【現場ルポ】伝統と最先端。敏腕学長の経営戦略
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地方の大学が、地域おこしや、地域の特産品の開発、ブランドの普及に協力する、ということはあります。
大学病院があるところなら、新型コロナウィルス対策を含め、地域医療に大きく貢献したりしています。
こういったことは、研究において国際的な競争力がある、というのとは別のことです。
山梨大学は、タイムズ社の世界大学ランキングだと、1000位以下のランキング外です。2022年に1000位以内に入った日本の大学は27大学なので、特に山梨大学が低いというわけではありません。
(ちなみに、2020年は41大学が1000位以内に入っていました)
研究において国際的な競争力があるというのは、その大学の研究者が書いた論文が世界中の同業者から必読と見なされて、1万以上の論文で引用されている、そういう研究者を多数抱えている、といったことです。さらに、その研究者の指導の下で研鑽を積んで、自分も世界トップレベルの研究者になりたいという大学院生が、世界中から集まってくる、といった状態のことをいいます。
地域おこしに協力したからといって、研究において国際的な競争力があるとは全くいえないのですが、価値判断は、人の立場によるものです。
地方の中小企業の売り上げに貢献したとか、学生を動員して農作業に無償で貢献した、とかいったことの方を、論文の評価で国際的にトップになることよりも歓迎する人というのも、いるでしょう。
人の立場によって、大学に何をしてほしいかは異なりますが、数十年、100年以上先の範囲で、日本全体のGDPと生活の質の向上が上がるため、ということであれば、研究において国際的な競争力がある大学を増やす方が、目先の地域おこしよりも役に立つでしょう。ユニークな研究やたくましい経営戦略で光る山梨大学を、中居記者が取材しました。
70年も前のワインが貴重な研究資源として保存されるワインの研究所もさることながら、燃料電池の研究所ができた経緯が印象的でした。カーボンニュートラルという言葉すらなかった時代に一人の研究者が始めた研究が、今の時流に乗って国内最先端の研究拠点に育ったとのこと。もし始めた段階や途中段階で研究資金が底をついていたら、そうはならなかったでしょう。おそらく当時は、国立大学から所属する個々の研究者に配分される研究費がそれなりに確保されていたはず。悲しいことに、ほとんどの大学では今、そうした研究費は雀の涙ほどの額になっていて、外部資金を獲得できなければ研究がままならなくなっています。
将来、どんな研究が大事になるかは予測できません。流行の研究だけに投資するのがどうして間違っているのかが、この事例からだけでもよくわかります。来年には北海道大学にも完成するようですが、ここまで設備の整ったワイン専門の研究所は山梨大学にしかないというのは初めて知りました。
そして、燃料電池の研究所も大学としては国内最大。地場産業と最先端科学、ユニークな組み合わせです。
さらには学長も。とてもパワフルな方でした。歯に衣着せぬ物言いが物議を醸すこともあるそうですが、主張としては至極まっとうと感じました。
追記:
日本の大学の多さについてご意見をいただいているようなので、念のため補足します。2022年5月現在、日本の大学の総数は807校。うち国立86校、公立101校、私立620校。
https://www.mext.go.jp/content/20220824-mxt_chousa01-000024177_001.pdf
当然ですが、圧倒的に私立が多いわけです。今回の特集は、少なくとも地域の中核を担っている国立大は潰すな、という話です。しかし、少子化が進む中、この大学の多さはいびつですよね。この辺りは今後、取材できればと思っております。2日間、ありがとうございました!