「混迷のCOP27」を振り返る
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毎年開催される「気候変動枠組条約締約国会議」(COP)というのは、要約すると、
・二酸化炭素排出を減らしてほしいなら支援金を出すように途上国側が求め、
・先進国は支援金を出し渋ったり値切る
という場です。
支援金が出れば二酸化炭素排出が減るか、というとそんなことは実際にはわからないのですが(途上国では、不景気になればそんなことは気にかけないし、そもそも計測できていない国がほとんどです。ましてや、戦争や内戦になれば、全く問題にならなくなります)、
支援金が出ないことには当面の会議も進まないので、とりあえず金額の交渉になります。
今回設立が合意された、途上国への支援金のための基金(Loss and Damage Fund)は、
・2030年までに3000億ドルの拠出が目標
ということが決められました。
この40兆円もの金額を、どの国がいくら出すのかは、全く決まっていません。
おそらく、二酸化炭素排出を減らすだけなら、効果のよくわからない支援金よりも、中国の国営企業あたりが、途上国に原子力発電所を数百か所つくる、そして中国企業が電気自動車を普及させる、というのが一番効果的でしょう。
What you need to know about the COP27 Loss and Damage Fund
https://www.unep.org/news-and-stories/story/what-you-need-know-about-cop27-loss-and-damage-fund今回のCOPはエジプト開催であったこともあり、対策を進めたい側にとっては、納得のいくものにはなりませんでした。MAPA(Most Affected People and Areas)の人達の声に耳を傾け、根本温室効果ガスの削減を進めることが重要です。来年のCOP28もUAEで開催ですから、今回と似たような構造になってもおかしくないのではないかと思いますが、その前に日本で開催されるG7サミットで、しっかりと日本のリーダーシップを発揮しなければなりません。
日本からクラウドファンディングを実施してエジプトに行ったアクティビストの方の話を聞くと、COP27が行われている会場そばは抗議活動が禁じられ、決められたエリア内でしか活動ができなかったといいます。この影響なのか、今回のCOPをめぐる日本メディアの報道では、抗議活動についてはほとんど触れていませんでした。エジプトの人権をめぐる問題に関しても、向き合っていく必要があります。参考 https://news.yahoo.co.jp/articles/bda0211c5990b90580cedb0a858341e9359d6858
https://wired.jp/article/cop27-protest-restrictions/去年以前にも指摘されていましたが、もはやCOPは気候変動変動の枠組を議論したり決めたりする場ではなくなってしまったとの声が先進国関係者から聞かれるようになっていました。さらに、今年のCOP27では、もう限界かもしれないとの悲観的なコメントまで聞かれるように。
パキスタンの洪水被害にともなう損害を誰が負担すべきかという論点は、COP27以前から海外メディアのポッドキャストを聞いていても議論が盛んに行われていました。昔から環境を汚してきた先進国で責任を負っていくことは当然でしょう。
ただ、今回のCOPは、そうしたロス&ダメージ問題に関する議論に終始し、気候変動をいかに止めるかについては深まらず、記事にあるとおり骨抜きとも理解されてもしかたない決着。特に議長の運営に対する不満は強いものがありました。
ちなみに、日本ではほとんど報道されていませんでしたが、運営ががさつで、COP会場周辺では食べ物を買うにも長時間行列に並んだり、水やコーヒーすら買えない、買えたのはアイスクリームだけでやむなく1日3食アイスクリームで過ごした、トイレットペーパーが補充されずに困った…といった不満が参加者から聞かれ、今までで一番ひどいCOPとの称号まで冠されるありさま。
気候変動のイニシアティブはCOPとは別にやったほうがいいかもといった声も上がってきています。