【解説】経済から紐解けば、ウェブトゥーンは10倍面白い
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ウェブトゥーンが何故韓国発だったのかという記事。ブロードバンドへのシフトが早く、iphone3の発売に合わせてポータルサイト間の競争が激しくなり、その中で漫画による集客が進み洗練されたということらしい。要はスマホで漫画を読むということがどのタイミングで起きたのかが重要で、おそらく漫画×スマホ×配信(ブロードバンド)という三つの要素が揃って初めて作られたということだ。欧米では残念ながら漫画文化が日本や韓国ほどなかったということだろう。
ではなぜ韓国よりも漫画文化が根強く、市場も大きい日本で作られなかったのかというのが実際はこの問い(なぜ韓国で?=なぜ日本ではなかったのか?)の本質だと思う。それは日本の漫画のプラットフォームが紙媒体であり、その仕組みが強力だったからだ。漫画雑誌を作る出版社、印刷所、流通、販売に到るまで多くのプレーヤーが漫画雑誌によって潤っている。それを崩して新しいプラットフォームに飛び込むインセンティブがない。
しかし韓国からのウェブトゥーンが入ってきた。おそらくこれからはこの形式に変わる。変わらない場合はお決まりの「ガラパゴス」化していく。誰が得するのかという点では得はしないが多くの日本のクリエイターが損をするだろう。制作時に世界共通のプラットフォームに合わせたフォーマットを選ぶかどうかで対象となる市場が大きく違ってくるからだ。ウェブトゥーン仕様だと世界が市場になるのに日本の雑誌仕様で漫画を描けば「ガラパゴスの呪い」によって日本市場に縛られる。
この記事中で興味深いのが韓国の第一人者の李さんのコメント。
"日本の出版社はITでプラットフォームをやらない方が良いですよ。なぜなら、これは完全に資本の戦いだからです。
単に「資本」と言っても使っているお金が何十億円規模の戦いです。なぜこれと真正面で戦う必要があるのでしょうか。
出版社の雑誌とウェブは全く違います。覚悟を決めて本当にお金を突っ込まないといけません。
歴史で振り返ってきたように、プラットフォーム作りは、何年もかけて世界各国でやらないといけません。これを今からやるのは無茶ですよ"
強力なコンテンツを持っている日本がせっかく出来つつある韓国のプラットフォームに入ってほしくないのだろう。もう既に遅いかもしれないが、参入するなら今しかない。ここでもまた「ガラパゴスの呪い」に縛られる必要はない。漫画家一個人としては縦読み漫画は、漫画の新しい形式の原稿用紙と思ってまして。
縦に連なるだけなんでサラっと読めて寝る前に頭を空っぽにしてリラックスしながら読めますし、コマ割り漫画が難しい層にとってはいい漫画の入り口になります。縦読み漫画とコマ割り漫画はうまく共存共栄できると思ってます〜。アニメも、日本の広告代理店とテレビ局は、国外で営業して売り込む気がほとんどありませんでした。広告のスポンサーがほとんど日本国内企業だからです。
日本のアニメを世界に広めてくれたのは、まずYouTube(アニメ制作会社の収益にはなりませんでしたが)、そして、ビリビリ動画、Amazon Prime、Netflixでした。おかげで、日本のアニメの売り上げは、2021年には国外市場が国内市場を上回るようになりました。
このインタビューの中では、日本のマンガとアニメ、さらに日本企業と日本社会について、よく理解された指摘がなされています。
「日本は市場が広いので経済危機が来たとしても体力があって耐えられる。韓国は小さいから耐えられなかった。だからこそ早い変化が必要でした。
──盤石だからこそ変わらなかった、と。
売れているのだから、新しいものを入れるのにはちゅうちょする。気持ちはとても分かります。」
「プラットフォーム作りは、何年もかけて世界各国でやらないといけません。これを今からやるのは無茶ですよ。
今はもうプラットフォームができていて、高速道路ができています。それなら車を作るべきです。」
日本はOSやプラットフォームを作れない国です(作れたとしても世界に普及できない)。自動車ならつくれます。
メッセージアプリでも、LINEやカカオトークが日本市場を取りました。それらのグループ企業が、ウェブトーンのプラットフォームもまた、日本や東南アジアの市場を取っています。
韓国のみならず、インドネシアやタイのマンガ家が、日本企業での連載をあきらめて、韓国企業での連載をめざすようになっている、というのは、示唆するところが多いです。
今のところは、日本のマンガ市場の大きさと、日本のマンガ家志望人口の極端な多さが、諸外国のマンガ市場とマンガ家へ働きかける動機を弱めている、というのはあります。
日本の読者が、諸外国からのマンガをあまり愛好しなかった、ということもあります。
とにかく、日本の大手出版社もまた、諸外国に売り込むことに積極的ではありませんでした。資本はあったのです。
角川と、そして何度も米国進出に失敗してきた集英社が、近年成果を挙げてきているくらいです。
東南アジアの市場と若手マンガ家たちを取り込めるかどうかは、将来は大きなビジネスの話になります。