」です。
プリゴジンはロシア国防省に対して武器弾薬の補給を嘆願して代理人を送りましたが、ロシア軍司令部へ出入り禁止になったことが先週報じられました。ワグネルはもう刑務所から囚人をリクルートすることができず、代わってロシア軍が囚人たちのリクルートをはじめています。
影の部隊であるべきプリゴジンのような存在がこれだけ表に出てきたということは、その力がピークを過ぎたということを意味します。クレムリンは、すでにロシアの国有エネルギー企業ガスプロムを通じて、新しい民間軍事会社を設立する動きを見せています。
ワグネルの「最後」がウクライナ戦争にどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目したいと思います。