【全文】「勝ちっ放しはないでしょう、安倍さん」野田元首相から安倍元首相への追悼演説
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これほど格調高い追悼演説を今の日本で聞けたことに、一人感動している。
安部元首相に対する想いの表現も素晴らしいが、最後に野田元首相が議員に訴えかけた以下の言葉が、ウクライナ戦争や領土問題、不安定化する現在の日本において、真の民主主義の姿勢を示したと感じる。本当の野党、本物の政治家を見たというと、大袈裟であろうか。
「暴力にひるまず、臆さず、街頭に立つ勇気を持ち続けようではありませんか。民主主義の基である、自由な言論を守り抜いていこうではありませんか。
真摯な言葉で、建設的な議論を尽くし、民主主義をより健全で強靱なものへと育てあげていこうではありませんか。こうした誓いこそが、マイクを握りながら、不意の凶弾に斃れた故人へ、私たち国会議員が捧げられる、何よりの追悼の誠である」胸にしみる言葉でした。この人は、演説の力で、裸一貫から首相にまで上り詰めた人物であることを改めて想起しました。かつて民主党党首選で、事前の劣勢予想を逆転して勝利したのも、この人の演説力だったと私は思っています。あの名演説を超える出来栄えでした。
首相交代の時の控え室でのやり取り、当時の天皇陛下のいわゆる退位発言を受けての首相公邸での秘密会談、とこれまでほとんど知られていなかった出来事を披露する「サプライズ」をさりげなく取り入れながら、「勝ちっ放しはないでしょう」というおそらく後世に語り継がれる名文句で締めました。見事です。
私は、入社試験の作文の試験官を何度か務めましたが、その伝で言わせてもらうなら「Aプラス」にさらにプラスを重ねたくなる出来栄えでした。
野田氏は、この名演説で、再び政界の柱として返り咲くかもしれない。そんな予感までさせてしまう追悼でした。令和の時代に、このレベルの演説が聴けるとは、正直思っていませんでした。野田佳彦氏はもともと演説の名手。2012年の政権交代の一方のリーダーであることから、歴史的宿命としてこの演説の機会がめぐってきた。相当な大役でしたが、予想した以上の演説内容に、もう後半は涙をこらえるのに必死でした。
議会は論戦の場であると同時に、統合の場でもあります。何かとささくれだつことが多い昨今の政治ですが、演説後に本会議場でわき起こった万雷の拍手を聞いて、深い安堵を覚えました。自由な言論をたたかわせ、しかしリスペクトしあい、良いところはたたえあう。言論にかかわる立場として、そうありたいと思わせてくれる、歴史に残る名演説でした。