[31日 ロイター] - 米製薬大手・ファイザーが31日に示した2023年の新型コロナウイルスワクチンと治療薬の売上高は、予想を超える減少となった。各国政府が新型コロナワクチンと治療薬の発注を削減し、在庫処理を進める中、投資家の懸念が強まっている。

アルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)によると、23年下半期に新型コロナワクチンを政府への直接販売から国内の商業ルートを通した販売に切り替える。商業販売に移行後は国内の販売価格を約4倍に引き上げたい考え。

ブーラCEOは、新型コロナ関連製品にとって23年は「移行期」になるが、24年には成長に転じるとの見方を示した。

22年の決算は、新型コロナワクチン「コミナティ」と経口抗ウイルス薬「パクスロビド」の売上高が560億ドルを超えたことで、総売上高が初めて1000億ドル台に乗せた。

ファイザーは23年の売上高が670─710億ドルになると予想。ただ、新型コロナ関連製品を除く売上高は7─9%増加するとした。

ブーラ氏はアナリストと投資家向けの電話会議で「成長実現に必要な資本を大幅に積み上げている」とし、「これまで以上に生産性が高い研究開発の原動力を構築している」と述べた。

この日の株価は一時マイナス圏にあったが、1.4%高で終了。年初来では前日までに15%下落していた。

ファイザーはコミナティを独バイオ医薬品企業ビオンテックと共同開発。収益を折半している。23年のコミナティの売上高は135億ドルになると予想。リフィニティブがまとめた予想の143億9000万ドルを下回った。

パクスロビドの売上高は80億ドルと予想。アナリスト予想の103億3000万ドルに届かなかった。

シティのアナリスト、アンドリュー・バウム氏は、ファイザーは新型コロナのワクチンと治療薬への依存からの脱却に苦慮していると指摘。「ファイザーの新型コロナ関連事業に対する慎重な見方を変えるものはほとんど見当たらない」とした。

ファイザーは昨年、血液疾患治療薬を手がけるグローバル・ブラッド・セラピューティクスなどを買収。バウム氏は新型コロナ関連で得た収益を活用し、他社や製品を買収する取り組みを強化すると予想した。