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ビジュアライズの入り口

ガー・レイノルズのスライドデザイン哲学「禅」

2015/1/18
本記事は、「データプレゼンテーションの教科書」(日経BP社)掲載のガー・レイノルズ氏インタビューを許諾を得て再編集した記事です。「プレゼンテーションzen」の著者でもあるガー・レイノルズ氏のデザイン哲学をインフォグラフィックを織り交ぜながら解説します。

詰め込みすぎとデコレーションはノイズ

はじめに一枚のスライドをご覧ください。

各国の肥満度比較。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

各国の肥満度比較。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

プレゼンスライドを作成する際、ほとんどの人は提示する情報に不備があってはいけないと考え、「念のため」にすべての情報を盛り込もうとします。言い換えれば、リスク回避の「エクスキューズ」を詰め込むんですね。その結果、情報過多になり、伝えたい内容が不明瞭になってしまっています。

伝わりにくくしている原因は、情報量だけではありません。色やフォントの使い方にも原因があります。

では、このスライドはどうしたら良かったのでしょうか?

表面的なデザインテクニックの話をする前に、その背景にある「禅」哲学についてガー・レイノルズ氏がどう捉えているかを彼の考えを象徴する写真を使って知っていきましょう。

簡素化によるインパクト

日本の「床の間」。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

日本の「床の間」。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

空間にあるのは掛け軸だけで、シンプルにライティングされている。たったそれだけですが、非常にインパクトがあり、みる側の記憶に残ります。まさに、「簡素化し、伝えたい内容を明確にするビジュアル」です。

「禅」は、簡素化によってメッセージを際立たせます。そのためのプロセスは、次の通りです。

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それではこの方法で簡素化したスライドを見てみましょう。

簡素化したスライド

各国の肥満度比較。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

各国の肥満度比較。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

このスライドでは、「カナダの肥満度」にフォーカスして、その情報が際立つように比較対象も選んでいます。

メッセージが絞られることで、デザインテクニックが活かせます。

ここでは4つのデザインテクニックを紹介します。

【マスター】ガー・レイノルズzen_20150116-02-4

デコレーションは、データを見せたいグラフにとって「ノイズ」なのです。グラフや表は3D効果を使わないほうがよい。なぜなら見にくいから。これは理屈ではありません。また基本的なことですが、強調したい文字や数字は大きくすること。色はコントラストを際立たせる以外の目的で多用する必要はありません。

こうして、ノイズが少なくて、明快なスライドが出来上がります。

彼の考え方自体、非常にシンプルなので、自分のつぎのプレゼンから取り入れらそうな気がします。

しかしそこで繰り返しになりますが、「メッセージ」が絞られてこそのデザインテクニックだということを忘れてはいけません。

現実にはメッセージの絞り込み段階でつまずく場合が多いという話も聞きます。なにか手立てはあるのでしょうか?

言葉と参考資料で補足する

ガー・レイノルズ氏。プレゼンテーションスペシャリスト/関西外国語大学教授(写真:日経BP社)

ガー・レイノルズ氏。プレゼンテーションスペシャリスト/関西外国語大学教授(写真:日経BP社)

情報をそぎ落とす作業は、勇気が必要です。情報の重要度を見極めて優先順位をつけ、自分の判断で削除しなければなりません。しかし、情報を減らすことで伝えたいことが際立つ。プレゼンで複雑な説明が必要な部分は言葉で補ったり、参考資料として配ったりすればよいのです。

理屈ではわかっても、周囲(例えば上司)の影響もあり簡素化が難しい場合は、次の比較画像を使って簡素化に納得してもらってはどうでしょう?

ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料をもとに作成(協力:日経BP社)

ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料をもとに作成(協力:日経BP社)

ちなみにビル・ゲイツ氏は最近と昔ではだいぶプレゼンスタイルが変わったそうです。

画面左は十数年前の製品紹介時プレゼン、右側は最近の慈善団体でのプレゼン。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

画面左は十数年前の製品紹介時プレゼン、右側は最近の慈善団体でのプレゼン。ガー・レイノルズ氏のプレゼン資料より抜粋(協力:日経BP社)

今回のポイント

今回、ガー・レイノルズ氏の哲学をまとめてみて、最も大事だと思ったことを最後に書きとめておきます。
 NewsPicks編集部

*本連載は隔週で日曜日に掲載する予定です。