News Microphone Computer Online Podcast
Articles in this issue reproduced from MIT Technology Review
Copyright ©2015, All Rights Reserved.
MIT Technology Review. www.technologyreview.com
Translation Copyright ©2015, Uzabase, Inc.
データを文章に変換するソフトウエアが、膨大なデータから意味を読み取るための手助けとなるかもしれない。ニュース記事の作成ツールとして登場したソフトウエアが、新たな「進路」を見出した。金融大手や米国の情報機関向けにレポートを作成する仕事だ。

「Quill」の成功

文章生成ソフト「Quill」(羽ペンの意)は、2010年創設のシカゴの企業Narrative Science(ナラティブ・サイエンス)によって開発された。数値データを文章にして記事化するノースウェスタン大学の技術を商用に転じたものだ。

ほどなくして同製品は、テレビやインターネットのスポーツメディアが野球の試合結果を報じたり、経済誌「Forbes」などが企業の業績に関する記事を作成するのに利用され始めた。

Quillがたちまちにして成功を収めたことは、ニュースでも頻繁に報道され、これを機に人工知能ソフトが人間の労働者に取って代わるのではないかと見る向きもあった。

好意的な報道ばかりでないにせよ、メディアに大きく取り上げられたのは幸運だったと、Narrative Scienceのスチュアート・フランケル最高経営責任者(CEO)は述べる。

「メディア業界では、われわれの製品に脅威を感じた人が多かったようで、おかげでたくさん取り上げられた。その結果、ありとあらゆる業界から問い合わせが殺到し、新たなビジネス展開へとつながった」

今では、T. Rowe Price(T ロウ・プライス)、Credit Suisse(クレディ・スイス)、USAA(米軍関係者向けの金融サービス企業)といった金融業界の顧客が、Quillの文章生成能力を利用して、投資信託のパフォーマンスについての詳細な長文レポートを作成しており、完成したレポートは投資家や規制当局に配布されている。

「それなりの人手を使い、数週間かけてやっていた仕事が、わずか数秒でこなせる」と、フランケルCEOは言う。「一部の金融クライアント向けには、1本10〜15ページに及ぶ文書を作成している」

さらに、米中央情報局(CIA)が設立した非営利ベンチャーキャピタルのIn-Q-Tel(インキューテル)が出資したことで、Narrative Scienceの顧客に複数の米国情報機関が名を連ねるようになった(仕事の内容についてフランケルCEOは、「米国の各情報機関が抱えるコミュニケーションの問題は、われわれの他業種の顧客とよく似ている」と述べるにとどまった)。かくしてQuillは現在、1日に数百万ワードの文章を紡ぎ出すまでになった。

Quillが生成する文章は、ソフトウエアとしては見事なものだが、それでも基になる数値データがなくては文章をつくれない。Quillはそれらのデータを統計的に分析して重要な出来事や傾向を見つけ出し、さらには「経営破綻」「利益」「売上」といったカギとなる要素、またそれら要素の関連性といった情報を基に文章を生成する。

下に紹介するパラグラフは、ある投資レポートからの引用だ。この種のレポートでも、Quillがそれなりに読める文章を生成できるのが分かると同時に、やはりコンピュータが書いたと思わせる面もある。

「エネルギー分野は、関連したパフォーマンスの主要な寄与因子となった。エネルギー関連設備およびサービス企業における株式銘柄選択によってである。個別の寄与因子としては、エネルギー関連設備およびサービス企業Oceaneering International(オーシャニアリング・インターナショナル)のポジションが、投資益の最大の寄与因子だった。また、株式銘柄選択は、医療分野における関連したパフォーマンスにも寄与した。医療機器・医療用品業界のポジショニングが最も寄与した」

書く文章に「角度」をつける

ノースウェスタン大学のコンピュータ科学教授で、Narrative Scienceのチーフサイエンティストを務めるクリスチャン・ハモンドによると、Quillはプログラムされた文章生成ルールを基に、文章や段落、ページを構築するという。「ある見解について説明し、繰り返しを避け、短くまとめるノウハウがわれわれにはある」とハモンド教授は述べる。

また、顧客企業のニーズに合わせて、Quillの文章スタイルや言葉遣いを調整することもできる。何かの宣伝文であれば良い点を強調する、規制当局への申請書類であればひたすら詳細に記述するといったことだ。

さらには、書く文章に「角度」をつけることもできる。例えば、特定のスポーツチームのファンが読むと予想される文章なら、チームの負けをソフトな表現で伝える記事を書くことが可能だ。

Narrative Scienceは、Quillの技術的詳細を明らかにしていない。しかし、オハイオ州立大学のマイケル・ホワイト准教授は、文章の「角度」や流れを巧みに操るQuillの能力は、従来の文章生成ソフトとは一線を画すものだと評する。

いわゆる「自然言語生成」ソフトウエアは数年来の研究テーマだが、商用として期待がもてるようになってきたのは最近のことだとホワイト准教授は言う。

「多量のデータや視覚化も、それを説明し、関連づけることができなければ役に立たないことが認識されつつある」とホワイト准教授は述べる。「自然言語生成がいよいよ商業的な成功を収める時が来た」

この技術に取り組んでいる企業にはほかに、スコットランドにあるアバディーン大学の研究からスピンオフした英企業Arria(アリア)などがある。また2014年創設のOnlyBothは、文章生成ソフトの第一弾製品を2015年にリリースする予定だ。

これらの企業はいずれも、現時点では企業向けのサービスに注力している。しかし、Narrative Scienceのハモンド教授は、自動車やヘルスケア・ガジェット、家電などのインターネット対応が進むなか、それらの製品がユーザーとのやり取りに用いている簡単なグラフや記号だけでは、十分な情報提供ができない可能性があると指摘する。

「一般の人たちが、サーモスタットや自動車などのデータを把握するために、データサイエンスを学ぼうとするとは思えない」とハモンド教授は言う。「文章生成技術は、データを有するあらゆるものの通訳として機能するようになるだろう」

原文:Robot Journalist Finds New Work on Wall Street(English)

(原文筆者:Tom Simonite、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:@iStock.com/On-Air)
Copyright©2015,[Tom Simonite] All Rights Reserved.