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Weekly Briefing(メディア・コンテンツ編)

Viceという超新星、日経電子版40万人へ、ネット企業のTV買収

2015/1/20
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、この1週間の注目ニュースをピックアップ。火曜日は、世界と日本のメディア・コンテンツ・マーケティング関連のニュースをコメントとともに紹介します。

Pick1:Viceという超新星

Jane Martinson”The virtues of Vice: how punk magazine was transformed into media giant” Guardian(2015年1月1日)

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世界の新興メディアの代表例と言えば、バズフィード。それと負けず劣らずの存在感を誇るのが、Vice Media(ヴァイス・メディア)だ。

1994年に、カナダのモントリオールで”パンク雑誌”として産声を上げたヴァイスは、その後デジタルに進出。「次のCNNを狙う」という目標の下、世界35カ国で展開し、インパクトのあるドキュメンタリー動画などで名を上げた。

グローバルの月間オーディエンス数は1.81億人に達しており、1980〜2000年生まれの若者から、絶大な支持を得ている(平均読者年齢は27歳)。

昨年時点の想定時価総額は、25億ドル。売上高10億ドル、営業利益率は30〜35%に達するポテンシャルがあると公言している。

コンテンツ面での特徴は、危険を顧みない「圧倒的な取材力」。ウクライナ、シリアからの現地レポートは大きな評判を呼んだ。2013年に、元NBA選手のデニス・ロッドマンが北朝鮮を訪問したが、その背後にはヴァイスがいたと言われている。

収益モデルの柱は2つある。ひとつは、ライセンシング。自らのコンテンツを、世界中に売りまくる。いわば、コンテンツの制作工場である。もうひとつの収益源は広告・スポンサー収入。傘下のクリエイティブエージェンシー「Virtue」が、テレビと同じように番組スポンサーを募り、ネイティブ動画を創ることで高い収益を上げている。

Pick2: 日経電子版、有料会員数40万人へ

”本紙・電子版、購読数312万” 日本経済新聞朝刊(2015年1月17日)

佐藤慶一“米新聞社のペイウォール導入は500社超え——海外メディアが有料購読に踏み出すいくつかの背景”、メディアの輪郭(1月16日)

アメリカでは、NYタイムズなどの主要紙がデジタル課金に成功するにつれ、有料課金(ペイウォール)の導入に踏み切るメディアが増えている。

日本のメディアの中で、数少ない課金の成功例が、日本経済新聞の電子版だ。その2015年1月5日時点の数字が先日発表された。

紙と電子を合わせた部数312.4万部に対し、電子版の有料会員数は39.1万人。そのうち、紙を併読しない電子版単体の比率が52.9%に達している。つまり、20万人以上の読者が、月額4000円を払って日経電子版を購読しているわけだ。

単純に過去1年の増加数を日数で割ると、一日当たりの有料会員増加数は、150人程度。今のペースで行けば、3月初めには40万の大台にのることになる。

世界を見ると、課金では経済メディアの好調が目立つ。米国で最大の部数を誇るウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、226.2万部のうち、デジタル購読が92.4万部に上る(2014年3月末時点)。

より勢いがあるのは、英国のフィナンシャル・タイムズ(FTだ)。デジタル購読は、2014年6月末時点で前年同期比33%増の45.5万を記録。全部数(67.7万部)のうち、実に3分の2がデジタルになっている。

FTの場合、全部数のうち、29万部がコーポレート契約となっている(世界50以上の中央銀行が購読)。BtoBで企業にも販売できる点が経済メディアの大きな強み。WSJ、FT、日経ともに、まだ成長トレンドは続きそうだ。

Pick3:9つのメディアテックトレンド

2015年の米国におけるメディアテック業界の9つの予測が掲載されている。

1)テック企業が、テレビ局を買収する
2)動画のプログラマティック型広告の繁栄
3)コネクテッドカーの普及
4)ラジオ業界の復活
5)音楽ライセンシングの最適化
6)フェイスブックが出版社へのグリップを強める
7)電子書籍のサブスクリプションサービスの競争が過熱
8)映画館での映画公開が縮小
9)TV局が、オンラインのサブスクリプションサービスを導入

この中で、とくに興味深いのは1)の予測。具体的には、ヤフーがスクリップスネットワーク(ケーブルテレビ、フードネットワーク、トラベルチャンネルなどを保有。時価総額は約100億ドル)を買収するとの噂を引用している。

その狙いは、TVの有する圧倒的なリーチだ。ネットでは捕捉できない、良質なテレビ視聴者との接点を得ることにより、広告価値を上げることができる。しかも、自社で創る映像コンテンツを、ネットに加え、TV放送でも流せるというメリットもある。

もうひとつの注目は、7)の電子書籍のサブスクリプション(読み放題)サービスだ。サブスクリプション型で言うと、映像ではネットフリックスとHulu、音楽はスポティファイというビッグプレーヤーが生まれつつあるが、電子書籍には、まだ明確な勝者がいない。すでにサービスを開始しているOyster、Scribd、アマゾンのキンドルアンリミテッド以外にも、意外な新星が現れるかもしれない。

Pick4:NYタイムズなどが、ドローン取材をテスト

New York Times, AP to Start Testing Drones for Reporting” 、Ad Age(2015年1月15日)

上記の予測以外のメディアテックの話題と言えば、ドローンによる取材活動がある。つい先日、ニューヨークタイムズ、AP通信など10の著名メディアが、共同でドローンによるニュース収集をテストすると発表した。

今のところ、災害報道、スポーツ報道などがドローン活用の主戦場だが、今後、さらに新しい使用方法が見つかるかもしれない。

ドローン活用のメリットは、人間で取材するには危険、もしくは、不可能な取材を代行できる点に加えて、コストの安さがある。

たとえば、ヘリコプターを使って上空から撮影する場合、1時間当たり1500ドルかかるのに対し、ドローンは1000ドル以下で購入できるうえ、何度でも使える。ドローンはとても経済的なのだ。

※Weekly Briefing(メディア・コンテンツ編)は毎週火曜日に掲載する予定です。