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【現地発】なぜアメリカで「中絶」が大問題なのか

NewsPicks編集部
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    静岡県立大学国際関係学部 准教授

    中絶の是非が選挙の争点になる、というのは、単純にキリスト教保守派が政治的力を持ったから、だけでは説明できません。
     1960年代以降、米国の政治の争点が「権利」になったからです。黒人の権利、女性の権利、移民の権利、「権利」といわれると拒否できない社会になり、諸々の「権利」の擁護者である民主党が、優勢になっていきました。
     カーター、クリントン、オバマ、バイデンといった民主党大統領の誕生は、「権利」の擁護者としての正当性があったから、というのは大きいでしょう。
     共和党も、民主党に対抗して、権利の擁護者として自らを打ち出しました。「胎児の権利」の擁護者です。

    キリスト教保守派や共和党が、「胎児の権利」を打ち出したのは、1970年代からのことでした。
     それ以前は、それよりも、学校教育、特に「反進化論」がキリスト教保守派の主要なアジェンダでした。
     学校の授業で進化論について教えない、というのが、彼らの政治上の主要な要求でしたが、この要求は、米国民からの支持が集まりにくく、共和党の政治家たちにすら、あまり真剣に支持されませんでした。そもそも、関心を引くテーマではありませんでした。

    キリスト教保守派と、共和党非主流の運動(ネオコンと呼ばれた人たちを含む)の連合は、レーガン、ブッシュ(父)政権を支える有力な支持基盤となりました。
     しかし、ブッシュ(息子)大統領の頃にはピークを過ぎており、今はもうキリスト教保守派自体が退潮しています。
     今の共和党トランプ派を支えているのは、キリスト教保守派もいますが、それ以外の白人の地方住民、製造業や農業の従事者、陰謀論者などです。「権利」の擁護よりも、自分の収入と生活を改善してほしい、というのが本音である人は、実にたくさんいます。
     米国のキリスト教徒の中だと、ヒスパニックが増えたことにより、彼らの中の30%程度にあたるプロテスタントのヒスパニック有権者が、トランプ派の有力な支持層になっています。

    【解説】「中絶の権利」が否定されたらアメリカはどうなる?
    https://newspicks.com/news/7027067?ref=search

    【分断】響き渡る非難と歓喜。真っ二つに割れるアメリカの現実
    https://newspicks.com/news/7269143


  • NewsPicks 編集部(シリコンバレー支局長)

    そもそも「中絶」をする人は少ないんじゃないか、マイナーな問題だよね、と思うかもしれません。

    私も最初はそう思っていました。ところがアメリカでは4人に1人の女性が、中絶を必要とする状況になるというのです。ちなみに日本の2倍以上。多くの人にとって自分が当事者になるか、それともそういった人を家族に、友人に持つという話なのです。

    テキサス州で出会った人たちは、命をとても重く受け止めていて、(出エジプト記20章13節にある)十戒の「殺してはならない」、 (詩編24編1節)「地とそこに満ちるもの、世界とそこに住むものは、主のもの」などの言葉から、胎児の創造が神の業であると信じています。

    中絶に断固反対する人たちに、どうして「胎児だけに固執するのか、ウクライナで大切な命が失われているのに?」と聞きました。すると、ウクライナの人たちのためにも祈っていると。それでも、私には胎児を神聖に見る宗教観が見えました。

    2年前にもトランプ前大統領と宗教の取材で(【イベント潜入】トランプと福音派の蜜月)見たように、キリスト教の福音派からの票を固めるため、アメリカの人口の4分の1を占める、福音派に最も響く方法で近づいたトランプ氏。そのために、自分が「大統領になったら最高裁に保守派の判事を送り込む」と約束し「自分の一番好きな本は聖書だ」と言っていました。(嘘でしょう?!)

    そして、宗教の強い保守派は、アメリカが非常にリベラル化していることに恐怖感を覚えています。自分達の価値観が崩れ、社会が変わってしまうと。そこで、保守派に回帰しようとするトランプを(敬虔なクリスチャンとは思っていないながらも)投票した人もたくさんいたのです。宗教と政治が結びつくという構図は今の日本だとわかりやすいかと思います。

    取材をしている中で、自分が1973年の「ロー対ウェイド判決」が出る前のアメリカ、中絶が禁止される時代を生きた人に話を聞きました。なんと、アメリカで禁止のため、お金がある人は海外で手術を受けていたんですね。そしてその女性は、多くの手続きを踏んで日本で手術を受けたそうです。将来を生きる世代に混じって、昔の時代を生きた人たちの声が響きました。


  • NewsPicks 副編集長

    アメリカ中間選挙まであと1日。特集「分裂アメリカの戦い」2日目は、まさに分断の象徴である中絶問題のルポです。中絶に対し厳しい規制を敷くテキサス州を中心に取材しました。

    注目ポイントは洪記者の“怒り”。でもこの問題に触れた誰しもが抱く感情だと思います。

    キリスト教福音派の信者たちは、子どもたちの命は神様から授かったもの、だから殺してはならないと言います。こうした考え方を「Pro-Life」と呼びますが、命(Life)を肯定(Pro)するのであれば、子供だけでなく産む母親も同じです。妊娠・出産は子供だけでなく、母親の命にも関わること。選択する権利は保障されて然るべきでしょう。信者たちとの間には会話をしていても一向に埋まらない溝がありました。

    個人個人がどう考えるかは自由です。ただ彼らは特定の価値観を他人に押し付けようとする、しかも国の政治まで巻き込んで。この中絶問題が選挙の争点になってしまうこと自体が奇妙に思えて仕方がありません。不思議の国アメリカの中でも、とりわけ理解に苦しむ現象です。


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