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国への「脅威」を防ぐために
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7月のバイデン大統領のサウジ訪問とは明らかに差をつけた対応を見せたサウジ政府。サウジメディアは習近平国家主席訪問の特集を連日報じて歓待しています。
 中国は、サウジにとって最大の原油輸出先で最大の貿易相手国です。今回さまざまな経済協力協定に調印しますが、安全保障面の機微な分野にどこまで進むか、に注目です。
 昨日FT紙が、「(中国が)サウジを自国の方向へ10メートル動かすたびに、それはただの勝利ではなく、二重の勝利になる。サウジが米国から遠ざかるからだ」というコメントを引用していましたが、その通りだと思います。
「多極化」は、ロシアが外交上の基本方針として提唱し続けている概念ですが、「米国一極中心ではない」ということです。
 米国の緊密な同盟国である日本にとっては、利益になる方針ではありません。間違っても、日本も多極の中の1つになれるとか、米国とも中国とも対等に付き合ってもらえるとかは思わない方がいいです。

中国は、中東におけるプレゼンスを地道に増大してきました。主に民生部門において、日用品を輸出し、発電所などのインフラをつくり、孔子学院をつくり、原油とガスの最大のお得意様となりました。
 伝統的に、中国の主要な同盟国はパキスタンですが、近年はイランとの同盟関係を包括的に深化させています。今や、イランが最も頼りとする国といえるでしょう。

現在の中東で優位に立っているのは、サウディアラビア‐UAE‐イスラエルの同盟であり、これはイランを仮想敵とした同盟です。
 イランが中国との関係を足がかりに、国力を増していくのは、非常に阻止するべきことです。
サウディアラビア‐UAEの方が中国との関係を強化することで、イランを牽制する、というのが外交上有効な策でしょう。

サウディアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、(おおむね逆恨みなのですが)米国に面子を潰されてきた、という思いが鬱積しています。
 個人的な感情が動機の大きな部分を占めてはいますが、米国に替えてロシアや中国と同盟しようとか、ロシア製や中国製の兵器を、米国製兵器の代わりに導入しよう、といったことを側近たちと話し合っては、鬱憤を晴らしてきました。

今回の習近平主席来訪の機会にサウディアラビアに集められたアラブ諸国12か国の首脳たちにとっても、中国との関係深化を歓迎する十分な動機があります。
 ファーウェイの進出、ソーシャル・メディアも対象にしたデジタル監視技術の提供、などにしても、これらのアラブ諸国にとっては、非常に相性がよい、ぜひとも導入したいシステムです。

米国と中国の対立は、第1にはまず台湾をめぐる対立ではありますが、潜在的な対立の場は東シナ海、南シナ海からインド洋を越えて中東、アフリカまで広がりつつあります。
 中東、アフリカ諸国での中国の外交的攻勢は、まだ当面続くでしょう。米国、EU、日本はそこまでのリソースが無く、後手後手に回っています。
習主席のサウジ公式訪問は、中国官製メディアのヘッドラインで扱われています。「包括的戦略パートナーシップ協定」への署名は、両国が戦略的次元で連携と協力を進めていこうという意思、習主席がサルマン皇太子と会談した事実は、中国として、サウジとの関係を長期的視野に立って構築していこうという意思を物語っています。

エネルギー、通信といった実務的な連携だけでなく、米国をはじめとする西側諸国を念頭に置きつつ、それを牽制すべく、「核心的利益」の尊重を前提に、中国の地政学的利益、勢力範囲をアラブ中東に浸透させていくということ。この地域で、サウジをイランに継ぐ戦略的パートナーにすべく動いていると見ています。
アメリカに対しても、ロシアに対しても影響力をます一手ですね