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文庫はもともと単行本の二次使用のフォーマットとして、文化を一般にも共有すためにと、岩波が始めたものだと思いますが、その場合、企画執筆に伴う初期費用が不要なだけでなく、装丁、仕様、用紙全て廉価、さらには売れたものしか出さないので、出版の宿命である、出してみないと売れるかどうかわからないギャンブル的リスクもない、という条件の中で設定された値付けでした。
それが最近では書き下ろし文庫も多く、またカバーも本ごとに装丁作業が入ります。並製の新刊と同じような条件での制作となっているわけで、価格が単行本に近づくのは当然でしょう。見返し、別丁扉など、最近は単行本でも省略するようになったので、単行本の方から文庫本に近づいてきている面もあります。
Discoverにいた時、この記事にもあるように、携帯に便利なフォーマットとして新刊サイズのシリーズを始めたのですが、当時、新書というと、720円とかがお決まり。ところが、計算すると、利益を出すのが本当に大変で、、、そこで、装丁を毎回変え、見返しもつけることで、1000円としました。厚いものは1200円とか。さらに、新書ではなく、名を携書としました。サイズは棚を考えて新書サイズとしましたが。。わかったことは、内容が良ければ読者の方はご理解下さるということでした。
文庫も新書も、岩波さんが始めたもので(新書は、二次使用の文庫に対し、書き下ろしなので新書)、価格も、岩波さんに合わせることから始まってそれが続いていたようなのですが、
でも、岩波さんは、掛け率が95とか9とかで、返品も絞るみたいなとんでもない殿様取引条件(書店さんには他社の本と同様、75とか77とかで卸すで、差額は取次が被ることになり、つまりは他の出版社(多くは新参者の出版社)が被ることになる。業界では、「逆さや」といいます)で、だからこそ成り立っていた価格で、、さらには、雑誌や漫画で儲けて、文庫も含む書籍部門は赤字でOKみたいな大手出版社がそれに追従していたものだから、書籍だけでやっている中小出版社も、それに準じざるを得ないという状況だったのです。
それがようやく用紙の値上がりもあり、出版社が自分達を維持存続させ得る価格にし始めたということでしょうか。
古屋さんのコメントに気づきがあったなあ。
僕はこれまで、単行本→文庫本の流れというのは、プレステのソフトの「The Best」のようなものだと思っていた。だからオリジナルを買った人は買わない(新ストーリーが追加されたりしたら別だけど)。
要は少し安くして、より多くの人に手にしてもらうという売る側の戦略。
一方、買う側の価値という観点で古屋さんのコメントが面白かった。
・単行本の威圧も外れ
・ウィスキーのような「知の熟成」
単行本の威圧、という感覚は初めて知った概念です。(笑)