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跳ね上がるスタートアップの企業価値

全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)によると、アメリカでは2014年、ベンチャーキャピタルによるスタートアップ投資額が483億ドルに達した。2000年の1050億ドルに次ぐ記録的な数字だ。

もっと驚きなのは、483億ドルの4分の1が、シードマネーを含め過去に何度か資金調達に成功している(いわゆる後期ラウンドの)スタートアップに集中したことだ。マスコミをにぎわせた大型投資も、こうした後期ラウンドの資金調達に集中している。そして巨額の資金調達に成功したスタートアップは、企業価値も跳ね上がった。

巨額の投資を集めたUber(ウーバー)は、現在410億ドルの企業価値があると評価されている。空き部屋シェアサイトのAirbnb(エアビーアンドビー)は5億ドルを調達して、現在の企業価値は100億ドル。フェイスブックの30億ドル買収提案を拒否したスナップチャットは、いまや100億ドルの価値があると見られている。若者向けデジタルメディアを展開するVice Media(ヴァイス・メディア)は5億ドルの投資を受け、いまやニューヨーク・タイムズを上回る企業価値がある。

しかし投資額が大幅に増えたからといって、投資を受けたスタートアップの数が大幅に増えたわけではない。投資総額が前年比61%増だったのに対して、件数自体は4%ほどしか増えていないのだ。他方、調査会社CBインサイツによると、後期ラウンドで企業価値が10億ドルレベルと評価されたテクノロジー企業の数は160%増えた。

IPO後の時価総額が大幅に低いケースも

だが、こうしたスタートアップが実際に上場したとき、未公開市場での「企業価値」を維持できなければ、未上場のスタートアップ全般に対する評価に疑問符が付く可能性がある。

後期ラウンドの企業価値高騰は、一種の好循環を生んでいる。未公開市場で付けられる企業価値が著しく高いため、スタートアップとしては未上場でいたい。伝統的なベンチャーキャピタルも、企業価値が急騰することを期待して、後期ラウンドの資金調達に積極的に参加したり、すでにポートフォリオにあり後期段階にあるスタートアップにさらに投資する。

こうした好循環も、2015年は試練のときになる可能性がある。CBインサイツによると、今年IPO(新規株式公開)を予定している会社は588社あり、このうち42社に10億ドル前後の企業価値があるとみられている。これらの会社が上場したときの時価総額が、未公開時代の「企業価値」を下回るケースが続出すれば、「スタートアップの上場は先延ばしにしたほうがいい」という考え方にも変化が起きるだろう。

例えば昨年末にIPOに踏み切った、アプリのパフォーマンスを分析するNew Relic(ニュー・レリック)と、ビッグデータ分析プラットフォームを提供するHortonworks(ホートンワークス)。両社とも未公開市場では10億ドルの価値があると評価されていたが、IPO直後の時価総額はそれを大幅に下回った(ただしその後両社の株価は上昇し、現在はニュー・レリックの時価総額が15億ドル、ホートンワークスが10億ドルとなっている)。

当面は、ニュー・レリックやホートンワークスのケースは例外とする見方が強いだろうが、上場後の価値が評判を下回るのがトレンドになれば、後期ラウンドで莫大な資金調達を確保するスタートアップは減るかもしれない。特にヘッジファンドと投資信託は、プライベートエクイティーやベンチャーキャピタルの投資家よりも流動性を求める傾向が強いため、上場先延ばしに否定的になるかもしれない。

だからといって、スタートアップが後期ラウンドで資金を調達するのが難しくなるとはかぎらない。なにしろベンチャーキャピタルはカネがうなっていて、ポートフォリオに入っているスタートアップや、初期段階で投資したことがあるスタートアップに投資することができる。それでも一般投資家が神経質になり始めたら、ベンチャーキャピタルで数億ドルを集めたスタートアップも自信満々でIPOに臨むというわけにはいかないだろう。

まずは今月23日にIPOしたクラウドストレージのBOX(ボックス)の動向に注目だ。

(執筆:Katie Benner記者、写真:bloomberg、翻訳:藤原朝子)

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