(ブルームバーグ): 米マイクロソフトは日本時間7日、人気ゲームタイトル「コールオブデューティ(CoD)」を任天堂の家庭用ゲーム機向けに今後少なくとも10年間提供し続けることで合意したと発表した。

CoDは米ゲーム製作会社アクティビジョン・ブリザードが手掛ける人気シリーズで、ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)と呼ばれるジャンルで世界的な人気を集める。マイクロソフトは今年1月、アクティビジョンの買収計画を発表していた。

任天堂ゲーム機への提供期間は、アクティビジョン買収手続きの完了から10年間で、満了後も期限を延長することが可能。マイクロソフトは、米ゲーム制作会社バルブによるウインドウズ向けゲーム配信サービス「スチーム」に対してもCoDの配信を続ける。

マイクロソフトによるアクティビジョン買収計画を巡っては、ゲーム事業で競合するソニーグループが消費者に不利益をもたらすと反対を表明し、各国の規制当局に認可を与えないよう求めている。議論の焦点は、CoDが買収を通じてマイクロソフトに独占され、業界の競争環境が大きく損なわれるかもしれないという点だった。

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こうした懸念を払拭するため、マイクロソフト幹部は次々とCoDを他社ゲーム機向けに提供し続ける用意があると発言してきており、今回の合意はそうした意向を反映したものである可能性がある。ソニーGと任天堂の広報担当者は取材に対し、コメントを控えるとしている。

任天堂との合意発表後、マイクロソフトでゲーム事業を管轄するフィル・スペンサー氏はブルームバーグに対し、同社の狙いはゲーム専用機、PC、そしてスマートフォンなど、幅広い種類の機器でゲームを遊べるようにすることだとし、任天堂やソニーとも、双方にとって利益がある関係を築くことができる、とコメントした。

スペンサー氏はまた、ソニーに対しても任天堂と合意した内容に類似した計画を提案しているが、現時点まで拒絶されていることを明らかにした上で、ゲーム業界において買収に反対しているのはソニーのみであり、ソニーは懸念解消のため働きかけているマイクロソフトとの交渉よりも規制当局へのロビー活動により多くの時間を割いていると批判した。

マイクロソフトは当初、ソニーのプレイステーション(PS)に、アクティビジョンとソニー間に存在する現行の契約期間終了後も3年間はCODをPSに提供すると持ち掛けていたが期間が短か過ぎるとして断られていた。

東洋証券の安田秀樹アナリストは、今回の合意でCodの独占懸念が薄れ、買収実現に向けて大きく前進するのではないかという見方を示した上で、「マイクロソフトの買収を何が何でも止めたいソニーにとっては苦しい状況になるのでは」とコメントした。

690億ドル(現在のレートで約9兆5000億円)規模の買収計画が実現すれば、マイクロソフトは世界3位のゲーム会社に浮上する。マイクロソフトの発表を受け、7日の日本株市場で任天堂株は一時前日比1.5%高の5847円まで上昇。終値は5782円だった。

--取材協力:古川有希.

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