【徹底解説】ウクライナで、2023年に起きること
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日本も1941年から(日中戦争からだと1937年から)1945年まで、国力からいえば到底無理な規模の戦争を3年以上続けました。
勝てないとわかっていても、あるいは、損害の方が利益よりも大きくなるとわかっていても、一度始めた戦争をやめるのは、非常にむずかしいことです。
やめるなら、施政者たちが自分たちの命くらいは差し出すことで合意する必要があります。
当時の日本に比べれば、ロシアは非常に分のいい立場にいます。まず、石油とガスをはじめとする資源が自国内で出ます。中国との貿易もできます。
そして、敵は、ウクライナという中規模国1か国だけです。
ナポレオンのフランスにも、ナチスのドイツにも勝利してきたロシアの経験からいえば、勝てると考えても無理はないでしょう。
米国やEU諸国がウクライナに行っている支援は死活的に重要ですが、それだけで勝敗が決まるということはありません。
米国は、多くの国を軍事支援してきた経験があります。中国国民党、南ベトナム、アフガニスタン政府、いずれも莫大な支援を受けながら、不甲斐なくも敗れました。
ものになったのは、朝鮮戦争後の韓国と、あとはソ連くらいでしょう。
米国の莫大な支援を受けながら滅びた国々が敗れたのは、統治が近代国家の体を成しておらず、国民が国民としての意識を持たず、指導者が蓄財と内紛に明け暮れては次々に入れ替わったからです。
米国が支援しても、ダメな場合はダメです。
ウクライナは、国家の統治が何とか機能し、たまたま指導者を得て、そして何より命をかけて戦う国民がギリギリのところで創成しました。
一方、ロシアは、国家の統治はウクライナ以上にダメな面が多いですが、それで昔からフランスにもドイツにも勝ったし、日本も圧倒したので、到底侮ることはできない国です。
農奴制や強制収容所を武器にして、粘り強さで勝ててしまう国です。
占領地を服属させるまで蹂躙し続けることも得意な国です。
2022年を通して、ロシア軍はスマートな「新しい戦争」が自分たちにはできない、ということを学習しました。
塹壕にこもって、ひたすら大量の砲を撃ち続け、多数の死傷者が出る前提で歩兵群をじりじりと前進させる昔のやり方にもどっています。
ロシアはだいたい緒戦ではミスを連発しますが、学習して立て直してきます。それが恐ろしいところです。2022年の世界最大のイシュー、ウクライナ戦争について小泉悠さんと山添博史さんのダブル解説をお届けします。
原稿に盛り込めなかったポイントを一点だけ。各所で語り尽くされているように、プーチンはこの戦争をごく短期間で終わらせられると踏んで侵略をはじめました。なぜ、そんなふうに判断を誤ったのか。小泉さんに疑問をぶつけてると、考えられる理由は4つとのこと。
①「諜報員プーチン」としての奢り。プーチンがゼレンスキーと対面したのは2019年の1度だけ。当時ゼレンスキーは新米大統領で、プーチンを前に手も足も出ませんでした。ここでのイメージがプーチンから離れなかった。
②情報の入手元。これも諜報員だったことに関係しますが、プーチンは常々「ネットは見ない。自国の情報機関のレポートを信用している」と発言しています。しかし独裁が長続きする中、その諜報機関がプーチンに対して忖度した情報しか上げないようになっていった。結果、判断を誤った。
③プーチンやロシアの、ウクライナに対する認識。長きに渡ってプーチンやロシア人の間には「ロシアが兄、ウクライナは弟」という認識があり、それが「ロシアのほうが強い」という認識につながった。結果、ウクライナ人の覚悟を見誤った。
④軍隊の強さとは、なかなか分からないもの。ウクライナは2014年にロシアにクリミア半島を取られてから、軍隊の改革をして西側式のコマンド&コントロールを導入してきた。これがどれくらい功を奏したのかは、戦場に出てみて初めて分かった。
といった点です。これらも踏まえ、2023年のウクライナ戦争の展開はどうなるのか、どこよりも深く徹底解説します。大規模戦闘が迫る中、ぜひ年内に読んでいただきたいレポートです。小泉氏の「独ソ戦に比べれば、今回は「まだ10か月」ととらえる国民もいるかもしれません」というのは、言われてみれば確かにその通りですね。例えばレニングラード包囲戦は900日間に及び、100万人近くが餓死する凄惨な戦いでした。
プーチンからしてみれば、電撃的な侵攻でキーウを占領、もしくらウクライナ側の内応や反乱によるゼレンスキ政権崩壊で「特殊軍事作戦」終了、という見込みだったのでしょうが、初動で思わぬ頑強な抵抗を受け、当てが外れたようです。
ロシアにいる友人に聞いた話では、普段は大渋滞の起こるモスクワ中心部が、現在はスカスカで車をスイスイ走らせられる。普段は観光客でいっぱいのクレムリン周辺や赤の広場は警察官しかいない。みんなウクライナに行きたくないから、動員令発令以降は海外に逃げるようになったとのこと。
彼はもともとプーチン支持派でしたが、動員令以降は反対派になりました。そのようなロシア人も多いのではないでしょうか。