[東京 3日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニア・バイス・プレジデント、クリスチャン・デグズマン氏は3日、日銀が将来利上げしたとしても穏やかなペースとみられ、当面の国債発行への影響は限定的なものにとどまるとの見方を示した。

ロイターのインタビューで、日本の多額の公的債務は信用力にとってマイナスだが、この弱点は日本の膨大な貯蓄と国内投資家の強いホームバイアスに相殺されると述べた。

また、金利に関する見解として「金利が正常化した場合、日銀は徐々にしか金利を上げないだろうから、日本のデットファイナンスへの短期的な影響は限定的だろう」と発言。

「重要なのは、政府が非常に有利な金利で資金を調達できることだ。これは必ずしも変わっておらず、政府の資金調達環境はまだ極めて心地よい状況だ」と語った。

同氏は一方で、日銀のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の持続可能性への市場の懸念は高まっていると指摘。「日銀がどのように移行を管理するかで、われわれは金融政策とマクロ政策の有効性を評価することができる。現在は非常にリスクの高い時期だ」と述べた。

インフレ率の上昇が債券利回りに上昇圧力をかけているため、ハト派的な黒田東彦総裁の任期が4月に終了した時点で、日銀がYCCを段階的に廃止するとの憶測が市場で飛び交っている。

利回りが少しでも上昇すれば、日本の経済規模の2倍という世界最大級の巨額の公的債務の調達コストが増大し、既に悪化している日本の財政にさらに負担をかけることになる。

デグズマン氏は、基礎的財政収支の黒字化に向けた日本政府の公約を歓迎すると発言。ただ、岸田文雄首相の経済・財政政策は「あまり明確化されていない」とし、歳出計画の財源についての詳細が欠けていると述べた。

同氏は日本のソブリン債格付けを決定する際に、ムーディーズは巨額の債務と有利な資金調達条件のバランスに注目するとし、「バランスが崩れた場合、格付けが見直される可能性がある」と述べ、日本のソブリン債格付けが引き下げられる可能性に言及した。

ムーディーズは現在、日本のソブリン債に「A1」格付けを付与。21段階中で5番目に高い格付けとなっている。