2022/11/9

元・楽天社員が飛騨で起業。「地域の宝」はどうすれば見つかる?

NewsPicks Re:gion 編集長
 音声番組「地域経済のリアルがわかるRe:gion Radio」は、地域経済にちょっと興味のあるビジネスパーソンに向けた、聴くだけで「地域を変えるビジネス」に詳しくなれる番組です。

 毎週月・木の2回配信、ゲストには毎回Re:gionピッカーの方々が登場します。2人目のゲストは岐阜県・飛騨地域で地域商社「ヒダカラ」を創業した船坂香菜子氏。

 楽天社員として飛騨市役所に出向→そのまま起業してしまった船坂さんに聞く、地域に眠る「お宝」をビジネスにする方法とは? 本記事では、本編の一部をダイジェストでお届けします。

【MC】
瀧川奈津希 / KSB瀬戸内海放送アナウンサー
木下斉 / エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
呉琢磨 / NewsPicks Re:gion 編集長
INDEX
  • 【前編】地域の「お宝」が売られていない問題
  • 【中編】地域の価値発掘は「情報量」が勝負
  • 【後編】地域商社が「豆腐店」をM&Aした?

【前編】地域の「お宝」が売られていない問題

─「ECのプロ」である船坂さんが飛騨市役所に出向した5年前から、飛騨市のふるさと納税の寄付額が顕著に伸び出しているんですよね。
 それまで年間3.5億円しかなかったのが、2年間で約3倍に伸びた。さらにヒダカラが創業した2019年からも伸び続けて、2022年には20億円超を狙うところまで来ている。
船坂 そうですね。いまヒダカラでは飛騨市・高山市・白川村を含む飛騨地域で約300社の商品を取り扱っていて、寄付額では全体で40億〜60億円くらいのボリュームになっています。
木下 そのなかにはヒダカラが地域から掘り起こした商品もいろいろあるようですが、特にヒットした商品でいうと何があるんですか?
船坂 飛騨高山の清流・宮川で穫れる「飛騨のあばれ鮎」というのがあるんですよ。
 飛騨の山は広葉樹が多いので、清流にはミネラル豊富な養分が流れ出るんです。その宮川に棲んでいる鮎が、ものすごく元気なんですね。
 釣り人界で伝説的な「鮎釣り名人」の方にも、”日本一の美味しい鮎”とお墨付きを頂いています。
瀧川 すごい鮎なんですね! それが、以前は安く売られちゃったりしていたんですか?
船坂 安く売っていたどころか「誰も売っていなかった」んです。
 宮川は鮎釣り師には有名な川で、漁協もあって釣りができる面積も広いのですが、みなさん趣味として楽しむのがメインだったんです。
 そこでヒダカラでは、漁協と連携して釣り人から釣った鮎を買取り、築地市場や高級料亭といった域外に卸したり、域内の飲食店や土産店に卸すといった仕組みを作っています。
 もちろんECもやっていて、高いものだと1尾1800円程で販売できています。
瀧川 それは高級魚ですねぇ。地域には、まだまだ「お宝」が隠れているということなんでしょうか。
船坂 そうなんです。隠れた「お宝」でビジネスをしたいと考えている方もいますが、どうすればいいか分からない。そのお手伝いをさせて頂くことがヒダカラの主な事業ですね。
木下 釣った魚をどう売るか。普通だったら市場に持っていく位しか思いつかないし、市場で買い叩かれたら「売ってもしょうがないね」となりますよね。
 そのような隠れた宝物を掘り起こして、販路を開拓して売れる出口を作ることで、生産者たちが「自分で売れる」ようになる。そうすると新しい価値の作り方が見えてきますね。

【中編】地域の価値発掘は「情報量」が勝負

瀧川 地域に長く住んでいると環境とか文化が当たり前になってきて、何が「お宝」なのかぼんやりしていくと思うのですが、価値を発掘する目はどうやって養うんでしょうか?
船坂 やっぱり客観的な視点を持ち込むことですかね。例えば「あばれ鮎」のときだったら、全国の川で鮎を釣ってきた鮎釣り名人が「ここの鮎はとても活発で全国的に見ても一番良い!」と言ってくれたからこそ、私たちも納得できたし、自信に繋がったと思うんです。
木下 一次産品のほとんどは情報戦なんですよ。特に鮎みたいな季節の恵みって、その地域で生活している人からすると「毎年この時期になると獲れて美味しいよね」と思っているだけのことが多い。
 でも、全国の鮎と比較して目利きができる人が見ると「この地域の鮎はどこよりも活発だ!」というふうに、何が良いのか具体的な評価ができる。
 目利きが出来るくらいの情報量を持っている人じゃないと、価値を正しく見出せないというポイントでもあるんですよね。

【後編】地域商社が「豆腐店」をM&Aした?

──ヒダカラでは最近、飛騨の「豆腐製造販売店」をM&Aしたと聞きました。これは地域商社としても珍しい展開ですよね。
船坂 はい、ヒダカラでは最近「石豆腐」を作るようになったんです。
 石豆腐って”縄で括っても崩れない石のように硬い豆腐”という意味で、これも白川村では長らく食べられている食材、白川村に残っている伝統文化なんですよ。
 その石豆腐を作っているお店が高齢化で閉店してしまうことがわかったので、ヒダカラでM&Aをして、昨年からお豆腐屋さんの事業承継をしたんです。
木下  それはいいですね。これまでの地域商社は地元で採れた産品のブランディングと販売チャネルの見直しを支援する形が多かったわけですが、このように地域で廃業されそうな会社をM&Aして事業承継していくという動きが、今後の新しい流れになっていくと面白い。
船坂 そうですね。これが良いモデルになれば、他ジャンルにも横展開できるのかなと思っています。
木下 地元で新しく生まれてきた会社が、昔ながらの地元企業を買って、古い事業を新しいモデルに再デザインしていく。ふるさと納税であがった収益は、こういった形で「地域に再投資」することが一番重要だと思いますね。
(続きはぜひ本編でお楽しみください)
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