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・まず、長期金利のコントロール政策(日本はYCCと呼んでいますが米国はYCTと呼称)は、理論的には「先行きの短期金利についての約束」に近いです。(例えば、「10年物金利をゼロにする」というターゲットは、「翌日物のゼロ金利を10年間続ける」と予めアナウンスすることと近い。)
したがって、その変更はほぼ不可避的に、市場の期待形成の急激な変動を伴います。変更が「サプライズ」になりやすい性質を元々持っている政策であり、だから他の国々はやりたがらない訳でもあります。
・長期金利については、もともと介入すること自体が異例ですので、そこからのExitについても「金利引上げ」ではなく、「徐々に手を放す」という形になりやすい訳です。それを「市場機能に配慮した調整」と呼ぶか「exit」と呼ぶかは、もはや価値判断の世界です。もともと長期金利介入政策自体、市場機能をある程度犠牲にしてでも金利を下げることを優先した政策ですので。
短期金利は低いままで、これは恐らく、上げられません。マイナス金利は解消できても、ゼロ近傍でしょう。住宅ローンは、最近、契約されたもののかなりの割合が変動でしょう。見直しの時期に差し掛かる契約も少なくないでしょうが、マクロ的な影響は軽微ではないでしょうか。
法人の資金需要に関しても、金利負担と円安コスト、どちらが上回るかというところ。日銀は遂に折れたのかもしれない。とはいえ、不要なサプライズは逆バズーカだと私は考えます。
いずれにせよ、110円から150円の半値戻しで130円。20円のプレミアムを招いたのは、日銀でしょう。動学的不整合ともいえそうです。
円高に行っている今ならば円安抑制と取られない、という側面は確かにあったのかもしれませんし、海外勢のノイズが小さい時、という季節的な側面もあったでしょう
日銀総裁って大変だなぁとつくづく思います。
次の総裁はめちゃくちゃ難しい舵取りです。ほぼ何をやっても叩かれることになりかねない
"日銀による年間の国債購入額は6年ぶりに100兆円を超えた。"
株価を見れば、日本経済にとっては必ずしもそではないと市場は評価しているようですが。
──利上げになりますか
「それはなると思います」(2022年9月)
「いわゆる金利引き上げではない」(2022年12月)
大酒記者が指摘している通り、日銀が「やることやった」と胸を張る以上の効果がほぼなかった(そしてそれはやる前からほぼ予見できていた)わけですが、異次元緩和以前からモルヒネを打ち続けてきた日本経済にさらに強力な痛み止めを10年打ち続けてきたわけなので、「住宅ローンが!」と皆がぶーぶー思うのも仕方ありません。「もっと痛み止めを!」となってしまうことを繰り返してきたし、それも予想できていたことです。
なので、利上げの号砲ではもちろんなく(それはあまりにも難しい)、しかし痛み止めを徐々に減らして正常化をトライする次期総裁のための露払いが始まった、ということなのですね。
自ら始めた政策は自ら収束への道筋をつけるのが当然で、FRBでバーナンキ議長がイエレン議長にバトンを渡した時も、イエレン議長がパウエル議長にバトンを渡した時もそうでした。これだけ極端なことをやってそこここに大きな歪を作られた黒田総裁が何も手を付けないまま去られるのは如何なものかと思っていましたが、発行した国債が1日たりとも市場に滞留することなく日銀に持ち込まれる異常事態が起きるに及んで流石に見直しに向け幾許かの手を付けられたように感じます。
次の日銀総裁は大変だと繰り返し申し上げて来ましたが「次の日銀総裁候補が、なかなかウンと就任を受け入れない」ということがやはり起きているわけですね。10年に亘る異常な緩和が生んだ歪が如何に大きいかを如実に物語っているように感じます。
低金利を前提に過剰債務になっている企業や個人も少なくないので、金利上昇によって各所で利払いに困る場面が出てきそう
そもそも10年も低金利が続くと、「利払い」という概念自体が無意識のうちに頭から抜けてしまっている人も多そうです