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動画史が予測する「動画ビジネスの未来」(1)

動画100年史から探る、動画ビジネスの勝者

2015/1/22
デジタル化、ソーシャル化、スマホシフトなどにより、大きく変わりつつあるテレビ業界。その中でも、最大のテーマのひとつが「動画」だ。これから動画はどのように発展していくのか、勝者となるのは誰なのか。TBSテレビ編成局コンテンツ戦略部の柳内啓司氏が、動画の歴史を紐解きながら、動画の未来を予測する。

勝つのは“手軽な”プラットフォーム

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。

かの有名な初代ドイツ帝国宰相ビスマルクの言葉です。ここ最近成長分野として注目されている「動画」においても、その歴史を学ぶことは、動画の未来を予測する上での羅針盤になってくれるはずです。

しかし、動画メディアの変遷を「動画史」としてまとめたものを探そうとすると、最適なものになかなか出会えません。映画史・テレビ史といった各業界での歴史をまとめた書籍などは存在するのですが、それらをさらに俯瞰(ふかん)し、包括的に整理したものは、動画がまだ100余年の若いメディアのためか、ないようなのです。

そこで本記事は、映画~テレビ~PC・スマホと変化してきた動画プラットフォームや、それに伴うコンテンツの変化を、「動画史」として整理していき、そこから予測される「動画の未来」について考察していきます。

動画の起源は1893年の、エジソンによる映写機発明と言われています。文字メディアが紀元前4世紀の新石器時代から存在したことと比較すると、動画は相当若いメディアと言えるでしょう。

その動画の歴史を振り返ったとき、一貫して言えること。それは「いつの時代も“手軽な”プラットフォームが勝ってきた」ということです。
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動画の起源である映画は、舞台に代わる娯楽として誕生しました。

舞台は出演者と観客が一堂に会さなければ成立しないものでしたが、映画は一度撮影して、上映設備さえあれば、いつでもどこでも何度でも、その作品を鑑賞できます。この「手軽さ」がうけて、映画は大衆の娯楽として一気にその地位を確立することとなりました。
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テレビも同様に、「手軽さ」が普及を後押ししたメディアです。映画は舞台に比べるとかなり手軽なメディアであるものの、とはいえ大掛かりな上映設備が必要でした。

一方でテレビは、小さなテレビ受信機さえあれば家にいながら、気軽に映像を鑑賞できます。さらに、映画は鑑賞料がかかる「有料メディア」だったのに対し、民放は広告モデルによって「無料メディア化」させました。これにより、テレビは96.5%という圧倒的な普及率(※2014年現在の一般世帯において)に到達しました。

ここにおいても、”家でいつでも見られる、それも無料で”という「手軽さ」にユーザーとマーケットは動いたわけです。
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もちろん、舞台作品がライブだからこそ味わえる緊張感や、映画の持つ迫力ある映像は、テレビに勝るものがあります。

実際、私も数カ月に一回は舞台鑑賞に出かけますし、新作映画を観に、映画館に足を運びます。しかし、マーケットの観点で見たとき、「手軽さ」こそがプラットフォーム覇権におけるキーとなってきたことは間違いありません。

では「手軽さ」こそ動画プラットフォーム普及のキーファクター」という観点で見たとき、動画プラットフォームの未来は一体どうなっていくのでしょうか?

ここで注目すべきなのは、やはりスマホでしょう。

今急速に普及しているスマホは、画面サイズ、バッテリーに起因する連続再生時間の制限、通信容量の制限など、現時点でのスマホは、リビングのテレビと比べて劣っている点が多々あります。

しかし、いつでもどこでも見られるという「手軽さ」において、勝っており、「手軽さ」が普及のキーファクターである歴史を振り返ると、動画プラットフォームとしてのスマホは、その存在感をさらに増すでしょう。
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ちなみに、バッテリー問題や通信容量制限の問題は、初代iPhoneからiPhone 6への進化を考えたとき、時間が解決してくれると思われます。これは、テレビが普及し出したとき、まさか今のように大画面で高画質なデバイスになるとは想像できなかったのと、同じ構造だと言えます。

明日掲載の次回の記事では、スマホ上での動画が伸びたとき、動画コンテンツそのものには、どんな変化が起こるかを予測してみましょう。

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