Weekly Briefing(ビジネス・経済)
原油価格の下落、トヨタ燃料電池車にかける意気込み
2015/1/10
今週からスタートするWeekly Briefing。毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。土曜日は、NewsPicks内で注目されたビジネス・経済に関わるニュースをSPEEDAアナリストがピックアップ。コメントとともに紹介します。
Pick 1:原油価格の下落、その裏側で
“米株はダウ急落し331ドル安、原油安でエネルギー株の下げきつく“ Reuters(2015年1月6日)
“原油安が資源国に打撃 財政悪化で歳出抑制“ 日本経済新聞(2015年1月7日)
“Here Are The Most And Least Expensive Ways To Drill For Oil“ Business Insider(2015年1月6日)
今週は原油価格の下落関連の記事が多く、どちらかというとネガティブな影響の話題が多かった。例えば株式市場。今週は波乱のマーケットとなった。原油価格の下落に加えて、ギリシャがユーロ圏から離脱するとの懸念も加わり、リスク回避の動きが強まった。後半には一部持ち直したものの、欧州リスクも含めてしばらくは神経質な展開となるだろう。
しかし原油価格下落は、米国にとって別の影響を与えたとも言える。その一つが、米国の新車販売台数の増加である。低金利など、ガソリン価格の下落だけが要因ではないが12月の前年同月比の伸びも顕著であった。2014年通年では5.9%増の1,652万台となり、8年ぶりの高水準となった。これで5年連続の増加となる。
1927年以降、新車販売台数が5年連続で伸びたのはこれまでで2度。1度目は1933~37年。日本では豊田自動織機製作所で豊田喜一郎が自動車製作部門を設置し、自動車試作の準備に取りかかったのが1933年である。2度目は1996~2000年で、この間に過去最高の1,740万台を記録した。さらに、今年も増加すると史上初の6年連続増加となる。
価格面でも、Kelly Blue Bookによると、2014年12月の新車平均取引価格は34,367ドルとなり過去最高の水準となっている。これもガソリン価格の下落に伴う車種構成の変化が要因の一つと考えられ、自動車メーカーの業績には大いにプラスとなるだろう。
原油価格の下落は、中央銀行の舵取りを難しくしているようだが、個人消費にプラスの影響を与えることも予想されており、今後の動向が注目される。
Pick 2:トヨタ燃料電池車にかける意気込み
“トヨタ、燃料電池車の特許5680件を全公開“ 日本経済新聞(2015年1月6日)
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)の今回の発表は、燃料電池車(FCV)の普及に向けた取り組みで、FCV導入初期段階においては普及を優先し、開発・市場導入を進める自動車メーカーや水素ステーション整備を進めるエネルギー会社などと協調した取り組みが重要であるとの考えに基づくものである。
トヨタは「従来より、知的財産(特許)の取り扱いについては、オープンポリシーを基本とし、第三者からの実施の申し込みに対しては、適切な実施料により特許実施権を提供している。燃料電池関連の特許に関しては、こうした基本方針を一歩進めて無償で特許実施権を提供することにより、FCVの普及を後押しし、水素社会の実現に積極的に貢献していきたいと考えている」と表明した。
この発表で、一部ではトヨタが変化したとの受け止められ方がされたが、そこはしたたかなトヨタ。期限を区切るなど一定のハードルは設けた。自動車の開発期間を考えると限定された5年間は、かなり短期間と言えるだろう。ただ2020年はそれなりに意味のある数字である。
経済産業省の水素・燃料電池戦略ロードマップによると、2020年ごろにハイブリッド車の燃料代と同等以下の水素価格の実現、2025年ごろには燃料電池車が、同車格のハイブリッド車同等の価格競争力を有する車両価格の実現が盛り込まれており、トヨタが国の方向性と合わせてきたと考えられるからだ。
インフラ整備が関係する以上、トヨタ単独で普及促進は難しく、経産省にも協力の姿勢をアピールしたのが、今回の発表の意図の一つだったかもしれない。
参考資料:「水素・燃料電池戦略ロードマップ概要(経産省)」
Pick 3:税収は増加、景気は回復?
“来年度税収54.5兆円に、24年ぶり高水準=政府筋“ Reuters(2015年1月6日)
“15年度名目成長率2.7%、実質は1.5%で調整=政府筋“ Reuters(2015年1月7日)
税収の過去30年位のピークである1990年以降を見ると、1990年度の約60.1兆円からボトムは2009年度の38.7兆円と、結構幅がある。ちなみに、消費税を3%に増税した1989年度は約54.9兆円、1997年に5%に増税した時は53.9兆円。
当初予算の50兆円の税収の中身を見てみると、所得税14兆7,900億円、法人税10兆180億円、消費税15兆3,390億円(増税前5%) 、揮発油税 2兆5,450億円、酒税1兆3,410 億円、相続税1兆5,450億円、たばこ税9,220 億円、関税1兆450 億円、石油石炭税6,130億円、自動車重量税3,870億円、その他税収4,000億円、印紙収入1兆560億円と続く。ちなみに、相続税が今年から引上げられたが、ピークは1991年で約4兆円あったことを考えると、現在の水準は半分以下である
今回の税収の上方修正の背景は、企業業績の改善で所得税や法人税の伸びが要因。円安効果で企業業績は改善傾向だが、個人に視点を移すと、実質賃金の伸びはキャッチアップしていない。今後の景気を支える日本の生産年齢人口は2013年で総人口の62.1%で約7,905万人、これが2060年には50.9%の約4,532万人まで減少することが予想されている。
総人口が8,674万人に減少するが、それ以上の比率で減少することになる。つまり高齢化率が25.1%から39.9%に増加することを意味しており、歳出面で社会保障費が焦点となるのもこのためだ。しかし、逆の視点で生産可能年齢の引き上げができれば、将来の景気の景色も少し変化があるかもしれない。
参考資料:「日本の人口の推移(厚生労働省)」