(ブルームバーグ): オンライン小売り最大手、米アマゾン・ドット・コムは年間10億ドル(約1400億円)強を投じて劇場公開用の映画を製作する計画だと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。インターネット企業としては過去最大の劇場向け映画投資計画となる。

戦略がまだ最終的な調整の段階にあるとして、匿名を条件に話した同関係者によれば、アマゾンは来年から徐々に本数を増やし、最終的に年間12ー15本の劇場公開を目指す。そうなればパラマウント・ピクチャーズといった大手スタジオと肩を並べる。

ストリーミングサービス各社はこれまで製作した作品の大半を劇場公開せず、公開する場合でも映画会社の作品と比べて上演する期間が短かく、劇場数も少なかった。特にネットフリックスは週当たり1本超の新作をストリーミング配信しており、映画館チェーンにとって打撃となっている。

ネットフリックスは23日、「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」の続編、「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」を劇場公開した。しかし上映は1週間のみで、来月からストリーミング配信される。

一方、アマゾンはネットフリックスよりも劇場公開にオープンな姿勢を示してきたが、オリジナルムービーへの投資額ではネットフリックスを下回る。ネットフリックスが年間100本近く公開しているのに対し、アマゾンは20-30本で、多くが英語以外の言語となっている。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、ギーサ・ランガナサン氏は23日のリポートで、「年間12-15本の映画製作に10億ドルを投じるアマゾンの計画は劇場モデルへの信任投票だ」と指摘。「ユニバーサルとワーナーの予算もほぼ同水準であることから、劇場興行収入を楽に15-20%押し上げる」可能性があると分析した。

このニュースを受け、映画館運営会社の株価が上昇。米国最大の映画館チェーン、AMCエンターテインメント・ホールディングスは一時9.1%高を付けた。終値は4.4%高。シネマーク・ホールディングスは13%高で終了。

アマゾンはコスト削減を進めているものの、映画製作のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)買収後、オリジナル映画への投資を増やしている。

原題:Amazon Plans to Invest $1 Billion in Movies for Theaters (2)、Amazon Plans to Invest $1 Billion in Movies for Theaters(抜粋)

 

(背景やアナリストのコメントなどを追加して更新します)

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