賃上げラッシュ「ニッポンの給料」に起こる大異変
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アベノミクスが始まる直前の2012の日本の就業率は56.4%でOECD38か国の中で19位、2021年は60.4%で第8位、G7の中で見ると2012年が下から3番目の5位、2021年は堂々の1位です。高齢者の雇用義務を延長し女性活躍を推進して就労者を増やした結果ですが、生産年齢人口が減る中で、こうした形の労働供給が限界に近づいているのは明らかです。
他方、日銀のデータによると、潜在成長率の前年比の単純平均は2012年度が0.76%、2021年度が0.20%です。日本の本質的な成長率は、ここ10年で大きく低下しているのです。
潜在成長率を支える生産性の対前年比伸び率は0.92%から0.44%に落ち、資本ストックも労働時間も成長に対しマイナスに働いています。2012年度と2021年度を比較して上がったのは0.13%が0.19%になった就業者数だけというのが現実で、これが就業率向上の背景です。金融緩和と財政支出で経済を下支えして好景気を演出し、一人当たりの労働時間を減らして仕事を分け合って働く人を増やしたけれど、生産性も資本ストックも低下し、日本の衰退は止まらなかったという厳しい現実がこうした数値に現れています。
今回のインフレの大きな原因は輸入に頼る資源価格の高騰と円安を伴う交易条件の悪化で、これは我が国が生み出す富が海外に流出していることを意味します。流出分を企業が負担すれば消費者物価は上がりませんが企業の体力が落ち、消費者物価に転嫁すれば家計の懐が痛みます。それを和らげるため賃金を上げれば負担が企業に再び転嫁され、それが更なる賃上げを生むのが、生産性の上昇を伴わない「物価と賃金の好循環」の宿命です。大元のところで富の流出が起きているのですから実質賃金が増えるわけがなく、「物価と賃金の悪循環」と呼ぶ方が正しい事態になりかねません。
人手不足が強まる中、人々が賃上げ出来ない企業から賃上げできる企業に移って生産性が高まれば事態は改善するのでしょうが、労働契約法と整理解雇の4条件や雇用調整助成金が雇用市場の流動性を落とし、転職支援や職業訓練がハローワーク、公共職業訓練所といった官製の枠組みに縛られていてはそれとても難しい。好ましい方向で本当に「大異変」が起きるのか。固唾を呑んで見守ります。(@@;ウーン賃上げは、今いる会社にそのまま居続けて給料か増えるというだけで実現するものではない。同じスキルを持ちつつもより高い給料がもらえる別の会社に転職することでも実現する。これら合わせて日本経済全体でみたときに、「賃上げ」が実現することが重要だろう。